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学士会メールマガジン

No018号 2004/6/1 配信分


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★★★学士会メールマガジン     No.018
★★★2004年6月号         http://www.gakushikai.or.jp
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いつもメールマガジンをお読み下さいましてありがとうございます。
┌─────────────────────────────────┐
◇ INDEX
└─────────────────────────────────┘
[1].今後の夕食会・午餐会の予定
[2].学士会ニュース
[3].イベントのご案内
[4].学士会館同窓会情報[七大学関係の同窓会]
[5].過去の会報ピックアップ[學士會会報NO.710 昭和46年1月号より]
[6].会員からの投稿コーナー
[7].今月の一冊
[8]. 招待券プレゼント

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         ● 今後の夕食会・午餐会の予定 ●
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◆ 夕食会 6月 10日(木):
         演題『あなたの思いが遺伝子のはたらきを変える』
         講師 村上 和雄氏
        (筑波大学名誉教授)

      7月 12日(月):
         演題『高齢社会の自立と共生』
         講師 柴田  博氏
        (桜美林大学大学院教授・東京都老人総合研究所名誉所員)

      8月の夕食会は例年どおり休会です。

◆ 午餐会 6月 21日(月):
         演題『ローマ初代皇帝アウグストゥスの別荘?』
         講師 青柳 正規氏
        (東京大学文学部教授)

      7月 20日(火):
         講師 海部 宣男氏
        (国立天文台台長)

      8月 20日(金):
         8月の午餐会は例年どおり映画の上映です。
         文化映画 『掘るまいか』
         監督:橋本信一
         デジタル・カラー 1時間23分


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            ● 学士会ニュース ●
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         ≪ブライダルフェアのご案内≫

 学士会ブライダルフェアを下記の通り開催いたします。
日時:平成16年6月20日(日)11:00~19:00
プレゼント:衣装試着&写真プレゼント
      デザート&ドリンクサービス
*当日御成約のカップルには豪華プレゼントをご用意しております。
〔問合せ先〕TEL:(03)3292-5940 FAX:(03)3292-2779(担当:渡辺・宮崎)


   ≪カフェ レストラン【ラタン】 営業時間延長のお知らせ≫

 5月1日(土)から会合やイベント後にゆっくりとお食事やお茶を楽しんで頂
けるように、営業時間を延長いたしました。
 スタッフ一同、ご来店を心からお待ち申し上げております。
【平日・土曜】9:00~23:00
 《ランチタイム》 11:30~14:30(L.O.14:00)
 《ティータイム》 14:00~17:00
 《ディナータイム》17:00~23:00(L.O.料理22:00,ドリンク22:30)
【日曜・祭日】9:00~21:00
 《ランチタイム》 11:30~14:30(L.O.14:00)
 《ティータイム》 14:00~17:00
 《ディナータイム》17:00~21:00(L.O.料理,ドリンク20:30)

※《モーニング》  7:30~9:00(予約制・宿泊者の方のみ)


        《学士会カード会員受付中》
 学士会カードのお申し込みを引き続き、承っております。
学士会カードに関するお問い合わせ・資料請求先はこちらです。
学士会企画係 TEL:03-3292-5955(平日9:00~17:00)
メールinfo@gakushikai.or.jp

>>>> http://www.gakushikai.or.jp/card/card.html <<


ダイナースクラブカード 0120-041-962(24時間 年中無休)
ホームページはこちら:

>>>> http://www.diners.co.jp/intro/card/teikei/gakushi_idx.html <<



シティバンクカード   0120-86-69-24(24時間 年中無休)
ホームページはこちら:

>>>> http://www.citibank.co.jp/ccsi/gakushikai.html <<



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           ● イベントのお知らせ ●
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◆学士会企画による研修ツアー ◆◆◆

【再発見 鎌倉の旅】<松尾剛次会員を講師に迎え>

 定番の「鶴岡八幡宮」「建長寺」を中心にガイドブックには掲載されていな
い『中世都市 鎌倉』をご案内します。学士会会員とその同伴者限定です。
 特に今回は、松尾講師、建長寺のご配慮で、三門(神奈川県重要文化財)二
階に安置されている鎌倉市指定文化財「五百羅漢」や、開山蘭渓道隆の舎利殿
「昭堂」(国重要文化財)を拝観させていただけることになりました。どちら
も通常は未公開ですので、貴重な研修になると存じます。

