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学士会メールマガジン

No003号 2003/3/1 配信分



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★★★学士会メールマガジン  No.003
★★★2003年3月号         http://www.gakushikai.or.jp
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いつもメールマガジンを購読頂きましてありがとうございます。

┌─────────────────────────────────┐
◇ INDEX
└─────────────────────────────────┘
[1].今後の夕食会・午餐会の予定
[2].学士会ニュース
[3].レストラン・ホテル・宴会部からのご案内
[4].学士会館同窓会情報[七大学関係の同窓会]
[5].過去の月報ピックアップ[學士會会報No.527(昭和7年2月号)より]
[6].会員からの随筆・論文投稿コーナー
[7].今月の一冊
[8].学士会館割引クーポン券

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         ● 今後の夕食会・午餐会の予定 ●
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◆ 夕食会 3月10日(月)対本 宗訓氏 (禅僧・医学生)
      4月10日(木)合志 陽一氏 (国立環境研究所理事長)
      5月 9日(金)中村 桂子氏 (JT生命誌研究館館長)
◆ 午餐会 3月20日(木)小柴 昌俊氏 (東京大学名誉教授)
      4月21日(月)藤原 正彦氏 (お茶の水女子大学理学部教授)
      5月20日(火)半藤 一利氏 (作家)


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            ● 学士会ニュース ●
      ≪学士会3月会報は3月15日頃の発送予定です!≫
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 3月会報は季刊から隔月刊となって2回目の発行です。今号から新連載コラム
として「文化財建造物みてあるき」が始まります。東京大学名誉教授の内田祥
哉氏に1年間連載していただく予定で、今回はフランク・ロイド・ライトの「自
由学園明日館」を取り上げています。その他、ドナルド・キーン氏の「文学者
が歴史を書く」、坂村健氏「ユビキタス・コンピュータ革命」などを掲載して
います。


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      ● レストラン・ホテル・宴会部からのご案内 ●
         《会館改装に伴い、サービスも充実!!》
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 学士会館1階にレセプションホールがオープンしました。ご婚礼の二次会や
展示会、親睦パーティーなど多目的にご利用頂けます。皆様の目的に合わせて
自由に空間をご使用して頂けるよう、装飾を最小限に抑えたシンプルな内装に
しました。歴史ある建造物の中のアットホームなホールとして、ぜひお引き立
てください。

≫≫ レセプションホールご案内 ≪≪

【面積】 11.20×11.00(123?)37.3坪
          ※受け付けスペース 4.40×2.30(10.1?)

【設備】 マイク・スクリーン・OHP・パソコンプロジェクター等

【ご使用料】
〔パーティー使用〕
  *当会館で挙式した後の二次会の使用は無料
  *その他のパーティーでの使用料  12時~16時 30,000円
                                      17時~21時  30,000円
〔展示会使用〕
  *10時~20時(1日) 《会員》 20,000円  《非会員》  40,000円
  * 1単位3日間         60,000円        120,000円
  *   6日間         100,000円        200,000円

          ※上記料金には別途消費税がかかります
          ※詳細については直接、会館課へお問い合わせください
                   (会館課:03-3292-5936)


 ◆囲碁室をご利用の方へ ◆◆◆
 
 囲碁室の利用規定が2003年1月から新しくなりました。
「学士会会員で囲碁会員でない」方は、お手数ですが会館課フロントにてお名
前をご記入のうえ、ナンバープレートをお受け取りください。(お帰りの際、
ご返却ください)ご同伴の方も同じくお名前をご記入のうえ、証明書をお受け
取りください。尚、ご同伴者一人まで無料、二人目からお一人につき1,000円
頂きます。何卒、ご了承ください。
 また研修日(毎週月・水・土曜日)、指導日(第1・3・4土曜日)、トーナ
メント戦期間中は混雑が予想されます。囲碁会員の方が優先されますので、重
ねてご了承ください。

≫≫ 囲碁会新規約 ≪≪

【入会資格】学士会会員の方

【会費】年会費:14,000円(会館課フロントにて前納にて一括払い)
    ※7,000円(半年払い)でも受け付けております
    ※年度途中での入会の場合・・6ヶ月~4ヶ月前は7,000円
                  3ヶ月~1ヶ月前は3,500円
    ※休会について・・休会期間中の会費は免除

【会員特典】① 師範による指導碁(第1・3・4土曜日)
      ② 各トーナメント戦への参加
      ③ 囲碁会員懇親会などへの参加
      ④ 囲碁会員による研修日への参加

