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学士会メールマガジン

No014号 2004/2/1 配信分


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★★★学士会メールマガジン     No.014
★★★2004年2月号         http://www.gakushikai.or.jp
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いつもメールマガジンをお読み下さいましてありがとうございます。

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◇ INDEX
└─────────────────────────────────┘
[1].今後の夕食会・午餐会の予定
[2].学士会ニュース
[3].イベントのご案内
[4].学士会館同窓会情報[七大学関係の同窓会]
[5].過去の月報ピックアップ[学士会月報NO.300号 大正2年2月号より]
[6].会員からの投稿コーナー
[7].今月の一冊

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         ● 今後の夕食会・午餐会の予定 ●
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◆ 夕食会  2月 10日(火):

          演題『日本人のアイデンティティーと歴史認識』
                    講師 石井 紫郎氏
                  (東京大学名誉教授)
            
◆ 午餐会  2月 20日 (金):

          演題『歌舞伎の女形』
                    講師 永山 武臣氏
         (松竹?会長)
          歌舞伎俳優 中村雀右衛門氏
                    聞き手  松竹?演劇部 演劇製作室長 岡崎哲也氏

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            ● 学士会ニュース ●
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       《学士会カードの独自優待サービスを募集》
 昨年9月から発行を開始した学士会カードに、学士会独自のサービスとなる
美術館・博物館での優待割引が導入されました。順次、対象施設を拡大してい
く予定ですが、会員の方からのご提供も募集致したく思います。
 優待サービスの対象は、美術館・博物館に限りません。元々、宿泊施設やレ
ストラン、店舗等は、ダイナースカード、シティバンクカードに充実した優待
制度が付帯されておりますが、学士会カード独自のサービスも募集しておりま
す。
 お問い合わせ・ご連絡先アドレスはこちらです。
メール info@gakushikai.or.jp
>>URL:http://www.gakushikai.or.jp/card/card.html<<
 何卒、よろしくお願い申し上げます。

ダイナースクラブカード 0120-041-962(24時間 年中無休)
ホームページはこちら:
>> http://www.diners.co.jp/intro/card/teikei/gakushi_idx.html <<

シティバンクカード   0120-86-69-24(24時間 年中無休)
ホームページはこちら:
>> http://www.citibank.co.jp/ccsi/gakushikai.html <<

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           ● イベントのお知らせ ●
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◆第3回 活弁in学士会座 ◆◆◆

<『愚かなる妻』 ~弁士・澤登翠&澤登翠のシネマトーク~>
▲監   督:エリッヒ・フォン・シュトロハイム
       1922年ユニヴァーサル作品
▲活動弁士 :澤登翠
▲ピアノ伴奏:柳下美恵
▲開催日時 :2月11日(水・祝) 開演・14:00
      (開場13:30・上映終了15:50・トーク終了予定16:30)
▲会   場:学士会館神田本館1F レセプションホール
▲木 戸 銭:前売り2,500円(当日3,000円) ワイン&チーズ付
       学生は2,000円(当日学生証提示)

*チケット予約
学士会企画係まで氏名・連絡先住所・電話番号・枚数をお知らせ下さい。
>> http://www.gakushikai.or.jp/seminar/seminar.html <<

TEL   :03-3292-5955(平日9時~17時)
FAX   :03-3292-2779(学士会事務局)
e-mail:info@gakushikai.or.jp

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◆学士会初演 壤 晴彦の詠み芝居 ◆◆◆

<『朱雀門・杜子春』 ~朗読・壤晴彦&琵琶演奏・田原順子~>

▲開催日時:2月14日(土) 開演・13:00(開場12:00・終了予定15:30)
▲会  場:学士会館神田本館1F レセプションホール
▲料  金:3,500円 (ワンドリンク・バレンタインチョコレート付)

*チケット予約
学士会企画係まで氏名・連絡先住所・電話番号・枚数をお知らせ下さい。
>> http://www.gakushikai.or.jp/seminar/seminar.html <<

TEL   :03-3292-5955(平日9時~17時)
FAX   :03-3292-2779(学士会事務局)
e-mail:info@gakushikai.or.jp

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◆学士会企画による研修ツアー 第3弾◆◆◆

【四国八十八か寺 お遍路の旅 ~阿波・土佐編~】
 <頼富本宏会員を講師に迎え>

7月、11月に大好評だった鎌倉ツアー、東京近代建築ツアーに続き、第3弾と
しまして四国お遍路ツアーを開催します。四国八十八か寺を数回に分けて満願
の予定ですが、今回は3泊4日の行程で、その2日間を頼富講師に先達してい
ただきます。

