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「誰も教えてくれない!新社会人のコンディショニングのヒミツ」
第6回:疲労!休養!活動!三位一体の法則

みなさんこんにちは。

医師の佐上徹(さがみとおる)です。
テーマごとにコンディション作りのヒントをお知らせしています。

読者の方から「前回の『「話す」と「離れる」。ココロのもやもや』に関して質問を頂きました。
『先生の御指摘に大賛成です。けれども卒業してからは地元の友人や実家の母と話せる機会も激減。気持ちを託せる人間関係が貧弱になりがちです。なにかアドバイスはありますか?』
私からのコメントはこのページの後半に掲載しますので参考にしてください。

第6回: 疲労!休養!活動!三位一体の法則

いよいよ最終回。今回は疲労回復について考えてみたいと思います。
疲労感はうつ症状と相関が高いと言われています。残念なことに、うつ病や適応障害で休職・離職する労働者が一定の割合で発生しています。しかし、日々の疲労回復のための行動が、うつ病の予防になる可能性があるのです。

軽い「運動」は疲労回復に効果的

ストレッチは、縮んだ筋をゆっくり伸ばすことにより、血流を良くし、その結果、酸素および栄養が筋のすみずみまで行き渡り、疲労の回復を早めます。
運動で身体を動かすことは、気分の落ち込みの発散、ココロとカラダのリラックス、睡眠リズムの改善などの作用をもたらしてくれます。運動で体を動かすことによって疲労回復を促すことはアクティブ・レスティングと呼ばれています。

疲れたときに体を動かして回復を図ることは、逆説的ですが、調子を整えるため試す価値があります。私自身もそうですが、「ジムで運動ができているときのほうが調子がいい」というビジネスパーソンの声を聞いたことがあります。

疲れたら、アクティブに動く

運動として体を動かすこと以外にも、「活動」として、息抜き・気分転換を図ってみることも有益と考えられています。例えば・・・
 ◆ 一人でもできる、場所を変える(自宅・職場以外)
 ◆ 手軽(時間・場所・機会・経済的・健全・安全・継続可)

「趣味」を気晴らしの活動と考えれば、キャンプやゴルフといったお金や特別な道具を要するものだけでなく、自分が楽しい・心地が良いと思えるひとときと捉えなおすことが可能です。

 ✔ カラオケ・鼻歌…
 ✔ ウォーキング・自転車・犬の散歩…
 ✔ ジム・筋トレ・ストレッチ…
 ✔ ヨガ・ピラティス・バレエ・座禅…
 ✔ 銭湯・サウナ・岩盤浴・長風呂・半身浴…
 ✔ アロマ・深呼吸…
 ✔ 美術館・博物館…
 ✔ 料理・手芸・工作・読書…

長風呂、アロマなどは、リラックス効果が高く、睡眠休養感を高める工夫として、第2回目(どんな睡眠がよい睡眠?)でもお伝えしています。仕事以外のあらゆる活動が、ストレス解消・疲労回復・睡眠の充実などに相互に関連していることがわかるでしょう。

休日を有意義に過ごすことは、健康な生活と仕事のバランスを取る上で欠かせません。

仕事がうまくいくと、プライベートにも良い影響が伝播することがあります。逆に、プライベートがうまくいくと仕事に良い影響が伝播することがあります。「スピルオーバー効果」として知られているもので、仕事とプライベートの間で「良いもの」があふれ出して影響を及ぼすことを指します(負のスピルオーバーも知られています)。

仕事⇔プライベート、オン⇔オフは完全には区別することはできません。仕事もプライベートもより良い方向に向かうように日々の行動の選択の質をより良いものにしていきましょう。

まとめ:仕事とプライベート。主演は自分である。

このシリーズも今回で最終回となりました。みなさんのご活躍を祈念して筆をおきたいと思います。お付き合いくださいまして、ありがとうございました。

少し時間があいてしまいますが、みなさんと直接お話ができる機会を持てるようなので、ぜひ参加してください。私も楽しみにしています。

佐上 徹(医師・学士会会員)


『佐上先生に訊いてみよう』

6月5日(水)に配信の「第5回目:自分の機嫌は自分で取れ!」について、会員のTさんから質問を頂きました。

Tさん:

前回の『「話す」と「離れる」。ココロのもやもや』に大賛成です。

やり過ごそうとしてもなかなか離れていかない心の根雪も、ちょっとした会話で融けて(解けて?)いくのが分かります。
卒業してからは、実家の母や地元の友人に話せる機会も激減です。
気持ちを託せる彼氏でもいれば良いのですが、これはまた別の話として・・・なにかアドバイスはありますか?