【利用可能面数】常時45面(最大51面)
        ※その他、詳細は会館課までお問い合わせください

≫≫ 平成15年 棋戦日程表 ≪≪

【卒業年次別戦】  平成15年3月1日(土)~ 4月30日(水)
【夏季ランダム戦】 平成15年6月2日(月)~ 7月30日(水)
【段別戦】     平成15年9月1日(月)~10月29日(水)


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     ● 今月の学士会館同窓会情報(七大学関係の同窓会) ●
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  6日・・東大五色会
   ・・京大36会
   ・・東大陸上運動クラブ総会
  7日・・東京大学地球システム工学専攻同窓会
   ・・昭32年東大応用化学会
  8日・・北大桜菱会
   ・・30年理Ⅱ7組クラス会
 10日・・東大農工会
 11日・・東大工学部合同クラス会
 12日・・九大にくしん会
   ・・九大関東農化会
 14日・・大阪大学経済学部昭和43卒業同期会
 15日・・名大医学部学友会首都圏幹事会
 21日・・東京大学法学部緑会合唱団
 22日・・東大現代国際法研究室OB総会
 26日・・名大全学同窓会
 27日・・東大文一13Dクラス会
 29日・・27文15Bクラス会
 30日・・東京大学地理学同窓会
   ・・昭57年東大機械同期会


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         ● 過去の月報ピックアップ ●
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┃□┃ 戦 争 な き 世 界 は 可 能 か
┃□┃ 竹 本 孫 一
┃□┃         學士會会報No.527号(昭和7年2月号)より抜粋
┻━┻━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 1931年は年頭より国際平和の危機を告げ、自由主義者は之を以って来るべき
平和的世界への一弁証法的過程なりと解し、マルクシストは帝国主義戦争への
必然的過程なりと主張した。我々も満蒙問題に依る異常な国民的緊張を持った
のである。

 我々の世界は戦争の為に、引き裂かれ、倦み果て、悩殺されている。しかも
尚それは将来の戦争の準備に忙しい。歴史に見る無数の戦争、全世界に展開さ
れて行く経済的政治的闘争、ヨーロッパにおいて終るか終らないかにアジアの
沈黙を破る砲火の響、これらを前にして戦争なき世界を語ることはユートピア
なのだろうか?

 人は繰り返し繰り返し、戦争の損失・浪費・残忍・戦慄から離れて、今日或
は今後の平和の夢を追ったのであった。エラスムスは、戦争を否定して「之ほ
どに邪悪な・之ほど悲惨な・之ほど破壊的な」ものは無いと非難した。1713年
において聖ピエール大僧正は「永久平和条約の計画」を発表した。1795年にカ
ントの「永久平和論」が現れた、1814年にロシアのアレキサンダー2世は「欧
州平和連合」を夢みた、1843年にはロンドンに世界的平和会議が行われた。

 戦争なき社会を夢みる人々にとっては、歴史は余りにも苛酷なる答案を与え
た。この事について、ウイリアム・ゼームスが彼の「戦争の道徳的等価物」に
おいて、「歴史は血の浴場である」と書いているのは全く真実である。

 ナポレオン戦争は良き実例である。1793年から1815年に至って彼らは文明の
中心を徹底的に壊滅せしめ、平和への要求は蓋し全世界的のものとなった。ナ
ポレオンはセント・ヘレナに追放され、人々は戦争を全く終滅させたかに考え
た。クリーヂーは言う、「文明国において暴行と戦争の計画が、漸次、嫌悪の
情を以って見られるということは、この時代の精神の尊敬すべき特色である」
と。

 しかし、其の後、ロシアと英国との間にクリミヤ戦争(1859年)、米国にお
ける恐ろしく破壊的な内乱(1861年~1865年)、1864年、1866年、1870年にペ
ルシアの闘える三つの戦争、1870年より1930年まで間断なく続けられた無数の
植民的及び帝国的戦争。

 しばしば戦争が起こったことは、人をしてペシミスティックにしてしまった。
人類は戦争を運命として受け容れた。恰も他の運命の指示に従うが如くに、
「歴史は繰り返す」と彼らは嘆く。「戦争は之までも常に起こったし、将来も
常に起こるだろう」。かくのごとく、一般に承認された議論は説明し、殆ど総
ての文明史は之を支持して展開されていく。

