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夕食会・午餐会感想レポート

平成29年5月午餐会「糖尿病の発症予防と最新治療」

夕食会・午餐会感想レポート

5月22日午餐会

本日、春日先生の「糖尿病の発症予防と最新治療」に関するご講演を拝聴いたしました。春日先生は、糖尿病の発症機構に関する分子生物学的アプローチでのご研究が非常に有名でしたので、ご講演も、もしかして、分子生物学的ジャーゴンで満たされ、難解ではないかと、内心、危惧しておりましたが、結果的には、非常に平易な言葉で、糖尿病の全体像をお話され、糖尿病の概観を理解することが出来ました。

1.糖尿病とはどんな病気か?2.診断方法は?3.合併症は?4.糖尿病分類5.糖尿病にならないためには?6.糖尿病になったら、どうしたらいいのか?7.糖尿病の治療8.これから期待される治療法 との項目でお話されました。

私は、学部で糖鎖の研究、大学院で分子生物学、民間会社で肺癌治療薬(抗体医薬)の開発研究を行い、現在、医療法人聖友会(茨城県久慈郡大子町)で、本部長代理として勤務。大子町は、人口1.9万人弱、高齢化率40%の、将来の日本を先取りした町です。本法人の理事長、鈴木直文医師(外科医、医学博士)は、現在、還暦を過ぎても、バリバリの外科医で、外来診療、48床の一般病棟の入院患者、さらに深夜往診も含む在宅医療と、365日24時間体制で、地方の医療を守るべく奮闘している敬服すべき医師の一人です。閑話休題。

春日先生のご講演は、糖尿病の歴史から始まり(紀元2世紀、Aretaeusが記述)、診断は、空腹時血糖値、75g糖負荷試験、HbA1cでなされ、HbA1cが6.5%以上の糖尿病が強く疑われるものが、平成24年で、950万人、糖尿病予備軍は、1100万人と話されました。合併症に関しては、視力障害、尿毒症、神経障害、動脈硬化の合併症以外にも、最近は、認知症、歯周病、さらにがん(特に肝がん)との関連も話されました。肝がんに関しては、ウイルス性の発症が今までの知見でしたので、ウイルスとは異なる機構による肝がん発症が、約30%程度あることには驚いた次第です。糖尿病にならないためにはとの項目では、糖尿病予防プログラムの成果を示され、糖尿病治療薬(メトホルミン)よりも、生活改善(食事と運動)の方が、明らかに、効果があることを説明され、とにかく生活改善が重要であることが理解でき、さらに、胎児期、幼・小児期の生活習慣にも注意を払うことが必要とのことでした。

最後に、これから期待される治療法に関し、腸内細菌叢を調整する治療法、肥満2型糖尿病に対する外科療法、不安定I型糖尿病に対する細胞治療など、最先端の治療法の紹介もされました。

本日のご講演から、春日先生等に代表されるアカデミア・都市圏でご活躍されておられる医師と前述した地方の医療を必死に守ろうとして頑張っておられる医師が、このICT・ビッグデータ社会で、緊密に連携して、日本全国を1つの均質な医療空間として構築することが、今後の日本における医療のあるべき姿ではないだろうかと自問自答した次第です。

(東大・工 吉成河法吏)