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学士会メールマガジン

No024号 2004/12/1 配信分


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★★★学士会メールマガジン No.024
★★★2004年12月号            http://www.gakushikai.or.jp
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いつもメールマガジンをお読み下さいましてありがとうございます。
┌─────────────────────────────────┐
◇ INDEX
└─────────────────────────────────┘
[1].今後の夕食会・午餐会の予定
[2].学士会ニュース
[3].イベントのご案内
[4].学士会館同窓会情報[七大学関係の同窓会]
[5].過去の会報ピックアップ[映画監督の仕事─その苦心談(山田洋次)]
[6].会員からの投稿コーナー
[7].今月の一冊
[8].メルマガ読者限定プレゼント

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        ● 今後の夕食会・午餐会の予定 ●
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◆ 夕食会 12月 10日(金):演題『環境問題をめぐる先進工業国と
                            発展途上国』
                            講師 三浦 永光氏
                            (津田塾大学国際関係学科教授)

       1月 11日(火):講師 斎藤 精一郎氏
              (立教大学社会学部教授)

             2月 10日(木):講師 池内 輝雄氏
                            (帝京大学文学部教授)

             3月 10日(木):講師 渡邉 昭夫氏
                            (平和・安全保障研究所理事長、
                             東京大学名誉教授)

◆ 午餐会 12月 20日(月):12月の午餐会は例年どおり休会です。

             1月 20日(木):演題『シェイクスピアの人間談義』
                            講師 小田島 雄志氏
                            (東京大学名誉教授、演劇評論家、
                             東京芸術劇場館長)

             2月 21日(月):講師 樋口 恵子氏
              (高齢社会をよくする女性の会代表、
               東京家政大学名誉教授)

             3月 22日(火):講師 武藤 芳照氏
              (東京大学大学院教育学研究科教授)

◆ 忘年家族会
      12月 23日(木): A組12:00~15:00(午餐・催し)
                B組16:00~19:00(催し・晩餐)
      12月 24日(金): C組12:00~15:00(午餐・催し)
               D組16:00~19:00(催し・晩餐)
            ※分館は24日(金)、25日(土)開催でお食事のみです。

◆ 新年祝賀会
             1月  5日(水):邦楽演奏・日本舞踊
            出演 :花柳秀衛(舞)・福原百七(笛)・望月左京(鼓)・
                             中村洋子(解説)

⇒ http://www.gakushikai.or.jp/event/index.html


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          ● 学士会ニュース ●
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◆《カード会員に新サービス導入》

 学士会カードのお申し込みを引き続き、承っております。12月から新たなサ
ービスとして、『週刊ダイヤモンド』誌及び『ダイヤモンド・ハーバード・ビ
ジネス・レビュー』誌(月刊)の年間定期購読割引が導入されました。
 学士会カード会員の方は、『週刊ダイヤモンド』誌の年間購読料が市価概算
30,000円のところ、23,800円と20%offに、『ダイヤモンド・ハーバード・ビ
ジネス・レビュー』誌の年間購読料が市価概算24,000円のところ、18,000円と
25%offになります。
 両誌定期購読のお申込は、こちらです。学士会の会員番号をお伝えください。
 ■ダイヤモンド社サービスセンター
  フリーダイヤル 0120-700-853(平日9:00~18:00)
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――
 学士会館内のレストランで、学士会カードを提示下さいますと5%割引とな
ります。
 また、ダイナースカード及びシティゴールドカードにご入会くださいますと、
学士会の年会費が無料になります。
 カード本来のサービスである傷害保険、ホテル料金割引、空港ラウンジ利用
権等もすべて付帯されています。

 学士会カードに関するお問い合わせ・資料請求先はこちらです。
 学士会企画係 TEL:03-3292-5955(平日9:00~17:00)
 メールinfo@gakushikai.or.jp
 ⇒ http://www.gakushikai.or.jp/card/card.html <<

 ダイナースクラブカード 0120-041-962(24時間 年中無休)
 ホームページはこちら:
 ⇒ http://www.diners.co.jp/intro/card/teikei/gakushi_idx.html <<