 別の議論によれば、「戦争は人間性の結果である。人間の性質の変ぜらる限
り、戦争は引き続き起こるだろう」この議論の前提が承認されるならば、結論
は必然的にこうである。平和への望みは絶対になしと。

 米のルーズヴェルト、独のベルンハルディ、世界の他の同様に有名な人々は
主張して曰く、「戦争がなければ人類は堕落する。戦争は懦夫をして起たしめ、
社会に新鮮な空気を送る、戦争は進歩の舗道であり、巧緻への刺激であり、人
類を呼び起こしてその最上の努力へと向かわしめる。」彼らにとっては、平和
の永く継続することは、人類堕落の継続である、然るに戦争は人類を清め洗い
引き起こしめる必然物として現れる。


 人類は戦争を不可避的なものと考えて、悲観的態度を取っている。「戦争は
人類の運命である」フォン・デル・ゴルツは説く「国民の不可避的な運命であ
る」と。然し、この主張は格言ではない。

 戦争は人類の制度である。勿論、その意味において戦争は人間性の産物であ
る。人間活動の他の総ての形相の場合と何ら変わらぬ。然し、戦争をするのが
人間性であろうか? 「戦争は人間のノーマルな状態である」とヨーロッパ戦
争地帯における経験から、クライル博士は結論する。カーターはさらに論点を
進めて曰く、「何故戦争をするか? という苛酷な質問に対する答は、ヨリ苛
酷なる返答、『人間が戦争である』と」。

 しかしながらこの主張は表面的で堅実でない。最も熱心なミリタリストです
らも、人間の総ての本能は戦争に導くものであると主張することはできない。
 仮に18歳以上の総ての男女に、「君は第二の世界戦争を欲するか」という問
題について投票が行われたとせよ、果たして何人がイエスと答えるであろうか。
100人に1人か、100人に2人か、100人に5人もいるだろうか、確かに比率は
5以上には出ないであろう。恐らくは2に近いだろう。今日戦争のプロパガン
ダの背後における莫大な資源と、全人口に戦争心を吹き込んだ悪魔的巧妙さに
もかかわらず、大抵の人間は平和に賛成であり、戦争に断然面をそむける人間
は益々増加している。

 断乎として平和賛成の一票を今日投ぜんとしている世界の大衆を、威嚇と強
制と募兵に依って戦争に向かわしめることが出来るか。断じて、然しその事実
は支配階級の力に対する称揚でこそあれ、人間性の戦闘的性格についての例証
ではない。

 恐らく、「人間は戦争である」との議論に対する返答は、次の如く述べるの
が最もよいであろう。戦争をするのは、人間の特性ではなくて、一定の社会組
織の形式の特性である。人間社会の発展におけるある段階において、人間は戦
争をしなかった。

 さらに、既に戦争とは縁を切って終って、しかも高度の文明に生活している
人々がいる。デンマークの住民はこの部類だ。アイスランドの住民についても
このことは確かに真理である。これらの国においては、資本主義は僅かな印象
を興えたに過ぎない。競争的産業主義は発達しなかった。経済的政治的発展に
対する力は貧弱である。これらの領域に住める人々は、数においては比較的少
ないが、戦争・貧困及び他の文明の最も災厄的なるものを避けえたのみならず、
彼らは、資本家的文明の最も高度に組織化せられた水準に充分に匹敵する一般
的社会的水準を建設するに成功している。

 人間社会は変化する。かかる社会秩序の調整が、現在行われつつある。大量
生産、敏速なる運搬、迅速なる通信等は世界のかけ離れた部分をより密接に結
びつける。戦争への反抗は頑強になる。政治家や軍国主義者が歴史は繰り返す
こと、退歩的人間性への刺激としての戦争が必要なことを説いているのに反し
て、世界のあらゆる部分の戦争的人間の数百万の人々は、次の一般的帝国主義
戦争には資本家帝国主義を、搾取・拡張・軍国主義及び戦争等その全体的随員
と共に、倒潰せしめんと決心している。

 戦争の除去は社会的再建の一の問題である。確かに戦争は、戦士及び戦争が
中心的役割を持つ様な文明社会では廃れえないであろう。富と権力が経済的政
治的拡大の成果である間は、戦争はその獲得のための主たる機関であるだろう。
 人類の前に今日横たわる問題で、この戦争なき世界の建設は単なる工業的仕
事ではない。それは、幾千年来の戦争を代表する個人・制度・慣習及び伝統に対
立して、平和の可能を信ずる人々に依るところの、組織的、攻勢的戦闘的闘争
を必要とする一つの企業である。