 講師は昨年に引き続き松尾剛次会員(山形大学教授)です。1954年、長崎県
生まれ。東京大学文学部、同大学院博士課程を経て、現在、山形大学教授。本
年6月から東京大学COE特任教授。文学博士。専門は日本中世史、宗教社会学。
 著書に、「勧進と破戒の中世史」「鎌倉新仏教の誕生」「中世都市鎌倉を歩
く」「仏教入門」「お坊さんの日本史」ほか多数。

◆日  程:7月2日(金)
◆集合時間:◎学士会館前集合7:50
      ◎東京駅丸の内丸ビル前集合8:00
      ◎鎌倉駅東口集合10:00
◆内  容:建長寺・鉢の木本店(昼食)・鶴岡八幡宮(鎌倉国宝館)・報国寺
◆解散時間:18:00頃学士会館着(丸ビル経由)

◆旅行代金:東京発着(学士会館または東京駅)16,500円
      鎌倉発着            15,500円

◆懇親会 :2,500円(オプションにて旅行後、学士会館で松尾先生とのご歓
      談)

◆募集人員:35名(最少催行人員:30名)

 ※お申し込み受付は、先着順とさせていただきますので定員に達した場合に
は止むを得ずお断りする場合もございます。ご了承ください。

◆お申込み締切日:6月5日(土)消印有効
◆添乗員が全行程同行いたします。

ご旅行に関する、お申込み・お問い合せは

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
JTB「学士会研修ツアー」係
TEL:03-5245-8860
FAX:03-5245-5314
受付時間(月)~(金)10:00~17:30(土・日・祝・祭日休業)

〒135-8505江東区木場2-17-16ダヴィンチ木場ビル6F
 JTB東京神保町支店
 一般旅行業務取扱主任者 江田裕紀 

企画/制作:社団法人学士会 旅行主催:ジェイティービー
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
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◆第5回 活弁in学士会座 ◆◆◆

<『三銃士』 ~弁士・澤登翠&澤登翠のシネマトーク~>
▲監  督:フレッド・ニブロ
      1921年 ダグラス・フェアバンクス・ピクチャーズ制作
▲活動弁士:澤登翠
▲ピアノ :柳下美恵
▲開催日時:6月12日(土) 開演・14:00
     (開場13:30・上映終了16:00・トーク終了予定16:50)
▲会  場:学士会館神田本館1F レセプションホール
▲木 戸 銭:前売り2,500円(当日3,000円) 紅茶付
      学生は2,000円(当日学生証提示)

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◆レセプションホール・サロンコンサートのご案内 ◆◆◆

<やの 雪/テルミンコンサート>
♪ 開催日時:2004年6月26日(土) 18:30開演(18:00開場)
♪ 場  所:学士会館神田本館1F レセプションホール
♪ チケット:4000円(当日:4200円)学士会会員は400円引き
     ※ コーヒーor紅茶付
♪ 出  演:やの雪(ボーカル・RCAテルミン他)
       赤城忠治(ボーカル・ギター他)
       西川義昌(バイオリン)、他
♪ ゲ ス ト:The Twins(バッグパイプ)

やの雪ホームページ
http://www.neontetra.co.jp/neonplaza/about_neontetra/yano.html
ビクターエンターテイメント
http://www.jvcmusic.co.jp/theremin/index.html

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◆学士会館で落語会 その七 ◆◆◆

<学士会寄席 桂藤兵衛>
▲演  目 【しゃっくり政談】
      他一席
 助  演:むかし家今松
▲開催日時:2004年7月15日(木) ◎19:00 笑い始め(18:30開場)
▲場  所:学士会館神田本館2F 203号室
▲木 戸 銭:2,000円 * 笑止税込み
▲全席自由:定員150名(満席の場合、当日券を発売しないことがありますの
      で、必ずご予約をお願いいたします)

