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夕食会・午餐会感想レポート

2022年10月午餐会「「IL-6物語」―関節炎からCAR-T細胞治療そしてCOVID19へ―」

夕食会・午餐会感想レポート

10月20日午餐会

30年くらい前まだ現役で働いていた頃に検査薬の事業を担当していた。その時血中のIL6を測定する試薬を開発して販売したことがあった。同僚や部下が先生の研究室を訪問してご指導を受けたと記憶する。講演の冒頭にも出てきたように診断の目的では遥かに低価格で健康保険にも採用されているCRPで十分であるということであったが、その後のお話の中で研究の過程でIL6の測定もされている画像が出てきた。それで研究試薬としては役に立っていることが分かってとても嬉しく思った。

また、インターフェロンのDNAをクローニングされたことで知られる谷口維紹先生の写真も出てきたが実は谷口先生のインターフェロンγの特許を米国のバイオ企業にライセンスするのを会社としてお手伝いして谷口先生に喜んで頂いた事があった。

それやこれやでこのご講演は大変馴染みのテーマでよく理解できたがこの分野に慣れていない方にも大変分かりやすくT細胞が「何らかの因子」を放出することによりB細胞が抗体を作るというという根幹の話は理解されたと思う。アクテムラは日本初の抗体医薬として中外製薬から発売され、中外製薬はロッシュとの提携も相俟って今や時価総額で武田薬品を上回ることもある日本一の製薬企業に成長した。

そこへ来て最近の新型コロナウイルスの流行である。サイトカインの暴走による重症の肺炎などにアクテムラの有用性が証明され効能の追加が今年1月に承認された。昨年12月の申請からわずかひと月という異例の速さである。この医薬によって多くの人命が救われるのは間違いないと考えられる。

最近のノーベル賞は実用性につながるものが多い傾向にある。アクテムラの有用性が広く認められてその大元であるIL6の発見者である岸本先生が受賞に輝く日が来ることを期待したい。ノーベル賞は存命の人しか貰えないのでこれからもますます研究に励まれ長生きされることをお祈りしたい。

(東大・理 京極浩史)