 戦争の氾濫に悩まされた世界人は、組織と計企と準備とを以ってこの戦争統
制の問題に処せねばならぬ。特に、述ぶるならば、

(1)戦争に対する推進力は経済的政治的拡大を減じ或は除くような、社会の
経済的組織における変革によって、之を減じ或は除かねばならぬ。実際的に言
えば、之は重要生産手段の社会化による産業貿易金融における私的利潤の掃蕩、
経済的競争に代わるに一般的計画経済の確立を意味する。

(2)軍備、戦争のための組織及び戦争のための訓練は廃止して、戦争から直
接にも間接にも収入を得る様な地位に、文官も武官も戦時成金も断じておかな
い様にすべきである。

(3)戦時の交通遮断は開かれねばならぬ。輿論統制の機関は、今日戦争賛成
の感情を作り出す為に利用されていると同様に、今度は反戦気分の醸成に利用
されねばならぬ。

(4)戦争を期す人は分離されねばならぬ。経済的政治的、社会的或は軍事的
分野における血戦を主張する徹底的攻勢の論者は、他の徹底的破壊者や干渉者
の如くに取扱わねばならぬ。

(5)かかる社会再建の暗示は、社会過程を指導しつつある人々が戦争なくし
て存続し得る社会制度を建設する力のない限りはユートピアである。戦争への
拍車が除去された一團の経済的社会的制度の創造! それこそ戦争なき世界建
設の根本的命題である。
(社會民衆黨本部所属)


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       ● 会員からの随筆・論文投稿コーナー ●
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『日朝交渉:独自の立場で粘り強い交渉を』

 昨年10月30,31両日、クアラルンプールで開催された日朝国交正常化交渉は、
両者の基本的立場を主張しあって終了した。

 その後、北朝鮮の核開発再開問題が大きくクローズアップされてきたが、当
面の日朝交渉においては、拉致にまつわる諸問題の解明を突破口に、国交正常
化を実現することこそが両国民にとって焦眉の急であり、そのことが回り道の
ようでも核開発問題解決に大きな影響を与えることになる。第2回目交渉の一日
も早い開催が望まれる。

 この交渉で、第一に日本政府は、金正日軍事委員長自身がその行き過ぎを認
めた特殊機関なるものの解体を、まず求めるべきである。他国の主権を侵すよ
うな行動に日常従事するような機関が今後とも継続して存在することは、隣国
である日本の安全に対する重大な脅威であることを、誠意を持って率直に説明
し、先方の理解を得ることである。

 第二は、GDPの14.3% (*1)に達する巨額の軍事支出の削減である。北朝鮮が、
100万人の軍隊を抱え、テポドンのような超近代兵器から特殊部隊による周辺
諸国民の拉致・教育に至るまで、巨額の国家予算を国防費に費消している。日
本側は北朝鮮の軍事予算最低1割カットを経済協力の第一条件にすべきである。
北朝鮮の食糧不足が真に国家的問題であるならば、同国政府自ら国防費の一部
を削って、直ちにコメの緊急輸入に踏み切る筈である。ここ数十年、同国自身
が食糧より軍事優先の政策を取り続けているにも拘らず、日本政府は人道支援
の名の下に拉致問題に目をつぶって100万トン以上ものコメ援助を行ってきた。
日本側の政治的思惑が先行した結果であるが、従来とは基本路線を異にする小
泉政権が、平和国家として筋を通した交渉に当られることを期待する。もし、
先方が、韓国、米国の軍事的脅威を理由に軍事費削減に難色を示すなら、小泉
純一郎首相自らが米・韓両国首脳との橋渡しを率先買って出て、世界の緊張緩
和に奔走すべきである。

 第三に、過去の拉致問題解決については、未帰還被害者の即時帰国は当然の
こととして、外交官に加え犯罪捜査のプロである両国警察関係者を含めた合同
調査委員会の立ち上げを提案したい。金正日軍事委員長は既に責任者は処罰済
みと言明しており、合同調査委員会は、この線に沿って、事実関係を地道に解
明し、関係者を厳重に処罰し、その結果を内外に公表することである。事実関
係が明白になれば、国交正常化とともに日本の対朝経済支援は、極めて現実味
を帯びたものとなるだろう。
(*1)The Military Balance 2000-2001:Oxford University Press, London

