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★★★学士会メールマガジン No.017
★★★2004年5月号 http://www.gakushikai.or.jp
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いつもメールマガジンをお読み下さいましてありがとうございます。
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◇ INDEX
└─────────────────────────────────┘
[1].今後の夕食会・午餐会の予定
[2].学士会ニュース
[3].イベントのご案内
[4].学士会館同窓会情報[七大学関係の同窓会]
[5].過去の会報ピックアップ[學士會会報NO.766 昭和60年1月号より]
[6].会員からの投稿コーナー
[7].今月の一冊
[8]. 招待券プレゼント
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● 今後の夕食会・午餐会の予定 ●
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◆ 夕食会 5月 10日(月):
演題『法隆寺のものさしは中国南朝尺』
講師 川端 俊一郎氏
(北海学園大学経営学部教授)
6月 10日(木):
講師 村上 和雄氏
(筑波大学名誉教授)
◆ 午餐会 5月 20日(木):
演題『「日本的経営」の何が残るか』
講師 ロナルド ドーア氏
(ロンドン大学名誉教授)
6月 21日(月):
講師 青柳 正規氏
(東京大学文学部教授)
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● 学士会ニュース ●
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《生涯メールアドレスの転送先変更について》
生涯メールアドレスのご利用が急増しておりますが、それに伴って、転送先
変更のご依頼が増えてまいりました。原則として、生涯メールアドレスのご登
録、ご変更手続きは、パスワードを必要とすることもあり、会員の方ご自身で
ご自宅等のパソコンから行って頂いております。学士会ホームページの「生涯
メール」の項目からお手続き下さいますようお願い申し上げます。
ご不明な点は、お気軽に学士会総務課までお問い合わせ下さい。
学士会総務課 TEL:03-3292-5931(平日9:00~17:00)
メールinfo@gakushikai.or.jp
《学士会分館ビアガーデンオープン》
今年も学士会分館ビアガーデンがオープン致します。東大本郷キャンパス赤
門横の学士会分館の中庭にて、5月10日(月)16:00から営業開始いたします。
営業時間は月~土の16:00~21:00(L.O.20:00)、日曜・祝日休業です。
どなたでもご利用できますので、皆様のご利用をお待ちしております。
学士会分館 TEL:03-3814-5541(平日9:00~20:00)
≪カフェ レストラン ラタン 営業時間延長のお知らせ≫
5月1日(土)から下記のとおり営業時間を変更いたします。
会合やイベント後にゆっくりとお食事やお茶を楽しんで頂けるように、営業
時間を延長いたしました。
スタッフ一同、ご来店を心からお待ち申し上げております。
【平日】9:00~23:00
《ランチタイム》 11:30~14:30(L.O.14:00)
《ティータイム》 14:00~17:00
《ディナータイム》17:00~23:00(L.O.料理22:00,ドリンク22:30)
【日曜・祭日】9:00~21:00
《ランチタイム》 11:30~14:30(L.O.14:00)
《ティータイム》 14:00~17:00
《ディナータイム》17:00~21:00(L.O.料理,ドリンク20:30)
※《モーニング》 7:30~9:00(予約制・宿泊者の方のみ)
《5月4日レストラン「ラタン」貸切日のご案内》
誠に勝手ではございますが、レストラン・ウェディングによる貸切のため学
士会館レストラン「ラタン」が5月4日(火)10:00~16:30の間、クローズとな
ります。7:30~9:00のモーニング、17:00~21:00のディナーはオープンし
ております。
ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんが、ご理解のほど何卒よろしく
お願いいたします。
学士会館 レストラン「ラタン」 TEL:03-3292-5936(学士会会館課)
《ホテル臨時休業日のご案内》
大変、恐縮でございますが、5月5日(水)、6日(木)の2日間、館内改装の
ためホテル部門を臨時休業致します。
ご不便をおかけいたしますが、ご理解の程、何卒、よろしくお願いいたします。
《学士会カード会員受付中》