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◆第2回 キッズセミナー ◆◆◆

<【南極教室】 ~元・国立極地研究所教授、内藤靖彦先生を講師に迎え>

◆日  程:7月24日(土)14:00~16:00(13:30開場)
◆場  所:学士会館神田本館3F 320号室
◆内  容:南極で起こる自然現象、昭和基地での生活、化石や隕石など、南
      極についての分かりやすいお話。第2回の今回は「南極の生き物」
      について。装備品や氷に触る体験コーナーも。
◆入場料 :小人300円(小学生対象・小学生未満は無料) 保護者500円
◆定  員:150名

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*チケット予約
学士会企画係まで氏名・連絡先住所・電話番号・枚数をお知らせ下さい。

>>>> http://www.gakushikai.or.jp/seminar/seminar.html <<


TEL   :03-3292-5931(平日9時~17時)
FAX   :03-3292-2779
e-mail:info@gakushikai.or.jp
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     ● 6月の学士会館同窓会情報(七大学関係の同窓会) ●
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学士会館本館
 1日(火)東大地質
 2日(水)三割会
     神田会
 3日(木)名大潤山会
     一木会
     東大37年卒クラス会
 4日(金)昭和18年農経卒業生の会
 5日(土)武蔵愛日会
 6日(日)東大文Ⅱ2Bクラス会
 7日(月)東京?井会
     機愛会
     東北大経済学部経和会総会
     東京六如会
 8日(火)40Eクラス会
     アラ研究会
     春秋会
     東京カラス会
 9日(水)一日会
10日(木)東京九機会
11日(金)縦横無人会
     桜林研究会
     十番教室の会
12日(土)関東七柔会囲碁会同好会
     航空会平成元年卒クラス会
     東大航空会
     航空会昭和49年クラス会
     航空会昭和44年クラス会
     赤門乗馬会
     東北大学剣道部OB会
     ノモス研究会
13日(日)小谷研究室OB会
     青柳会
     東京浪岡会
     北大歯学部関東同窓会
     北大シグマ会
14日(月)桜楓会文京支部総会
     月曜会
     東京昭士会
15日(火)東京待兼会
     銑燈会
     十五日会
     親油会
16日(水)楽只会
     農工37会
     双葉会
     昭和20年卒火薬親和会
     東大16年会(経)
     南溟三水会
     三水会
     燃化34年
17日(木)蕉葉会
     NB会
     東京河上会
     北大理学部化学科24期クラス会
     21三木会
     芙蓉会
18日(金)卯月会
     東大電気18年会
     九大農学部同窓会東京支部
19日(土)路党の集い
     京大経済学部第10回経済懇話会
20日(日)一新会
     東大物理工学科昭和25・26年卒同窓会
21日(月)一九会
     月月会
23日(水)水曜会(東大第一外科)
     明亜会
     二三会
24日(木)金銀会
25日(金)槻の木会
     三航会
26日(土)東北大薬学部同窓会関東支部幹事会
     憲法懇話会
     桜楓会
     北大OBサッカークラブ
28日(月)東大26年卒クラス会
     二三機会
29日(火)二九会
     稜光会
30日(水)鵬友会

学士会分館
 3日 (木)四八会
      浦高無心会
 4日 (金)豪友会
      ペリプラ会
 5日(土)化工57会
     倉持俊一先生を偲ぶ会
 7日 (月)浦高一八会
10日(木)東大土木同窓会評議会
11日(金)S46東冶会
12日(土)昭22薬学クラス会
     佐佐木先生を囲む会
     さつき会
     燦燦会
     造兵精密同窓会
18日(金)学士入学者の集い
     東大第一外科同窓会世話人会
19日(土)46LⅠ・Ⅱ 12Bクラス会
25日(金)鉄門倶楽部
26日(土)参の会 04

※5月20日までに確定しているもののみです。

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【幹事代行サービスのご案内】
 会員様の要望の高かった“幹事代行”サービスを、内容を一新して再スター
トしました。
 ご案内状をお送りするリストを頂ければ全てこちらでトータルコーディネー
ト致しますので、この機会に是非ともご利用ください。

