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『知っておこう“人事”~法律から実務まで~』
第3回目:給与とは?

みなさん、こんにちは。社労士ライターの安森です。
やすもり社会保険労務士事務所の代表として各種メディアで発信しています。
前回は“働くルール”の解説をしました。今回は“仕事とお金”の話をしたいと思います。

第3回目 給与とは?

2024年3月12日付の経済ニュースです。
『24 年春コクヨ要求を3000 円上回る7000 円ベア』
〔「コクヨという会社の労働組合が春の賃金交渉でモデル賃金4000円アップを会社側に求めたところ、
会社からは要求以上の7000円アップの回答がなされた」との意。
こんなことは過去30年にはなかったのでニュースになりました。〕

ここで言う“ベア”は『ベースアップ』です。
このあとお話する「給与テーブル」が更新されるのがベア(会社全体の支給額が上昇)。
給与テーブル上の号俸が上がるのが昇給(個人的な支給額が上昇)。
なんだか用語解説ばかりになりそうですが、少し話を進めましょう。

1.給与? 給料?

一般的には「給与 = 給料 + 各種手当 + 賞与」と説明されています。
このため「『給与』は働き方や業績などで変動し『給料』は固定的である」と言われます。
冒頭のベースアップは、『給料』が改訂されることを意味しています。

2.基本給と給与テーブル

あなたが受け取る給与明細の端のほうに「3 級-6 号」のような暗号が書いてあるかもしれません。
大卒初年度は3級-5 号からスタート、課長代理級は6 級-7 号に飛びつくなど、
細かく基本給を規定している“料金表料”のようなものを給与テーブルと呼んでいます。
通常、給与テーブルには人材育成に対する会社の姿勢が反映されおり、こういう風に給与が上がる、
限界値はいくらなど、自社の給与テーブルを確認してみると、隠れたメッセージを読み取ることができますよ。

3.手当

企業が支払う給与のうち、基本給以外のものを「手当」と呼びます。
手当にはさまざまな種類がありますが、法律により支給が義務付けられているもの(いわゆる残業代)と、
企業が独自に支給するもの(役職手当や住宅手当など)に分けられます。

1)残業代(時間外・休日・深夜労働割増手当)

割増手当の計算は非常に複雑なので、細かく理解するのは難しいかもしれません。
ただし、制度の趣旨や運用に関しては理解をしておくことをお勧めします。
たとえば「基本給に10 時間の残業代を含む」としている会社もあります〔
簡単に言うと10時間までの残業に関する請求はできない/10時間を超える場合には請求可能〕。

また「残業代は8 時間以上の勤務で発生」としている企業ではこんなことも。
午前中は有給を取って13 時$301C18 時まで勤務すると5 時間勤務。
その後、18 時$301C20 時まで残業しても計7 時間なので残業代の対象にはしないというのです。
こういうことで苦情の受付をするのは人事部員としてもしんどいところですが・・・

2)賞与(ボーナス)

ボーナスの算定方法も時代とともに大きく変化しているので、
どのような仕組みであなたにボーナスが支給されているのか確認してみるのも良いと思います。

① 基本給与連動型:
月額給与の「〇カ月」分を夏と冬に分けて支給するパターン。
ちなみに国家公務員の2024年の支給月数は4.60カ月でした。
成果を出している若手よりも、長く勤めているベテランに高く支給されてしまうという課題がありますが、
年功序列的に安定的な支給がなされることで生活設計をたてやすいなどの優れた側面もあります。
お見合いではアピールできるらしいですよ。

② 業績連動型:
企業の業績とはたらく人の評価を連動させて額を算出する方法です。
現在、日本の企業の約6割が「業績連動型」を導入しているそうです。
やる気が出て活性化につながること、競争原理が働くことなどが特徴です。
あなた個人評価が賞与に反映されているのであれば、「
成績表」的な要素が強まるので、支給額の計算根拠を調べてみてください。

なお、「業績連動型のボーナスにすると個人主義が強まる」という批判もありますが、
チームワークが強く求められる組織では、チームへの貢献度に対する『評価点』を高く設定しています。
制度を理解することで、何を求められているのか見えてきそうですね。

まとめ

「制度の趣旨」は聞いてみると、なるほどと思うことも多々あります。
会社の仕組みは同じような論理がもとになっていることあるので、
気になったときにチェックしておくとあとで役に立ちますよ。

おまけ:新入社員には通用しない!おじさんビジネス用語に気をつけろ!
https://www.moneypost.jp/1022576

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