◆日  程:3月4日(木)~3月7日(日)・現地集合解散・全食事つき
◆宿  泊:極楽寺・徳島プリンスホテル・ホテル明星or最御崎寺に宿泊予定
◆旅行代金:119,500~128,500円(3泊目のホテル及び相部屋、一人部屋で変
動)
◆募集人員:35名(最少催行人員20名)
★今回、ツアー参加と同時に「学士会ダイナースカード」に新規申込をされた
会員様には、ダイナースクラブポイント50ポイント(50万円利用相当)を進呈
いたします。(既にダイナースカードをお持ちの方には適用されません)

講師:頼富本宏会員(種智院大学学長・京大卒)

▲頼富本宏(Motohiro Yoritomi)
 1945年、香川県に生まれる。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究
科(仏教学)博士課程修了。文学博士。種智院大学教授、国際日本文化研究セ
ンター教授を経て現職。
 インド、チベット、中国の密教遺跡・遺品調査に成果をあげる。真言宗実相
寺(神戸市)住職を兼ねる。著書に『密教仏の研究』(法蔵館)、『空海』(筑
摩書房)、『密教とマンダラ』(日本放送協会)など多数。

◆JTB添乗員と四国霊場会公認先導人が全行程同行いたします。 
ご旅行に関する、お問い合せ・お申込みは
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
JTB「学士会会員ツアーデスク」係
TEL:03-5245-8860
FAX:03-5245-5314
受付時間(月)~(金)10:00~17:30(土・日・祝日休業)

〒135-8505江東区木場2-17-16ダヴィンチビル6F
 一般旅行業務取扱主任者 JTB・江田裕紀(学士会会員)

企画/制作:社団法人学士会総務課企画係 旅行主催:ジェイティービー 
=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
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◆国際高等研究所(高等研)創設20周年記念◆◆◆

<「こうとうけんの人」展~鉛筆による細密肖像画の世界~>
▲作  家:牧井俊明会員(国際高等研究所研究企画部長)
▲作  品:井口洋夫前副所長、岡本道雄初代所長・元京大総長、松原謙一前
      副所長・大阪大学名誉教授、岡田益吉副所長・筑波大学名誉教授
      など
▲開催日時:3月12日(金)~3月14日(日)
▲会場時間:9:30~21:00(12日は13:00から、14日は17:00まで)
▲会  場:学士会館神田本館1F レセプションホール
▲料  金:入場無料
※12日(金)夕刻、肖像画の人物が会場を訪れる予定です。

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◆学士会館で落語会 その五◆◆◆

<学士会寄席 桂藤兵衛>
▲演  目 【花見の仇討】
       他一席
      助演:初音家左橋
▲開催日時:2004年3月18日(木) 午後7:00 笑い始め(6:30開場)
▲場  所:学士会館神田本館1F レセプションホール
▲木 戸 銭:2,000円 * 笑止税込み
▲全席自由:定員150名(満席の場合、当日券を発売しないことがありますので、
      必ずご予約をお願いいたします)

>> http://www.gakushikai.or.jp/seminar/seminar.html <<
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     ● 2月の学士会館同窓会情報(七大学関係の同窓会) ●
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学士会館本館
 1日(日)東京河上会
 2日(月)向陵懇話会
 3日(火)駒場の会
 4日(水)神田会
     一日会
 5日(木)一木会
     東大三鷹クラブ
 6日(金)芙蓉会
 7日(土)関東瑞陵会
     理化34年クラス会
 8日(日)二八会
 9日(月)東京カラス会
10日(火)牛歩会
11日(水)東京明和会
12日(木)研二木会
     東京修猷二木会
13日(金)一二三会
14日(土)東大科哲の会理事会
16日(月)十五日会
     香永会
18日(水)三水会
     南溟三水会
     東大電気18年会
19日(木)一九会
20日(金)36L13B
     名大陵光会
     東京久敬会
21日(土)久志会
22日(月)月月会
     東大22年冶金クラス会
     二三機会
     赤門剣友会
     駒場研究会
     北大シグマ会
25日(水)普一会
     朋友会
     水曜会(東大第一外科)
26日(木)東北大24電気通信クラス会
27日(金)二九会
     月月会
     二三会
28日(土)そえじま会