 シティバンクカード   0120-86-69-24(24時間 年中無休)
 ホームページはこちら:
 ⇒ http://www.citibank.co.jp/ccsi/gakushikai.html <<


……………♪∞∞~ ?学士會館精養軒よりお知らせ ~∞∞♪………………
◇≪ブライダルフェアのご案内≫

日程:平成16年12月5日(日曜日)
時間:11:30~17:00
場所:千代田区神田錦町3-28 学士会館

学士会館には、お二人の晴れの日の装いを最高に引き立てる格調あるたたずま
いがあります。
大正ロマンの華やかなレリーフと、漆喰の重厚な柱……、歴史ある建物が醸し
だす本物の風格と優雅さを、この機会に是非ご体感ください。
また、館内のチャペル・神前式場、披露宴会場なども装飾しております。
当日は、経験豊富なスタッフが婚礼全般についてご説明、ご相談を承ります。
スタッフ一同心よりお待ちしておりますので是非、お気軽にお立ち寄り下さい。

≪来館された方への特典≫
新規ご成約頂いたカップルに5,000円分のお食事券プレゼント
フルコース試食(¥5,000/要予約)も承ります。
* 試食を希望される方は1週間前までにご予約が必要となります(洋食のみ)
* 当日プレゼントの5,000円お食事券での試食は出来ませんのでご了承下さい。

次回開催予定日:平成17年1月16日(日)
11:30~17:00

≪知人・友人ご紹介キャンペーン≫
ご成約されたカップルをご紹介頂いた方に豪華ディナーと宿泊のセットをプレ
ゼントいたします。
皆様のお近くにご結婚をお考えの方がおられましたら是非、ご紹介下さい。

お問合せ TEL 03-3292-5940  FAX 03-3292-0882
     E-mail:g-kaikan@gakushikai.or.jp
     担当:澤田、内野、渡辺

◇≪学士会館宿泊部の料金が改定されました≫……………………………………

 このたび、諸般の事情により、2004年11月1日より宿泊料金の改定および会
員様のご紹介者に限っての一般開放をさせていただくこととなりました。
 更なるサービス向上にむけて?学士會館精養軒社員一同、益々努力する所存
です。今後とも学士会館の変わらぬご愛顧をよろしくお願いいたします。

宿泊部利用料金はこちらです。
https://www.gakushikai.or.jp/facilities/index.html


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           ● イベントのお知らせ ●
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◆第8回 活弁in学士会座 ◆◆◆

<『雄呂血』 ~弁士・澤登翠&澤登翠のシネマトーク~>
▲監  督:二川文太郎
      1925年 阪東妻三郎プロ作品
▲活動弁士:澤登翠
▲開催日時:12月2日(木) 開演18:30
      (開場18:00・上映終了19:50・トーク終了予定20:40)
▲会  場:学士会館神田本館2F 203号室
▲木 戸 銭:前売り2,500円(当日3,000円) 赤ワイン付
      学生は2,000円(当日学生証提示)

▲Webからのお申込はこちら
⇒ http://www.gakushikai.or.jp/seminar/katsuben0803.html

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◆学士会館で落語会 その十 ◆◆◆

<学士会寄席 柳家小はん>
▲演  目:「一人酒盛」「湯屋番」
▲開催日時:2005年1月8日(土) ◎18:00 笑い始め(開場17:30)
      ※今回は土曜日開催です。お間違いのございませんように。
▲場  所:学士会館神田本館2F 203号室
▲木 戸 銭:2,000円 * 笑止税込み
▲全席自由:定員100名(満席の場合、当日券を発売しないことがありますの
      で、必ずご予約をお願いいたします)

⇒https://www.gakushikai.or.jp/seminar/rakugo_9.html

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*チケット予約
学士会企画係まで氏名・連絡先住所・電話番号・枚数をお知らせ下さい。