学士会カードのお申し込みを引き続き、承っております。
学士会カードに関するお問い合わせ・資料請求アドレスはこちらです。
学士会企画係 TEL:03-3292-5955(平日9:00~17:00)
メールinfo@gakushikai.or.jp
>> http://www.gakushikai.or.jp/card/card.html <<
ダイナースクラブカード 0120-041-962(24時間 年中無休)
ホームページはこちら:
>> http://www.diners.co.jp/intro/card/teikei/gakushi_idx.html <<
シティバンクカード 0120-86-69-24(24時間 年中無休)
ホームページはこちら:
>> http://www.citibank.co.jp/ccsi/gakushikai.html <<
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● イベントのお知らせ ●
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◆学士会館で落語会 その六 ◆◆◆
<柳家小はん独演会>
▲演 目 【妾馬】
【お見立て】
▲開催日時:2004年5月13日(木) ◎18:30 笑い始め(18:00開場)
▲場 所:学士会館神田本館1F レセプションホール
▲木 戸 銭:2,000円 * 喉湿し・笑止税込み
▲全席自由:定員150名(満席の場合、当日券を発売しないことがありますの
で、必ずご予約をお願いいたします)
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◆第5回 活弁in学士会座 ◆◆◆
<『三銃士』 ~弁士・澤登翠&澤登翠のシネマトーク~>
▲監 督:フレッド・ニブロ
1921年 ダグラス・フェアバンクス・ピクチャーズ制作
▲活動弁士:澤登翠
▲ピアノ :柳下美恵
▲開催日時:6月12日(土) 開演・14:00
(開場13:30・上映終了16:00・トーク終了予定16:50)
▲会 場:学士会館神田本館1F レセプションホール
▲木 戸 銭:前売り2,500円(当日3,000円) 紅茶付
学生は2,000円(当日学生証提示)
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*チケット予約
学士会企画営業係まで氏名・連絡先住所・電話番号・枚数をお知らせ下さい。
>> http://www.gakushikai.or.jp/seminar/seminar.html <<
TEL :03-3292-5955(平日9時~17時)
FAX :03-3292-2779(学士会事務局)
e-mail:info@gakushikai.or.jp
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● 5月の学士会館同窓会情報(七大学関係の同窓会) ●
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学士会館本館
4日(火)東大精密42クラス会
5日(水)神田会
7日(金)東北大・理・化学昭和25年同期会
南溟三水会
翠榕会
東京大学アメフト部
潮風会
8日(土)東京大学医学部病理学教室同窓会
青山会
10日(月)月曜会
東京カラス会
東大林学科クラス会
11日(火)昭和32年東大応用化学会
12日(水)硅珪会
東京如水会
一日会
キタン会
青山会
京大ニ水会
13日(木)研二木会
14日(金)東大薬学部45年卒の会
十五日会
ろくべい会
東大スケート部アイスホッケー部門
15日(土)昭37年東大水産学科
16日(日)九大OB会
17日(月)東大土木16年会
一九会
東大薬学科昭和19年卒クラス会
18日(火)東大電気18年会
東大工学部応用化学17年9月卒
三鷹クラブ
青葉工業会関東支部
19日(水)南溟三水会
三水会
赤門スケートクラブ
20日(木)北炭会
東京昭士会
21日(金)甲中東京16会
槻の木会
稜光会
応化31年会
東京大学教養学部50周年設立会
22日(土)芙蓉会
関東名柔会
23日(日)くねんぼ会
北医同窓会
24日(月)駒場研究会
北大理学部化学科22期
25日(火)東大25機会
26日(水)普一会
京大滝川事件記念会
北陵篭球部室
27日(木)東北大岩鉱24回同窓会
黒ゆり会
28日(金)東北大学通信工学科昭和30年卒クラス会
二九会
二八会
29日(土)名大応化会総会
六友会
二水会
30日(日)ゆきむし会
31日(月)二三機会
学士会分館
8日(土)一高短歌会
NHK25期会
13日(木)船舶十三年会
14日(金)雲雀会55年会
15日(土)八潮3A会
八高会
なかよし会
22日(土)郁文館中学同期会
1962卒東大物理同窓会
27日(木)東大山の会
28日(金)38農化クラス会
29日(土)芳香会
東大歩こう会