学士会分館
 5日(木)東京銀杏会
 6日(金)東大アントレ会
14日(土)楊風会(東大楊井ゼミ昭37年卒有志懇親会)
     森亘君を顕彰する一高有志の会

※1月20日までに確定しているもののみです。


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◆ 幹事代行サービス承り中 ◆◆◆

 学士会事務局では、同窓会幹事代行サービスを承っています。学士会館で同
窓会を開催される幹事さんのお手伝いをします。

 ①会場の予約
 ②案内状の印刷・発送
 ③出席者の名簿作成
 ④看板・名札の準備
 ⑤会場のレイアウト
 ⑥受付の準備

 といった業務を幹事の方に代わって準備します。切手・葉書代等の実費はご
負担いただきますが、手数料等はいっさい頂きません。

*お問い合わせ/お申し込み(平日9時~17時)
 学士会事務局 TEL:03-3292-5955
 Eメール info@gakushikai.or.jp


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         ● 過去の月報ピックアップ ●
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┳━┳━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┃□┃希望
┃□┃浜尾新
┃□┃             学士会月報 No.300号(大正2年2月号)より
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 学士会は帝国大学卒業者並びに関係者の懇親を厚うする目的をもって生まれ
たもので、今日に至っては会員の数が一万人以上にもなり、月報も年を重ねて
本月は第300号を出すということです。又、今回本会新館の建築竣成を告げ爾
後会員の集会等に大いに便宜を得るようになりたることであり、誠に慶賀する
ところで、ここに一言祝辞に添えて希望を申し述べます。

 帝国大学の同窓は比較的親密の度合いが少ないという考えがあるようであり
ますが、帝国大学は他の私立学校と異なり、その範囲広汎にして6分科大学あ
り、所設の専門学科頗る多く、現に33から34科あり、法に医に文に理に工に農
に各種の学業を修め、社会多方面に出て各種の業務に従事することによって、
その学科と業務の異なる人々の間には連絡の絶ゆる形状があり、従って親密の
度が少ない感じがするのであろうかと思います。
 しかし、現今のごとき、各種の専門学術が諸種の専門学術と相俟ってそれぞ
れの研究を容易にし、確実にしていかねばならぬ必要のある時代においては、
各分科が相並んで一大学の下にあること、即ち総合大学であることは最も利益
の多いことであるによって、この制度の下に関係の諸科を利用して、研究の間
に互いに交渉するように注意せられましたならば、在学の時のみならず、卒業
の後においても、また大いに連絡を保ち利便を得ることと信じます。従来各科
の卒業者が同一の専門によって各種の学術会を設けるもの数多くあり。これは
各分科大学卒業者輩出の効果にして主として同一の専門に従事する者の研究に
資し、兼ねてその親密協同に益あることでありますれば、ますます各種学会の
発展を図らねばならぬが、なおこれら各種の学会の連絡を図ることも緊要であ
る。そして各分科大学において諸科専門を修めたる卒業者等を包括せる学士会
のごとき大なる会同をして効用あらしむることは大切である。

 大学卒業者の特色にして有力なるは何業に従事するも専門学術の素養あるに
よるので、その発達伸長は永遠に研究心を失わざるにあるので、各種学会の裨
益を与えること少なからざるのである。蓋し社会各般の事業は各種専門の学術
に基き発展するものなれば、大学において専門の学術を修め社会に出で、各般
の業務に従事する者は相提携してその専門を同じくする者はもちろん、その専
門を異にする者も互いに連絡して利便を図り、事業を進捗せしむることは公私
のため巨益あることなれば、大学同窓の諸君はこの学士会の大会同を利用して、
益々親密にして相互の便益を図り、宜しく同窓たるの実りを挙げられることを
希望します。
 これについては、この学士会のごとき同窓卒業生等会同の機関は、言うまで
も無く、甚だ大切でありますから従来大学の総長その他職員の人々にはこの会
のために種々の助力をせられたのであります。更に月報につきましては、第30
0号にも達したことであり、今後編集の材料等に改良を加え、充実せしむるよ
う益々委員諸君の尽力を煩わし、会員諸君が愈々この紙上を利用して、同窓間
の温情を表すとともに、学術上事業上の有益なる報告等を出されんことを希望
します。
(第3代、8代東京帝大総長・元老院議官・貴族院議員・文部大臣・枢密院議長・
東宮大夫)