⇒ https://www.gakushikai.or.jp/seminar/seminar.html

TEL   :03-3292-5955(平日9時~17時)
FAX   :03-3292-2779(学士会事務局)
e-mail:info@gakushikai.or.jp

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   ● 12・1月の学士会館同窓会情報(七大学関係の同窓会) ●
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┏━━━━━━┓
┃学士会館本館┃東京都千代田区神田錦町3-28    電話:03(3292)5936
┗━━━━━━┛
【12月】
 1日(水)化工38会
     19年卒独法会
     三鷹クラブ
     京大一水会
     五九童会
     神田会
     青山会
     一日会
 2日(木)港友会
     紫水葺手会
     港友会
     一日会
 3日(金)芙蓉会
     物数奇会
 4日(土)厚木の会
     二八会
 5日(日)和紀潮会
     東京大学精神分析同窓会
 6日(月)春秋会
     SSM聖心会
     八葉会
     あすなろ会
 7日(火)三三会
     長安会
     牛歩会
 8日(水)常盤会
     経済記事を読む会
     電子応用懇話会
     浜名103会
     会計人東大会
     野村京大OB会
     東京カラス会
     京大二水会
 9日(木)三虎会
     東京九機会
     秋窓会
     一隆会幹事会
10日(金)京大COE
     ゆうすげの会
     京大一水会
     社会経済研究会
     いてふ会
     25日会
     麻の実会
11日(土)朴の花句会
     十二月会
     東京群山歌会
     東京蕗の会
     青山会
12日(日)宝珠短歌会
     東大理Ⅰ2B会
     東大船舶2・3・4会
     東大合気道部昭和51年度入学(0次会)
     東大狂言研OB.OG会
13日(月)虎の門会
     論語研究会
     機愛会
14日(火)吉富会
     北大薬学部東京同窓会
     つくば会
     楽只會
     二火会
15日(水)十五月会
     史遊会
     独禁法懇談会
     ニュートレンド研究会
     水曜会(東大第Ⅰ外科)
     南溟三水会
     椎の木会
16日(木)じらく会
     昌平会
     椎の木会
     新研究会
     じらく会
     東大土木16年会
17日(金)明和会
     38赤門柔道会
     光会
     明和会
     そうとん会
     稜光会
18日(土)辻が花句会
     石名会
     京城帝大同予科同窓会幹事会
     そえじま会
     東大電気18年会
19日(日)ノモス研究会
     藤の会
20日(月)一九会
     六友会
     二三機会
21日(火)理念哲学研究会
     古事記を読む会
     アラ研究会
     横河ブリッジ
22日(水)四創会
25日(土)万葉七葉会
     28年度卒物理学科クラス会
     実善会
26日(日)日記を読む会
27日(月)操山句会

【1月】
 5日(水) 神田会
 6日(木)TTS会
 7日(金)桜林研究会
 8日(土)法律英語研究会
     朴の花句会
     東京蕗の会
 9日(日)宝珠短歌会
     かなえ会
     哲学研究会
10日(月)駒場化研会
     近世史研究会
11日(火)孔徳会
     舶友会
12日(水)一日会
     炭友会
14日(金)おほとり句会
     現代マスメディア研究会
     十五日会
15日(土)辻が花句会
     東京郡山歌会
     京大経済懇話会
17日(月)月月会
18日(火)NB会
     東大電気18年会
     一九会
     東京キタン会
19日(水)常盤会
     杜久会
     南溟三水会
20日(木)じらく会
     飛ばそう会
     楽只會
     椎の木会
     三鷹クラブ
21日(金)赤門剣友会
     稜光会
     ゆうすげの会
22日(土)慧の会
     二水会
     そえじま会
23日(日)東京川棚会
     日記を読む会
24日(月)満拓会
     操山句会
25日(火)筑友会
26日(水)36L1-7B
     10B松涛会
     九州大学同窓会賀詞交換会
27日(木)九州二八会
     わだち会
     名古屋大学全学同窓会
     関岡教授を囲む会
28日(金)二八会
     京大東京工化会
29日(土)東大機械三日会
     京機会関東支部
30日(日)平成17年度北大歯学部関東支部学術講演会新年会
     ノモス研究会
     北大歯学部関東同窓会
31日(月)二三機会
     藤の会