昭28 5B無尽会
東大自動車部OB会
東大拳法会
※4月20日までに確定しているもののみです。
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◆ 幹事代行サービス承り中 ◆◆◆
同窓会・クラス会などの準備を学士会がお手伝い致します。
サービス内容
①会場の予約
②会場の準備
③案内状の印刷・発送
④欠席者への資料発送
⑤出席者名簿の作成
⑥近況報告の作成
⑦名札・備品等準備
など幹事の方に代わり準備いたします。
忙しい幹事さんへ指定の場所に学士会がお伺いいたします。
料金等、詳しくは学士会事務局 企画営業係
TEL03-3292-5955(FAX03-3292-2779)
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● 過去の会報ピックアップ ●
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┃□┃アメリカのつまずき ─論理と情緒─
┃□┃藤原正彦
┃□┃ 學士會会報No.766(昭和60年1月号)より
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アメリカ人は算数に弱い、つり銭勘定さえ手際よくできない、とよく言われ
る。10年ほど前に私はコロラド大学で教えていたが、確かに数学の力は低かっ
た。平均的な理学部1年生の実力は、日本の高校2年生程度だった。最近行われ
たIEA(国際達成度評価委員会)主催の数学テストには、先進11カ国の中学1
年生が参加したが、平均点において日本が一位でアメリカがびりであった。弱
いのは数学ばかりではない。国語力も相当に低下している。実際、アメリカ人
学生の余りにもひどい英語を、日本人の私が添削して返すこともたびたびだっ
た。また報道によると、海軍で最近採用された新兵の4分の1は、安全のための
注意書きを読む能力さえなかったという。大学進学適性検査における数学や言
語能力の成績も、60年代、70年代を通じて一貫して下がり続けているそうであ
る。
こういった事実を前にしてアメリカでは、教育改革論議がスプートニクショ
ック以来ともいうべき熱をおびている。レーガン大統領をはじめ、政府、教育
関係者達はこれを国家的危機と捉え、この一両年の間に十指にあまる提言が公
にされた。このままでは、経済面や軍事面において国際的優位を保てない、と
いう危機感が根底にある。少数民族、女性、障害者などに対する教育機会均等
が、公民権運動以来ここ20年ほどの重点課題であったが、これからは、平等(E
quality)と共に質(Quality)も追求すべき、というのが共通認識である。そし
て、より厳しいカリキュラムと教員資質の向上が、異口同音に叫ばれている。
こうしたアメリカ国内での動きを遠く日本で眺めていて、まず抱くのは「期
待」である。将来のことはさておき、ごく現実的に考えれば、アメリカが経済
力や軍事力で現在程度の力を維持することは、世界平和とって好ましい。その
ために国民の学力水準を上げる必要がある、というのはごく当然であり、我々
も期待したいのである。
ところがその一方で私は、ある「危惧」をも禁じ得ないのである。いかなる
国においても、いかなる時代にあっても、教育の荒廃が単独で起きることはな
い、と私は思う。学力低下、非行、教員資質の低下等、どの事象をとっても、
それは社会に深く根ざしている。低下しているのは子供や教師達だけでなく、
政治家も官僚も、学者も主婦もみな同様と考えられる。人心の荒廃が教育にお
いて最も劇的に表われる、というだけなのである。今日のアメリカも例外では
ない。
アメリカ教育の根幹に光を当てると、「論理的思考」がくっきりと浮かび上
がる。日本の知識詰め込み型と異なり、論理的思考を育てることに重心が置か
れている。例えば、日本では代表的な暗記科目の社会科でさえ、アメリカでは
論理的思考を育てるための教材となる。小学校5年生に、「1800年前後に、東部
からアパラチア山脈を越えて中西部へ移って来た家族の道中記を書け」、とい
うレポートが出されたりする。どんな家族かを自ら設定し、どの道を通り、ど
んな服装で、どんな食事をとっていたか。どんなインディアンに出会い、どん
な花が咲いていて、どんな歌をうたっていたか、などを調べて書くのである。
人に相談したり、いくつもの文献に順序良くあたり、それを自分の言葉で表現
する、などの過程を通し、論理的思考が要求されるのは言うまでもない。
「何年に誰が何をした」を中心とする日本との違いは明らかである。このア
メリカ式やり方は、国際テストでの平均点を上げることに直接役立たないが、
実に素晴らしいものと考えられる。
論理的思考がことさら重視されるのは、アメリカが多民族国家であることに
よる。民族が異なれば言葉も習慣も風俗もみな違う。そういった人々を統一す
るには、誰にも共通なもの、論理を用いるしか他になかったと言える。このた