佐上:

コメントありがとうございました。
実体験に基づく重要な指摘、気づきですよね。

1.「聞く技術・聞いてもらう技術」ISBN-13 978-4480075093

という本があります。著者の東畑開人氏は、京大出身で臨床心理学の先生です。
カウンセリングの実務経験に基づいて、「聞いてもらう技術」があるという知見をご提示くださっています。
ご参考になさってください。

2. お悩みごとは、振り返ると・他人から見ると些細なことだとしても、リアルタイムの当事者には重要かつ無視できない問題です。それがクリアしない・晴れないことがココロのもやもやですよね。
そんなとき、早い段階で相談できる人(相談スキルが高くて相談相手がいる人)は、社会人スキルが高いと言えると思います。

このような援助要請には、自分の内面をさらすという「心理的な損失」を伴うため、援助要請は容易に行動に移しにくい面があることは、援助要請をする前に知っておきたいメタ知識かもしれません。

3. 社内・社外・学外で横・斜めのつながりを持つことはとても重要だと思っています。
臆せず気にせず、人と人とのつながりを増やすような機会を見つけて、積極的に参加していただければいいと思います。学士会のような多分野のジャンル・異年齢のコミュニティでの出会いはとても重要ですね。

(住んでる世界が同じなら同じ考え方に陥りやすいと思いますが、背景・年齢などに多様性があれば、権力勾配もなく自由に物が言えて、思いも寄らないソリューションが提供されることもあると思います。)

4. もし具体的な相談相手が思い当たらなくても、なにか困り事があり・頼りたいときには、その時に一番頼りたい人を頼ってしまっていいと思っています。

そのことで相手の気持を損ねたり、迷惑をかけて嫌われるかもしれない、と思ってしまいがちです。しかし、困っているから助けてほしいというシグナルは出していいと思います。迷惑もかけていいと思います。「迷惑をかけるべきでない」と抑制的に考える日本人は多いようです。自己中心的に、生きましょう。「遠慮しない戦略」もオッケーです。

逆に、相談を受ける側からすると、誰か身近で困っている人のために割く時間・ゆとりは常に持ち合わせていたいと私は思っています。

いま困っている人に対して、どんなに忙しかったとしても1日15分も捻出できないような人の生き方、あり方はどうなのかな、と常々思っています。他人の話には耳を傾けたいものです。専門の資格は必要ないです。

そして、誰かが困っているときに親身になって相談に乗るという経験も増やしてもらいたいと思います。逆に自分が困ったときに、親身になって相談に乗ってもらえると信じましょう。人間ってお互い様なので、きっとそういうものだと信じています。

5. もしすでに「キモチを託せるパートナー」に出会えているのであれば、その関係を大事にしていただきたいと思います。

パートナーがいなくても、重たい相談ではなくても、職場・研究室の中で、日常の雑談だったり出来事を振り返って、よもやま話をする時間はとても重要ですね。何を言っても安全(守られる)という間柄が心理的安全性であり、相談事も安全な間柄があってこそできるというものです。

雑談すらできないような相手と、人生の重要な悩み事をいきなりどこまで深堀りして相談できるものでしょうか(反語的表現)。

「困っていることがあればいつでも言ってね」と声をかけてくれた先輩・上司は大変に心強かった記憶があります。逆に、若手・部下にそういう言葉をかけていくことは、今後「上司力」を上げる重要なスキルかもしれません。

6. 長く理屈っぽくなってしまったのですが、結論的に以下に集約したいです。

・困ったら誰かに相談してね+困ってる人の相談に乗ろうね
・困ってなくても、日々の生活の中で雑談できる相手との関係づくりも大事
・多様性のあるコミュニティに飛び込むことも大切

ご参考になさってください。

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