※11月20日までに確定しているもののみです。


┏━━━━━━┓
┃ 学士会分館 ┃東京都文京区本郷7-3-1     電話:03(3814)5541
┗━━━━━━┛東京大学構内赤門隣り
【12月】
 4日(土)井水会
     東大赤門射撃会総会
     東大機械同窓会
     東大拳法会総会
10日(金)東大公衆衛生学教室同窓会
11日(土)東大教育学部COE
     佐伯ゼミOB・OG会
15日(水)フットゼミOB・OG総会
16日(木)東京銀杏会
17日(金)秋山研究室忘年会
27日(月)加藤研究室忘年会

【1月】
 8日(土)一高短歌会

※11月20日までに確定しているもののみです。

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【幹事代行サービスのご案内】
会員様の要望の高かった“幹事代行”サービスを、内容を一新して再スタート
しました。
ご案内状をお送りするリストを頂ければ全てこちらでトータルコーディネート
致しますので、この機会に是非ともご利用ください。

■サービス内容:①案内状の印刷作業・発送作業 ※費用は実費のみ頂きます。
        ②出席者の把握
        ③出席者名簿作成・準備
        ④会場・受付・備品等の準備
        ⑤名札の作成・準備
        ⑥宴会の準備
        ⑦当日受付・精算のお手伝い
        ⑧会計報告書の作成
        ⑨欠席者への資料送付
        ⑩次回開催の予約
        ⑪宿泊の手配

≪オプション≫  記念写真
 通常お一人様1,800円+文字入料5,000円のところ、今回特別価格1,300円で
ご提供いたします
(撮影料・郵送代・技術料・文字入れ料を含む)

≪お問合せ・ご連絡先≫
Tel 03‐3292‐5940  Fax 03‐3292‐0882(小平・内野)
e‐mail:g-kaikan@gakushikai.or.jp

⇒ http://www.gakushikai.or.jp/info/secretary.html


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          ● 過去の会報ピックアップ ●
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┃□┃映画監督の仕事──その苦心談
┃□┃山田 洋次
┃□┃             學士會会報725号(昭和49年10月号)より
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 恥ずかしながら東大法学部の出身である。まことに恥ずかしながらである。
よく出身校は、と尋ねられて東大ですと答えると
「へえー」
とびっくりしたような顔をされる。次の質問は何学部ですか、である。嘘つく
わけにもいかないから小声で
「法学部です」
と答えると一瞬変な顔をした後
「ほう、それはそれは、また随分変った職業をお選びですね」とくる。東大法
学部卒は全員役人か裁判官になるとでも思っているのだろうか、映画監督をや
っているのは余程不思議に思えるらしい。もっとも僕自身法学部を出たような
気持ちが余りしないから返事をする声もひどく自信なげであるに違いない。何
しろカンニング一点ばりで、最低の成績とはいえ一応卒業させてくれるのだか
ら、東大法学部もたいしたところではないともいえる。
 さて、その僕に映画の演出について何か書けという學士會会報からの依頼で
ある。映画という、アカデミーとはもっとも縁遠い大衆的芸術について、この
しかつめらしい雑誌にどう書けばよいのか、大変に戸惑う次第なのである。