めか、アメリカ人は実に論理的である。知識でははるかに優れた日本人留学生
が、いったん議論になると全くアメリカ人学生に適わない、というのはよく出
会う光景であった。学生だけではない。政治家、芸能人、スポーツ選手から、
2分の1、3分の1も出来ない主婦に至るまで、驚くほど理路整然としたことを言
う。この点で日本人はかなり見劣りする。論理重視の教育は、十分に効果をあ
げてきたと言える。それでは、これほど論理的思考の出来る人々から成る社会
が、なぜ荒廃するのだろうか。
論理的思考が万全でないのは、この世の中に、論理的に正しいことがごろご
ろあるからである。例えば少年非行について、「厳しく体罰を加えるべき」も
「体罰は絶対にいけない」も「ケースバイケースで体罰を加える」も、みな論
理が通っている。ユダヤ人虐殺のナチスも、ベトナムをじゅうたん爆撃したア
メリカにも、アフガニスタン侵攻のソ連にも論理はある。問題は、いくらもあ
る正しい論理の中から、どの論理を選ぶかである。通常、この選択は情緒によ
ってなされる。ここで論理を選ぶ、ということをもう少し詳しく考えてみよう。
論理を繰り返し用いた結果、AからZに到達したとしよう。Zは結論である。
図示すると、A→B→C→……→Zとなる。矢印が論理であるが、出発点のA
は論理的帰結でないから仮説である。この出発点の仮説を選ぶのが情緒なので
ある。この情緒は、その人のそれまでの人生と深い関わりをもつ。どんな家庭
に育ったか、どんな先生や友達をもったか、どんな読書をしてきたか、どんな
愛を経験したか、どんな挫折を味わったか、どんな別れに出会ったか……等、
ありとあらゆる体験がこの情緒を形成している。情緒の充分に発達していない
人は、正しい出発点を選べないことになる。このような人が、たまたま頭が良
く論理に強いと、実に危険である。出発点Aが誤っている場合、途中の論理が
正しければ正しいほど、結論のZは必然的に誤ったものとなるからである。こ
こに、論理だけに頼ることの危険と、情緒の重要性がある。
情緒という言葉は、意味が広くやや漠然としている。喜怒哀楽などの一次的
情緒だけでなく、友情、勇気、愛国心、正義感など、さらにはより高次なもの
まで含んでいる。私は多種多様な情緒の中から、とりわけ重要なものとして二
つを取り出してみたい。
一つは、「他人の不幸に対する敏感さ」である。これは生得的な情緒ではな
い。小学1年生の子供でも、自分の母親が死んだ時には涙を流す。しかしそれ
が友達の母親であった場合は、涙を流すことはまずない。6年生になれば涙を
流すこともあるだろう。すなわちこの情緒は、後天的に、教育などを通じて獲
得されるものである。
もう一つは「なつかしさ」である。これは一般に考えられているよりかなり
高度な情緒である。10歳の子供はなつかしさとは何かよく理解できない。それ
は、その子がなつかしむべき過去を持たないからではない。なつかしむ情緒が
育っていないからである。なつかしさの対象は自らの生きてきた過去だけに止
まらない。父母の青春時代をなつかしむ、祖父母の青春時代をなつかしむ、明
治をなつかしむ、江戸時代をなつかしむ、万葉の人々をなつかしむ……と、い
くらでも広がり深まる情緒である。10歳児にこの情緒を期待するのは到底無理
だが、20歳でも30歳でも、いや50歳になってもこれのはなはだ希薄な人々がい
る。それだけこの情緒が高度なのだとも言えよう。
私自身の過去を振り返ってみる時、喜びに比べ悲しみの方が、はるかに底が
深くかつ永続的であることに気付く。そして驚くべきことに、印象に残る悲し
みというものは、ほとんど常に、何らかの形で別れと関わっている。別れは単
なる物理的別離ではない。別れの悲しみは、深層において、「人生が有限であ
る」ことに連なっている。一定期間の後に必ず死がやってくる、という宿命か
らくる無常感やはかなさが、別れに色濃く投影されている。すなわち、人間情
緒の中枢には、死の意識があると言えると思う。これは生物としての人間にと
って、逃れられない観念なのかも知れない。上にあげた二つの情緒は、ともに
この中枢近くに位置する。
アメリカ人の情緒力低下の原因として、アメリカにはどんな特殊事情があっ
たのだろうか。「他人の不幸に対する敏感さ」に関しては、貧困の解消が大き
いと思われる。広大肥沃な土地と天然資源に恵まれたアメリカでは、諸外国に
比べ逸早く貧困が姿を消した。ある時、「アメリカに貧困はない」と言った私
に、親しいアメリカの友人は、「いやある。ハーレムに住む中年の黒人はみな
ぶくぶく太っている。あれは貧困のため、良質の蛋白をとれず澱粉質ばかりを
とり過ぎるせいだ」、と反論した。私がここで言う貧困とは、本当の貧困、何
も食べられないほどの状態のことである。この意味での貧困は、アメリカには
とうの昔からない。貧困を間近に見ることは、子供達にとって人間の悲しみに
触れる貴重な機会と言える。決まって弁当の時間になるとひとり抜け出し、砂
場の縁にじっと坐っている友達の姿や、電車賃がないため、遠足のたびに欠席