■サービス内容:①案内状の校正・印刷・発送
        ②出席者の把握
        ③出席者名簿作成・準備
        ④会場・受付・備品(オプション含む)等の準備
        ⑤名札の作成・準備
        ⑥宴会(料理・飲物・食卓花他)準備
        ⑦受付・精算のお手伝い
        ⑧会計報告書の作成
        ⑨欠席者への資料送付
        ⑩次回開催の予約
        ⑪宿泊の手配

■パック基本料金(お一人様)のご案内:

==== 8,000円 =========================================================
料理8品、デザート
飲み放題(ビール、日本酒、ソフトドリンク)
サービス10%、食卓花、部屋代、代行手数料、消費税含む

=== 10,000円 =========================================================
料理11品、デザート、コーヒーor紅茶
飲み放題(ビール、日本酒、ソフトドリンク、ウイスキー)
サービス10%、食卓花、部屋代、代行手数料、消費税含む

=== 12,000円 =========================================================
料理13品、デザート、コーヒーor紅茶
飲み放題(ビール、日本酒、ソフトドリンク、ウイスキー、ワイン)
サービス10%、食卓花、部屋代、代行手数料、消費税含む

※その他、基本料金につきましてはご相談させて頂きます。
※オプションにて写真撮影(集合写真)
◎通常お一人様1800円+文字入れ料5000円のところ、特別割引価格1300円(撮
 影代・郵送代・消費税・技術料・文字入れ料込み)でご提供いたします。
〔問合せ先〕TEL:(03)3292-5940 FAX:(03)3292-2779(担当:小平・内野)


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          ● 過去の会報ピックアップ ●
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┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃□┃車猿先生と癌研究
┃□┃釜洞醇太郎
┃□┃             學士會会報No.710(昭和46年1月号)より
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 車猿(クルマサル)先生又の名隣孤庵、大阪大学名誉教授、国立がんセンター
総長、久留勝先生は秋の訪れとともに病革り、遂に昭和45年9月8日、68年の多
彩なる生涯を閉じられた。贈正三位勲一等。先生の還暦記念出版詩集、「華甲」
(はなよろい)の扉に「闘いつ学びつ病みつ生き抜きつ六十路山坂九十九折れ
来つ」の感懐を載せておられるが、その生涯を通じての奮闘努力は正に惰夫を
して立たしめるものがある。しかし反面こよなく酒を愛し「自分の好きな三詩
人の李白、旅人、オマルハイヤムが揃いも揃って酒の賛美者であるのは何故だ
ろう」など言いながら、歌作らぬ私を連れ出して、大阪北の新地を飲み歩くこ
と幾度か。そして随分茶目振りも発揮した。箱にぎっしりつまったピーマンの
中から最も辛いのをえらび出して人に噛らせる悪趣味、グリーンスタイン(ア
メリカの癌生化学者)の来た時など料亭でわさびの食べ方を教えてやるといい
ざま、手づかみでぼりぼり噛んで見せ、相手がその通りやって苦虫をかみつぶ
したような顔をすると快哉を叫ぶといった調子で気の弱いものには到底真似の
出来ぬ芸当であったが、飲みながら折にふれてしみじみと述懐された尊父、恩
師への敬慕の情は、惻々として私の心を打った。それらを綴り合わせると自ら
ににじみ出る人柄と共に、先生の研究の方向までが羅針盤のように浮かび上が
るのである。先生の心はまことに純真で、師の教えを恂恂としてまもり、たゆ
まぬ努力とあいまって幾多の輝かしい発見へと連なるのである。さて先ずご尊
父の思い出について先生ご自身に語って貰おう。

「私は伊勢の山田の生まれであります。父はやはり外科をやっておりました。
一生を市井の開業医として終りましたが、向学心の強い男で、開業の余暇研究
を続け、病理学では今でも可成高く評価されている2、3の仕事を残しました。
私が、7、8才の時は、正に父の油の乗り切っているときでありましたから、子供
心にも夜遅く本を読んでいる父の姿が何か尊いもののように思われ、また殆ど
収入の全部を傾注したと言ってもよい無数の本は私に読書の楽しさを味わわし
てくれるに充分でした。多忙な開業医をして一生を送りつつ、こつこつと勉強
して、よい学術上の仕事を残し得た父の生涯は、私の心中に学問というものは
如何なる境涯にあっても、しようと思う意志さえあれば必ず出来るものである
という強い信念を与えてくれました」