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       ● 会員からの投稿コーナー ●
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『朝倉遺跡 ~福井市郊外 一乗谷』

 諏訪館(すわやかた)は小高い丘の上で、訪れを静かに待っていてくれた。
寂しげに咲く秋の七草の蹊を登ったところだが、館といっても跡形もない。敷
地のまん中に庭園が残っているだけである。いくつかの岩が形よく配置され、
中央には楓とおぼしき樹が一本。名木があまた植えられていたはずの築山は空
虚になっている。楓をとり囲んで池が設えられ、400年以上も経った今も、往
時そのままに水がたたえられている。
 しばらく、池のほとりにたたずんで眺めると、水は止まっているのではなく、
かすかに流れているのが感じられる。しかし、底は浅い。少し腰を曲げて、無
遠慮に指を立ててみると深さは数センチしかない。池の底は玉砂利でおおわれ、
水ごけもない。透明なので、小石がはっきりとみえる。水清くして魚住まずの
たとえ通り、メダカ一匹すらいない。
 この地方では季節を問わず雨が降り、冬には豪雪が吹き荒れる。これを受け
る深山が池の直ぐうしろまで、せまっている。高くそびえる裏山に降った雨や
雪は渓となり下り降りる。一部は地下水となって地面近くに溜まったり、せせ
らぎとなって諏訪館まで流れる。訪れる人には見えないように、古人の知恵が
施されているのであろう。天然の水を汲み取り、正面の岩の段差からもらい水
は流れ始める。適当な水量に調節されて池へ流れ入るから、水音はおろか『流
れ』まで見落としそうになる。流量を極限にまで切りつめているのは造園主の
心憎いばかりの配慮であり、かえって贅沢さを生々しく感じさせる。

 池から少しあとずさりして、庭園の全景を眺めてみる。
 昔、朝倉義景の愛妻少将が住んでいた館の縁先とおぼしきあたりに立って、
庭園の全景を返り視る。池の構成は上下の二段となっていて、上から流れる水
の動きが見る人の心に「動」の気分を響かせる。下段の池は閑(しづ)か。
「静」である。中央には人間の背丈の倍以上もある大石を配し、庭をまとめ上
げている様(さま)が感じられる。みごとなバランスである。しかし、立ち木
は楓のみ。裏山が背後に迫る。
 義景は妻の少将とともに、この山水庭園の斜めから昇って来る中秋の満月を
賞でながら、歌を詠んだり、一献かたむけていたことであろう。
 見えないところに贅(ぜい)を尽くした古人の知恵と美、その行き着くとこ
ろの昔のガーデニング芸術が、ここに結晶となっている。そして、朝倉氏は滅
んだが、この庭園だけは、なぜか現代に生き延びている。

 諏訪館から細い道を横切って歩むと、義景の母の居館だったといわれる中の
御殿跡や湯殿跡庭園に導かれる。いずれも跡だけで取り立てて語るべきものも
ない。さらに空堀を越えて行くと、急に眺望が開けてメインの、朝倉館跡が望
める。

 丘の上から館全体を見おろすと、たくさんの礎石が目に入ってくる。その一
つ一つの礎の上には柱が立ち、かずかずの御殿が並んでいたはずである。あの
暴虐な織田信長の軍に攻め滅ぼされたとき、焼き討ちにあい、それ以来、再建
して住む人だになく、礎石だけが残り、歴史のたたずまいを静かに眺めていた
ことであろう。
 しかし、現代の福井市民にとって、礎石は朝倉館の確固たる生き証人である。
それらの直径や隣接する石たちとの距離を測り、ありし日の建物を脳のなかで
復元してみた。そして、同時代の現存する建造物と比較して、ここが常御殿、
主殿、会所、武者溜(むしゃだまり)、厩舎(きゅうしゃ)、蔵(くら)の跡・
・・と照合していった。そして6400?を超える敷地内で、それぞれの石の上にな
んの建物が、どう建っていたかの解明作業をして、立て札を立てている。
 しかし、復元作業は手つかずのままである。