 映画の演出とはどういうことをするのか、映画の監督の仕事は具体的にはど
ういうことかという質問には大変答えにくい。映画監督である僕自身にもまだ
よく分かってはいないのかもしれぬ。つまり画家なら油絵具をキャンパスに置
いていくとか、小説家なら原稿用紙の升目に字をうめていくとかいった具体的
な行為があるのだが、映画の監督にはそれがない。彼の仕事は色々人と違って
打合せをしたり、スタッフや配役をきめたり、撮影現場でカメラの横に坐って
あれこれ指図したりといったようなことで、とても一口には言えない程多様で
あり複雑である。またその仕事のやり方も人さまざまで、現場で大声をあげて
俳優を叱りとばし、スタッフに次から次へと矢のように指示をとばすといった
華やかな監督もいれば、その正反対の監督もいる。故溝口監督についての有名
な話がある。某撮影所の若い助監督達が何人かで、一度、かの名匠の仕事ぶり
を見学に行こうということになって溝口健二が撮影中のスタジオに出かけてい
った。あれ程の名匠だからさぞや帝王の如くにスタッフや俳優に君臨している
であろうと想像していた処、その期待は全く裏切られた。つまり、溝口健二は
何もしていなかった、というのである。ただスタジオの一隅にじっと坐ってス
タッフや俳優の忙しげな動きを眺めているだけで、一般の人ならどこに監督が
いるのかも分からぬほどであった、ということに助監督連中はびっくりして帰
ってきたのである。何時だったか、僕がこの話を長年溝口健二の助監督を勤め
た人に話したことがあった。すると彼は
「その通りです。溝口さんは何もしませんでした」
と答えた。
「溝口さんがしたことはですね」
と彼は言葉をついだ。
「ただ、『駄目だ』と言うことだけでした」
 つまり、美術監督がセットを作る、溝口さんは「駄目だ」という、カメラマ
ンがポジションをつける、溝口さんは「駄目だ」という、俳優が演技をして見
せる、溝口さんは「駄目だ」というのである。
「要するに溝口さんは『駄目だ』を言い続けたんですよ。だから、OKが出る
迄各パートの大勢の優秀なスタッフ達が血のにじむような努力をして頑張る、
何度も何度もやり直して最後にようやくOKが出る。つまりそのスタッフの努
力が溝口さんの作品を作り上げたのですよ、あの人はただ『駄目だ』を言い続
けただけでした」

 東映京都に加藤泰という監督がいる。時代劇だけを作り続けて、今の学生に
強い人気のある人だが、僕はいつかこの人と食事をしながら
「監督の仕事というのはひとことでいって何でしょうね」
と尋ねたことがある。
 加藤監督はギョロリとした眼をむいて暫く考えた後、京都なまりでこう答え
てくれた。
「つまり、そのカットがOKかNGかを決める役でしょうな」
 NGというのは撮影所用語で、NO、つまり駄目ということであるが、僕も
監督の仕事はそれに尽きると思う。映画監督がひとつのショット(カットと言
ってもよい)を撮影する場合、例えば小説家や画家が原稿用紙やカンバスに自
分のイメージを自由に描くこととはかなり事情を異にする。それがセット撮影
であるとすれば、部屋の壁の色、置いてあるタンスの種類、机の材質、更には
その上に置かれた茶碗や灰皿の模様に至るまで監督が決める訳にはいかないし、
また決めようもないことである。それは美術監督、あるいはその指揮下にある
大道具、小道具のスタッフが夫々のイメージにおいて考え出すことであり、監
督はそれ等に対してOKか、あるいはもっと変わったスタンスはないかという
注文を出すことだけをするのである。例えば、カメラについて言えば、監督は
レンズの種類、露出、現象処理といった問題について専門的な知識は全く持ち
合わせていない。録音について言えばマイクの種類、そのポジション、録音レ
ベル、と言った複雑な技術についても全く無知である。ただ、出て来た結果に
ついてだけ、良いか悪いかを判断するのであり、またその判断が出来なくては
ならない。映画を作りあげる過程には数多くのそのような技術的専門家達、例
えば脚本家、カメラマン、録音技師、美術監督、その他メイクアップ、結髪、
編集、音楽、等々、そして夫々の助手達、更にはネガを現像しプリントを製作
する現像所、あるいは映画館における映写技師までを含めると何百人という専
門家達の参加があり、監督が彼等の仕事に対し、無数のOK・NGを積み重ね
ることによって一つの作品は完成するのであり、そして出来上がったものはど
こから見てもその監督の個性の反映であり、彼の世界の表現となっているので
ある。