 しかし、八高の理科を出て大学の志望を決める時、父と可成はげしい衝突が
あった。先生は物心つき始めた頃から生物に興味を持ち、殊に昆虫に対する異
常な関心は、中学の槌賀安平という生物の先生によって拍車をかけられ、大学
の理学部に進みたかったが、父の強いすすめによって東大の医科に受験された
という。因みにご尊父の病理学上の仕事というのは独乙留学時代、カウフマン
教授のもとで癌と肉腫とをビールショウスキー染色によって鑑別するという美
事な仕事である。品山と号し書画をよくされたが、品山に病垂れをつけると癌
になる。けだし、先生は生まれながらにして癌学者になる宿命を負っておられ
たのかも知れない。

 大正15年卒業と同時に塩田外科に入局、その後8年を経た昭和8年11月28日、
塩田教授の推薦で翌年開院する運びになっていた癌研究会の康楽病院外科医長
の辞令を貰った。奇しくもこの日は先生の誕生日で、癌の治療を生涯の目標と
運命づける日となった。癌研究会の会頭は長与又郎、研究所長は佐々木隆興、
病院長は稲田竜吉、いずれおとらず日本医学全盛時代を彩る錚々たる顔振れで
ある。久留先生の得意や思うべし。

 開院後まだ1月もたつかたたぬかの頃だった。長与先生から一冊の本を手渡さ
れた。それはその頃出版されたウェストフィスの直腸癌の本だった。その中に
は、直腸癌の場合、癌の付近にポリープ(一種のいぼ)の見出されることが多い。
そのポリープには癌への移行のさまざまの段階が見られる。ポリープこそ大部
分の直腸癌の発生母地であると結論してあった。発癌の機序に触れる大問題で
ある。この頃、このポリープから癌の出来るのを自ら体験する機会が到来した。
この事を話す時の先生は熱気を帯びる。滋賀県から来た一人の患者は下血、粘
液便、しぶり腹等、直腸癌を思わせる症状を訴えたが、よく検査してみると苺
のようなポリープが見つかった。この一部をとって顕微鏡でみると正しく良性
の腺腫である。まだ癌になっていない。肛門から管を入れて電気で焼き切れば
簡単に癒る。患者は繰返し「病気は癌ですか」と聞く。「いや幸いなことにま
だ癌ではない」と答えると、患者は大いに喜び、そのまま帰ってしまった。1
年あまりたって、その患者がまたやってきた。直腸の奥をしらべると、以前あ
ったポリープは跡形もなく消失してその代わり紛うかたなき直腸癌が大きく場
所を塞いでいる。患者に「もう今度は電気で焼いた位では駄目だ。ちゃんと直
腸を切る手術が必要だ」と説くと、失望落胆して帰って行った。この、人間に
即して行う自然観察、それ以上貴重なものが、医学の世界にあるだろうか。一
羽の燕は必ずしも春を告げないという諺もある。しかし自然は小出しにしか正
体を見せない。先生の関心は直腸癌に集中した。そして手術の術式にも色々工
夫をこらした。この努力は三宅速教授の目にとまり、昭和15年大阪で開かれた
日本外科学会総会で宿題報告をする機会に恵まれたのである。この頃より、こ
の前癌的変化は、直腸癌だけの問題だろうかという疑問を持つに到ったのであ
る。翌16年金沢大学に教授として赴任されるのであるが、これを機会に康楽病
院8年間の癌手術の予後の整理を思いたたれた。乳癌、直腸癌、胃癌について
調べた結果、胃癌が最も不良という結論が出、これから胃癌の前癌状態の研究
に入れられる。ところがこの前癌状態というテーマを引掲げて専ら臨床側から
学界に奮闘される先生に対して基礎病理学者は白眼視し、むしろ四面楚歌の感
があったと聞く。前癌変化のことをはじめて言ったのは山極先生だったのにと
つぶやいておられるのをきいた。