する子供の存在は、子供心を揺すぶるに違いない。子供にも容易に理解され、
かつこれだけの深さをもった悲しみは、他に探すのが困難である。たとえ自ら
が貧困でなくとも、周囲に貧困が存在するだけで、情緒の発達を大きく促すこ
とだろう。
「なつかしさ」に関しては、アメリカ人が「故郷を失った人々」であること、
を想起する必要がある。アメリカ人は誰も、過去において一度は故郷を捨てた
人々である。白人はヨーロッパに、黒人はアフリカに、黄色人はアジアにと、
そう遠くない過去にいったんは訣別をした人々である。ここに言う故郷とは、
故郷の地だけでなく、そこに存在する歴史、文化、伝統などを含めた広い概念
である。なるほどアメリカ人もホームタウンに住む親や友人をなつかしく思っ
ている。しかしそれは、我々日本人が故郷に対して抱く、精神的緊縛感を伴っ
た感慨とは異なるものだ。その上彼等は極めて気軽に移転するから、ホームタ
ウンさえ持たない人々が大勢いる。根無し草となった人々に郷愁を期待するの
は難しい注文である。そしてこの郷愁が、しばしば、「なつかしさ」の原点と
なるのである。
二つの情緒について、アメリカの抱える隘路を説明したが、今さらどうにも
ならない事情に触れ、弱点をえぐり出したという点で、私はやや複雑な気分で
いる。しかしアメリカを真に再生するには、アメリカ人は情緒についてしっか
り考え直す必要があると私は信ずるのである。無論アメリカ人には、他の国民
に比べいささかの遜色もない、尊敬すべき情緒もいくつかあることは言うまで
もないが。
実は、以上に述べた情緒の問題は、決して対岸の火事ではなく、日本にとっ
ても切実な問題である。教育の荒廃が人心の荒廃であるのは、日本も全く同様
である。日本人の情緒力も、アメリカとは全く別の理由で、着実に低下してい
るようなのである。先日、思い立って以前から読みたいと思っていた、徳富蘆
花の『思い出の記』を読んだ。明治中期に書かれたこの長篇を読んで、何より
感嘆したのは、情緒力の強さだった。やや荒削りの文章でありながら、そこに
は日本人の情緒がいたる所に光っていた。先に述べた二つの情緒も、烈しい形
で溢れていた。ふと私は、明治の強さはここにあったのだな、と思った。そし
て小説や詩などの文学から流行歌までに考えを廻らせたところ、この強い情緒
が明治から大正、昭和初期までは健在であった、との思いを深めた。この頃ま
でに思春期を迎えた人々の情緒力が、断然光っているように感じられるのであ
る。この情緒はその後、次第に愛国心のみに凝集され歪められ、敗戦と同時に
全てが否定されたため、決定的打撃をこうむった。さらに戦後は、社会や家族
がアメリカ型になった上、経済発展により貧困も解消したから、情緒力の低下
は加速されている。
教育問題は、生徒と教師だけの問題ではない。教育荒廃は、国民の情緒力低
下の指標である。当面の教育改革は、対症療法として無論大切である。しかし
それだけに止まり体質改善を怠るなら、どんな制度的手直しを加えようと、遅
かれ早かれ膿が再びどこかにたまることは明白である。本質的に重要なのは情
緒力の向上であろう。50年かけて低下したものを元に戻すのは容易ではない。
言わずもがなだが、貧困を求めたり社会の逆行を計るのは筋違いである。しか
し失ったものの大きさを認識した上で、二つの基本的なものを中心に、情緒と
いう視座から改革を考えることは是非必要と思う。アメリカ人にとっても日本
人にとっても大切と思う。それは人類の生存に関わっている、と言っても過言
ではない。人間の理性ないし論理で、戦争を廃絶することが不可能なのは、歴
史的に証明されている。現代人は、過去の人達に比べ優れた理性をもっている
から、戦争を回避できる、と考えるのは傲慢以外の何ものでもなかろう。こう
考えた時、核戦争から人類を守るには、地球上のあらゆる人間の、美しい情緒
にたよる他に、どんな手だてもないような気がする。故郷の山河をなつかしみ、
故郷の空、土、風、光を思い涙する人が、核戦争のボタンを押すとは、その人
がどんな論理どんなイデオロギーの下にあろうと、私にはどうしても考えられ
ないのである。
(お茶の水女子大学助教授)
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● 会員からの投稿コーナー ●
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=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=-=
下記の展覧会に出展してます
よろしくおねがします。
八束 正司夫(やつづか ましお)
*****************************
ART FREAKS展2004
2004年5月18日(火)~5月23日(日)
10:30-18:00 (最終日は16:00まで)
くりっく 世田谷文化生活情報センター
ワークショップB
世田谷区太子堂4-1-1
東急田園都市線・世田谷線三軒茶屋駅下車徒歩1分