 よきスタッフに恵まれた監督は幸せである。彼は黙ってカメラの横に坐り、
煙草をくゆらしていればもうそれで彼の作品は自然に誕生するのである。良い
脚本を手にし、満足すべき配役と気に入りのスタッフを集めることが出来た時、
もうその作品の80%は出来上がったようなものだと僕等は考える。そして事実
そのこと、つまり、配役、スタッフ編成に80%ぐらいのエネルギーを僕等は費
やすのである。
 一つの作品の為にスタッフのチームが組まれる。このチームを監督の名前を
冠して××組と呼ぶ。溝口作品なら溝口組であり、僕の作品を撮影する時は山
田組である。何やら建築現場のようで品がない点もあるが、しかしなかなか味
のある呼称だと思う。組の親方である監督はどの専門にも属さず、全体の仕事
を監督しながらひとつの作品を作り上げるのである。他のジャンルの芸術でい
えばオーケストラの指揮者がきわめて近い仕事かと思える。彼自身は演奏しな
い、彼の仕事はそれぞれのパートの演奏家からいかにして良い音を引き出すか
にある。
 一昨年新著作権法が制定された。僕達映画監督はこの法律に反対し、デモま
でやったものだった。この法律に映画という芸術は「監督、俳優、撮影者、美
術家、その他の共同著作物」だと規定されている。僕の拙い文章をお読み頂い
た方には、この規定がいかにノンセンスか判って頂けるだろう。共同著作物と
はなんという乱暴で無神経な規定の仕方であろうか。映画監督は何もしない、
ただOKかNGかを言うだけである。にもかかわらず、その映画は否応なくそ
の監督の作品なのである。「駄目だ」を言い続けただけだったとしても溝口健
二の作品はその強烈な個性ゆえに世界的な評価を得ている。映画とはそういう
芸術なのである。
(映画監督・東大・法・昭29)

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        ● 会員からの投稿コーナー ●
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

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《皆様からの投稿募集》
※会員の皆様からの投稿を募集しています。ご投稿者全員に学士会記念品セッ
 トを進呈しています。投稿は、匿名希望でも承っております。
※また、会員の方からのご要望により、会員の方のホームページを紹介してい
 くことにしました。ご自身のホームページを紹介したい方は、ホームページ
 アドレスと30字前後の紹介文を学士会企画係までお知らせください。
※展示会等の告知も承っております。

※投稿については、下記メールアドレスにお送りください。
 info@gakushikai.or.jp

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            ○ 今月の一冊 ○
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇『山田洋次×藤沢周平』
◇吉村英夫著・大月書店・2004年刊

 本年の文化功労者に選ばれた山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』は、昨年の
学士会午餐会でも上映し、多くの会員から好評を博した。本書は、山田監督と
原作者藤沢周平を中心に論じた映画評論である。
 山田時代劇の特徴は、藤沢周平と通底する視線の低さ、黒澤時代劇とは決定
的に違う密度の濃い男女の情感など、その大きな特質を改めて活字で指摘され
ると、山田監督の映画の希少性に改めて気付かされる。
 そして、『男はつらいよ』(=松竹)から引き継がれる小津調、伊丹万作・
橋本忍から注がれる軽妙さ、山中貞雄から流れるリアリズム、さらには黒澤か
ら引き継いだもの引き継がなかったもの、もちろん溝口健二等、それらが合流
して出来たものが正真正銘の「山田洋次印」という論では、山田時代劇が映画
史の中でも特異な位置付けであることを証明する。もしや、現時点では同時代
であるが故に、後世の映画ファンが振り返ったらまだまだ評価が低いくらいな
のでは、と思わせるほど山田映画の魅力を提示してくれている。
 最も興味深かったのは、最後のインタビューの項。新作『隠し剣 鬼の爪』
の原作がまたもや藤沢周平であることも含めて、吉川英治でも山本周五郎でも
司馬遼太郎でも、五味康祐や池波正太郎でもなく、「なぜ藤沢周平なのか」と
いう問いに対する答えにも山田時代劇の魅力が秘められている。


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