 昭和30年金沢大学から大阪大学に赴任されたとき、この英邁なる学者の謦咳
に接する好運に浴することになった。大阪に来られる一つの大きな動機は、平
素敬慕してやまぬ古武弥四郎先生に引かれたためである。先生はしばしば「俺
は人間の医学をやるのだ」と語られた。当時研究所にいて動物実験の醍醐味に
ひたっていた自分には遠い世界の話のように聞こえたが罰が当る日がやって来
た。ある日私の口の中に白い小さな腫物が出来はじめているのに気づき、直ち
に研究所の外科で切片を作って貰って、顕微鏡で見ると上皮の著しい増殖の中
に明らかな細胞分裂像が見えるではないか。一瞬お先真暗になった。そしてこ
の標本はいち早く阪大の病理専門家の間に配られていることがあとでわかった。
自分としては、念のため歯学部の病理教授を訪れて診断を乞うた。はじめ、
「口の中の病変は特殊性がありますから、ご心配いりませんよ」と言いながら、
標本を眺めていたが、急に態度一変し「これは癌です。しかし最近は上顎癌の
手術も進歩してさほど苦痛はありません」と慰めにかかった。蹌踉蹣跚として
研究所に戻ってくると、助教授がもう入院の準備は出来ましたという。その時、
久留先生が帰り支度で4階の私の部屋まで上がって来て「君の標本は見た。成
程わるい。しかしオーマは一日にして成らず。これで含嗽でもしておきたまえ」
と言い残して帰られた。ほっとすると同時に委ねておいて大丈夫かしらという
一抹の不安は残った。が先生は正しかった。抗生物質は効を奏して、日ならず
して腫物は引いてしまった。動物発癌実験で強力な化学物質を大量に投与して
も癌になるには1年以上もかかる。ましてや人間の場合、オーマ(カルチノー
マ、ザルコーマ)は一日にしてならぬというのが先生の持論である。専門化を
以って自任する私共を尻目に先生の方に軍配が上がった。生きた人間を直視す
る眼力は恐ろしいと観ずるようになった。最近私共は化学物質による試験管内
発癌に成功し、細胞の発癌過程を克明に観察、計量できるようになった。そし
て、真の癌化の前に以って非なる一時期が必ず存在することを証明した。が、
それを先生に報告する機会がなかったのは心残りである。

 さて教える側に立った久留先生はどうであったか。阪大外科教室の最上助教
授の言によれば教室員の指導は秋霜烈日、理に適わぬ処置や手術を行ったもの
は、直立不動のまま徹底的に反省を促されたという。これは先生の恩師塩田広
重教授の教育法を良しとし、そのまま踏襲されたものである。反面「あたら名
玉を磨きそこなった悔いはないか。千里行く名馬の調教を誤った覚えはないか。
純真な若人たちに日夜接し得る教育者のよろこび。人のきめた俸給の乏しさを
訴える前に、天の授けた俸給の豊かさを忘れてはなるまい」と語られる先生で
もあった。

 先生は詩をよくし書画を好み、興到って立ち所に色紙などに物して人に与え
られた。試みに先生の随筆『竹林雀語』の序の一節を引いて、その風格の一端
を御紹介したい。
「烏有先生刀圭に志して、茲に年あり。朝に神農に念じて活人の利剣を研ぎ、
夕に薬師に跪いて回生の秘薬を錬る。日高うして塵外に顕微を探り、夜到れば
壷中の丹丘に遊ぶ。齢耳順を越えて、たまたま薬餌に親しみ、秋眠暁を覚えて
形影の私語するを聴く。「忽忙にして華胥(かしょ)安らかに、閑去して槐安
乱る」と。先生不通にしてその意を知らず。起きて筐底を探して却って旧稿一
巻を得たり。依って上梓して世に問うと云爾。
 昭和丙午仲秋名月 友人隣孤庵主題す」