――――――――――――――――――――――――
私の作品「Place de Paris」を展示しています。
中央区の街並みを描く会「区内施設展示」
~平成16年8月10日まで
中央区役所2階東ミニギャラリー
9:00-17:00(土・日祝日休み)
中央区築地1-1-1中央区役所
主催:中央区教育委員会
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=
個展を開きます。
よろしくお願いします。
大沢裕
*****************************
5月31日から6月6日まで、銀座で個展をひらきます。
(銀座6-5-12 ギャラリー 喜久田)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=-=
[会員の方のホームページ紹介]
○http://www5e.biglobe.ne.jp/~bongyo/
現在、画家をやっておりますが、個展情報や作品の画像をホームページ『大
沢裕美術館』に掲載しております。どうかご覧になってください。
《昭和46年経済学部卒 大沢裕》
○http://home.catv.ne.jp/ff/mulva/index.html
粗末な物ですが、ホームページを開設しております。
多変量解析の解説と自作の多変量解析用のフリーソフト「まるば」(MULtiVAr
iate)を配布する為のものです。マニュアルはB5約500頁、プログラムはC
Dロムで配布しています(要実費)。
これらは、若い時講義をしたものを纏め公開しているものです。
(注)勿論、フリーソフトですので、材料費を頂くだけです。詳しくは
当該ページをご覧下さい。
小林龍一(昭和29年工学部応用数学科(旧制)卒)
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-==-=
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
《皆様からの投稿募集》
※会員の皆様からの投稿を募集しています。ご投稿者全員に学士会記念品セッ
トを進呈しています。投稿は、匿名希望でも承っております。
※また、会員の方からのご要望により、会員の方のホームページを紹介してい
くことにしました。ご自身のホームページを紹介したい方は、ホームページ
アドレスと30字前後の紹介文を学士会企画係までお知らせください。
※展示会等の告知も承っております。
※投稿については、下記メールアドレスにお送りください。
info@gakushikai.or.jp
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● 今月の一冊 ●
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◆『祖国とは国語』
◆藤原正彦著・講談社・2003年刊
今月の会報ピックアップでも取り上げた著者は、1943年、旧満州新京生まれ。
東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学理学部教授。故・
新田次郎、藤原ていの次男。学士会会員。
78年、数学者の視点から眺めた清新なアメリカ留学記「若き数学者のアメリ
カ」で日本エッセイストクラブ賞を受賞、以後、独自の随筆スタイルを確立。
「数学者の言葉では」「遙かなるケンブリッジ ~数学者のイギリス」など著
書多数。
本書では、一貫して小学校教育での国語の重要性を強調している。「一に国
語、二に国語、三、四がなくて五に算数」と言い、国の危機を救うのは教育で
あり、その中で最も重要なのが国語。それはすべての知的活動の基礎であり、
高次元の情緒を育てると断言する。
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
☆★☆ 招待券プレゼント ☆★☆
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎下記の招待券を抽選にて2組(1組2名)様にプレゼントいたします。
展覧名:「裏千家蔵 茶の湯の名品」
場 所:茶道資料館(京都市上京区堀川通寺之内上ル 裏千家センター内)
会 期:平成16年3月25日~9月23日(休館期間あり)
応募先:Eメールにてinfo@gakushikai.or.jpまで。
記 載:件名を「茶道資料館招待券」として会員番号とご氏名、ご住所を明記
して下さい。
締切り:5月10日着信メールまで(先着順ではなく抽選です)。
発 表:5月15日までの招待状発送を持って代えさせて頂きます。
**********************************************************************
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