夕食会・午餐会感想レポート

10月20日午餐会

 東京大学名誉教授 跡見順子先生の講演の案内を受け、かつての同僚であり、またその研究内容とその後の進展に非常に興味を持つものとして、初めて午餐会に出席しました。
 生命科学の分野において、中村桂子さんや黒田玲子さんに並ぶ研究や活動をしておられる女性研究者の跡見講師に対して、敬意と尊敬の念をもって謹聴いたしました。
 宇宙、地球、身体、細胞の進化の過程における生命形態や機能の発展とその現状について、自らが現実に生きる女性であるという視点から、主題に関する広く深い洞察力をもって自らの研究知見と実践的見解を説明されたことは、非常に参考になり、また感銘を受けました。
 筆者自身文科系の教員として、身体運動科学の分野における「理論的知識の体験的知識化」という命題を、東大教養学部において保健体育の教育研究に従事していた頃から問題にし、思索し続けてきていますが、跡見講師は、自らの独創的な研究と実践活動を通して、このこと(命題)を自らの現実の生活の中で追究し実践されているように思われます。
 進化的に獲得された細胞の一般的な性質が、個人の環境や活動の諸条件によって修正され、個々人の実際の寿命(120歳まで可能)を規定しているという説明は、非常に示唆的でした。

(東大・教育修、石川 旦)


 我々の身体は60兆個の細胞から出来ているという。世界の人口の1万倍という数にも驚きましたが、その意識と感情を持った細胞が瞬時にしてシンクロし、バランスを取りながら、日常の立居振舞から仕事・運動・知的活動、すなわちホモ・サピエンスといわれる人類を生かしていることに思いをいたす時、驚きは感嘆に変わります。跡見先生の話し振りが、いかにも新しい境地を開きつつある喜びとエネルギーに満ちていたのは、日本古来のお稽古・修行にも似た身体の使い方をマスターして、血圧が下がり、便秘が治り、駅やビルの階段が楽しい運動場に感じられるようになったという、自らの体験に裏打ちされた自信から来るものであることを感じました。
 日本のかつての教育の伝統は、勤行・以心伝心・見習いといった趣が濃く、知的な探求が伴わないという傾向があり、理屈っぽさは排されてきました。しかし理性・合理・知性主義の教育を受けてきた現代の我々は、もはや密教とか教外別伝・不立文字というわけにはいかなくなっています。
 古稀の祝いももはや気恥ずかしいような、エネルギーに満ちた元気な高齢者ぞろいの日本には、跡見先生が目指しておられる、体験に基づいた知恵を取り込みながらの、新しい身体運動と生命科学の統合による学問体系は、まことにふさわしいと思った次第です。日本に限らず世界が高齢化していますので、先頭を切って世界をリードしてゆかれることを念じます。

(東大・文、池戸 誠二郎)

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