 御自身を架空の人物として風流に描いておられる。光風霽月の境地。西にビ
ルロートあり、東に久留ありて一世を風靡す。彼音楽を好み、此れ美術に長ず。
世に棺を蔽いて事定まるという言葉があるが、久留先生においては、棺を蔽い
て偉容新たなるものありと感ずる次第である。
(第9代大阪大学総長)
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       ● 会員からの投稿コーナー ●
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私の作品「Place de Paris」を展示しています。
八束 正司夫(やつづか ましお)
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中央区の街並みを描く会「区内施設展示」
~平成16年8月10日まで
中央区役所2階東ミニギャラリー
9:00-17:00(土・日祝日休み)
中央区築地1-1-1中央区役所
主催:中央区教育委員会

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個展を開いてます。よろしくお願いします。
大沢裕
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5月31日から6月6日まで、銀座のギャラリーです。
(銀座6-5-12 ギャラリー 喜久田)
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《皆様からの投稿募集》
※会員の皆様からの投稿を募集しています。ご投稿者全員に学士会記念品セッ
 トを進呈しています。投稿は、匿名希望でも承っております。
※また、会員の方からのご要望により、会員の方のホームページを紹介してい
 くことにしました。ご自身のホームページを紹介したい方は、ホームページ
 アドレスと30字前後の紹介文を学士会企画係までお知らせください。
※展示会等の告知も承っております。

※投稿については、下記メールアドレスにお送りください。
 info@gakushikai.or.jp

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            ○ 今月の一冊 ○
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◇『大阪大学歴代総長餘芳』
◇大阪大学編・大阪大学出版会・2004年刊

 今月の会報ピックアップでも取り上げた釜洞醇太郎第9代総長をはじめ、初
代長岡半太郎総長から第11代山村雄一総長までの歴代大阪大学総長にまつわる
話をまとめた一冊。執筆者は梅溪昇名誉教授、芝哲夫名誉教授などいずれも阪
大名誉教授の筆による。
 初代長岡半太郎は、「阪大を去るにあたっての辞」で「阪大を日本一の大学
にするため教授陣には私の力のかぎり新鋭をすぐって、集まり頂いたつもりだ。
そして研究第一、殊に産業科学の研究に力を入れる気運を作った。長岡は今大
阪を去るが、どうか、教授・学生共々に、この阪大の学燈を守って頂きたい」
と切々な気持ちを吐露し、これが近代の名文とうたわれた。
 他には、現在の阪大生にも馴染み深い「楠本賞」の楠本長三郎2代総長、今
でもテレビアンテナに使われている八木アンテナを考え出した八木秀次第4代
総長など、多士済々の人物伝となっている。

大阪大学出版会ホームページはこちら
URL:http://www.osaka-up.or.jp
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◆昨年5月のメールマガジンに会報原稿を再録しました金田一春彦氏が5月19日
にご逝去されました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
 金田一先生の会報原稿『硬骨の人─亡き父金田一京助の思い出─』(メルマ
ガ第5号)を御覧になりたい方はこちらからお願いします。


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         ☆★☆ 招待券プレゼント ☆★☆
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◎下記の招待券をそれぞれ抽選にて1組(2名様)にプレゼントいたします。

★展覧名:「エミール・ガレ没後百年 ガレとナンシー派巨匠展」
 場 所:大一美術館(名古屋市中村区鴨付町1-22)
 会 期:平成16年4月27日~10月24日(毎週月曜休館)
 応募先:Eメールにてinfo@gakushikai.or.jpまで。
 記 載:件名を「大一美術館招待券」として会員番号とご氏名、ご住所を明
     記して下さい。
 締切り:6月10日着信メールまで(先着順ではなく抽選です)。
 発 表:6月15日までの招待状発送を持って代えさせて頂きます。

★展覧名:「遠藤周作─様々なる世界①」
 場 所:遠藤周作文学館(長崎県西彼杵郡外海町大字黒崎東出津郷77)
 会 期:平成16年5月16日~本年中有効(年末年始休館)
 応募先:Eメールにてinfo@gakushikai.or.jpまで。
 記 載:件名を「遠藤周作文学館招待券」として会員番号とご氏名、ご住所
     を明記して下さい。
 締切り:6月10日着信メールまで(先着順ではなく抽選です)。
 発 表:6月15日までの招待状発送を持って代えさせて頂きます。

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