 朝倉館跡に立ってみると、人間の在所と厩舎が間近いことを発見して、驚く。
朝倉一族は室町時代末期の越前の国(今の福井県)の守護大名だったから、武
家の常として、人間と馬が屋根を並べて住まねばならぬ設計図は歴史音痴にも
直ぐ分かる。馬は戦さには欠かせない。万一、朝倉の館に攻め入るものあれば、
真夜中でも起き出して、ヨロイに着替え、刀、槍、鉄砲を持って馬に乗り迎撃
せねば滅ぼされる。馬は乗り物であり、同時に戦車であった。
 また、館の規模の大きさに比べ、台所が不自然に大きく、多く配置されてい
たのも印象的であった。いざ出陣の前、腹がへっては戦さはできぬと言われた
時代の、忘れてはならない備えが『めし』であった。館が「常に戦場に在り」
の凝縮した場であった。
 それだけに、すでに訪れて来た諏訪庭園や湯殿庭園がやがて迎える戦国時代
の入り口に生きた守護大名の、心の安らぎの、わずかな場所であったことはひ
しひしと実感できる。

 館の裏は山、三方に土塁を盛り上げて囲まれている。さらに外部の四方は堀
を巡らして、豊富な水を利用しての防御策を施していた。入り口は唐門と称さ
れて今も残る小さな木造の門だけである。ここは治にいて乱を忘れない戦乱の
大名の居所であった。
 朝倉館では点在して残る礎石を眺めて、訪問者は自分の頭の中で自由に復元
する楽しみがある。朝倉館を古のまま復元するのも良いが、唐門から玄関先し
か見えない風景よりも、平面的にかっての座所の一つ一つを確認しながら、妄
想する方が楽しみが倍加する気がしてならない。(この稿、次号に続く。)
《昭和35年法学部卒 古池一視》

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[会員の方のホームページ紹介]
〇http://www.asahi-net.or.jp/~jh8r-mtd/
 囲碁同好会のHPです。自作のソフトでスイス方式対局の組合せ、結果の順位
付けを全てやります。
 《昭和32年工学部卒 松田礼治》

=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

《皆様からの投稿募集》
※会員の皆様からの投稿を募集しています。ご投稿者全員に学士会記念品セッ
 トを進呈しています。投稿は、匿名希望でも承っております。
※また、会員の方からのご要望により、会員の方のホームページを紹介してい
 くことにしました。ご自身のホームページを紹介したい方は、ホームページ
 アドレスと30字前後の紹介文を学士会企画係までお知らせください。
※展示会等の告知も承っております。

※投稿については、下記メールアドレスにお送りください。
 info@gakushikai.or.jp


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              ● 今月の一冊 ●
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◆『恩 ~日本の名随筆71~』
◆ 高田好胤編・作品社・1988年刊

 作品社の『名随筆シリーズ』は各巻、収録作品がテーマごとに選ばれており、
全80巻。『花』『酒』『旅』『笑』などのタイトルがあり、第71巻のテーマは
『恩』。この中に辰野隆の「浜尾新先生」が収録されている。
 一部を引用すると「先生はまれにみる訥弁であった。巧言令色には凡そ無縁
の仁者であった。しかも先生の演説の拙さ加減が世の常の雄弁にもまして敬愛
されていたのだから愈々貴かった。かつて青山胤通博士が先生の演説を聴きな
がら、会心の笑みを漏らして、『あの拙さが何とも言えない──』と三嘆して
いたのを僕は小耳に挟んで、これある哉と思った。・・・・・・」
「僕の記憶に誤りが無ければ、片山国幸博士がいまだ医科の学生であった頃、
ある朝、登校の際、本郷三丁目の辺りで、後から『片山君』と呼ぶ太い声に驚
かされた。振り返ってみると、それが浜尾先生だったので、逃げるわけにもい
かず、二人の巨漢は肩を並べて歩き出した。然るに先生は一言も口を利かない。
片山氏も口を利かない。二人は唖の如く──先生は悠々と黙しながら、片山氏
は惴々焉として黙しながら──兎に角赤門まで辿り着いた。赤門を入ると、先
生は左に折れて本部の方へ、片山氏は真っ直ぐに眼科の教室の方へ足を向ける
ことになった。片山氏が脱帽して別れようとした時、三丁目以来黙しつづけた
先生は氏を顧みて、『お父さんはお達者かね』と第二の言葉を発したそうであ
る。話と話との間の長いこと、蓋し先生の如きはまれであろう。・・・・・・」
 この「浜尾新先生」の篇に、森有正の「恩師・辰野先生」、辻邦生の「森先
生との出会い」と続く。他には、堀口大学「師恩に思う」、利根川裕「恩師列
伝の試み」などを収録。

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         発  行:社団法人 学士会 総務課 企画係
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