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夕食会・午餐会感想レポート

平成26年9月午餐会「内にこもる日本」

夕食会・午餐会感想レポート

9月19日午餐会

戦前は欧化と土着が主題だったが、戦後は丸山眞男らによる後進性の克復、いわゆる左翼による革新が主題で、中央公論と世界が論壇の中心だった。都市化による大衆消費文化の勃興により、言葉による翻訳文化、教養主義に代わって、テレビの政治番組が軸になって政治が動くようになった。
在米3年の帰国子女である経験を活かし、東大で国際化を担当し、留学生送迎の双方を推進している。フルブライト留学試験に合格しても、出世の妨げになると留学しない学生がいる。一方で、日本の大学に魅力を付与しないと、優秀な学生がどんどん海外に行くように将来変化する可能性もある。
日本は素晴らしい文化を持つ、責任感を持った人々の国で、その良さを発揮することこそが、国際化であろう。東大で中国や韓国の留学生は日本の学生と仲がよい。お互いをもっと知りたいという好奇心が国際化の原動力である。

質問:中東、アフリカが国際化の目玉になってきた。従来の欧米中心をどう是正するか。
答え:アラビア語など現地語のできる研究者が育ちつつある。
感想:当意即妙な表現を駆使し、社会を主題に滑らかに話が進行した。最新の国際政治問題の底流にある核抑止力などのコンセプトに、憲法9条の立場から切り込んでほしかった。

(東大・工、加納 剛)


本日は久しぶりにthought-provokingな御話が聴けて有意義な時間を過ごすことができました。特に、思想の面から国際主義と日本回帰の問題を整理していただき、学生時代に読んだ本のことなどを思い出し、懐かしく感じました。
確かに、80年代ごろから特に日本においては、大衆消費社会の下で大学教育も大衆化し、情報化の進展もあって、大勢の人たちが自分の意見を述べることのできる機会は増えました。また、ご案内のようにかつての「論壇」に象徴されるような「思想」の役割もほとんど消えかかっているかもしれません。
しかし、このような社会になっても、否むしろこのような社会にこそ「思想」の力が必要なのだと思います。かつての「小泉フィーバー」に見られたような、大衆の心理を一方向に動かしていくような強力な雰囲気(「空気」とも「風」ともいえるような)の中で、これに抗していかに自分の頭で、客観的に、ラショナルに事態を分析しうる力を持てるか。我々を取り巻く環境が以前に比べ激変していることは確かですが、目の前の表面的な現象に捉われすぎてもいけないと思います。やはり、歴史と古典、思想の変遷に思いを巡らす地道な努力を続けて自分なりの考え方を作り上げていくことが、特に若い学生たちに必要なのではないでしょうか。

(東大・法、諏訪 茂)