2003年2月1日
加藤保弥 (明治学院大学法学部・城西大学経済学部非常勤講師,昭和34年法学
部卒)




『小さな国際都市トリエステ』

 最近、イラクと北朝鮮の核開発絡みのTVニュースで、しばしばウイーンに
あるIAEA本部が放映されている。同じ敷地内にUNIDO(国連工業開発
機構)があり、数年前に仕事の関係で数回訪問したことがあるが、上階の部屋
からはドナウ川やウイーンの旧都市部が一望できるなかなかの好位置にある。
しかし、建物の内部構造が左右対称で部屋番号をしっかり確認しておかないと、
容易には目的の部屋に辿り着けず往生したことがある。

 その頃、イタリア北東部の港湾都市トリエステにあるInternational Center
for Science(略してICS)というイタリア政府が樹立した研究機関 に、民
間会社から2年間出向していたのである。周辺には幾つかの国立および国際研
究機関があり、日本の筑波学園都市を小振りにした感があり、世界各国からの
研究生が集ってさながら国際都市といった趣があった。

 ICSは技術移転および人材育成を通じて国際貢献をする目的で設立された
のであるが、実質はイタリア政府の外交政策を側面から支える重要な役目を担
っている。そこでICSの運営を、国際的な技術移転機関であるUNIDOの
指導の下に置いており、その関係でUNIDO本部に出張していたのである。
 ところでトリエステは、ベニスとはアドリア海を挟んで対岸に、ウイーンか
らは南南西350kmほどの所に位置しており、19世紀から20世紀初頭のハプスブル
グ王朝時代に建てられた建物が、改修や改装を重ねながら現役で使われており、
古びてはいるが趣があって心休まる雰囲気がある。ここは 西欧、東欧、アラ
ブ(北アフリカ)の結節点に位置しており、人種的にも、ラテン系、ゲルマン
系、南スラブ系、アラブ系等が混在している。それに応じて、新旧キリスト教
は言うまでもなく、ユダヤ教、ギリシャ正教、セルビア教、イスラム教の教会
が立ち並んでいて、教会の多さと冬にシベリアから吹き下ろす強風(ボーラと
いう)で有名であると、トリエステ大学のメリアーニ教授が教えてくれた。

 ICSには、イタリアの周辺諸国をはじめ世界各国からの給費研究生が滞在
しているだけでなく、日常的に世界中から訪問者があり、その対応に忙しくは
あったが、活気に満ちていたことを懐かしく思い出す。

 私は現在、地方国立大学のTLO(大学特許などの技術移転のための機関)
で技術移転業務に携っているが、トリエステにおけるような異文化の交流に乏
しく、地政学的に日本は極東という特異な位置にあることを改めて認識させら
れる。とは言っても、グローバルな視点で特許取得や技術移転を考えないと、
欧米どころか中国にさえ(失礼)も遅れをとりかねないという危機感があり、
トリエステでの経験を活かせないかと無い知恵を絞っている。
(地方国立大学勤務,昭和46年工学博士取得)


《皆様からの投稿を大募集!》
※ 会員の皆様からの投稿を募集しています。過去の学士会月報を繙くと、
「会員氏名録の楽しい読み方」など、会員の間でも活発に意見の交換がなされ
ています。その役割をメールマガジンで担えればと願っています。掲載の可否
にかかわらず、ご投稿者全員に学士会記念品セットを進呈しています。
※ 投稿は、匿名希望でも承っております。その際、学士会にはお名前をお知
らせください。

※ 投稿については、下記メールアドレスにお送りください。
kaiin-ka@gakushikai.or.jp


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              ● 今月の一冊 ●
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◆ 『私の仕事』~国連難民高等弁務官の10年と平和の構築~
◆ 緒方貞子・草思社・2002年刊

 日本人初の国連難民高等弁務官となった著者のこの10年の活動記録。
 
 「私は、初の学者出身の難民高等弁務官である。子どものころ、外交官をし
ている父の書棚は外交関係の書物で埋め尽くされていた。そのような環境に育
ち、私も外交史、アジア、日米関係、日中関係をテーマに勉強し、政策決定過
程の理論も研究してきた。どうやって人が政策決定をするのか──。私たち昭
和ヒトケタ生まれの世代は、どうして日本が第二次世界大戦に突入する針路を
採ったのかを解明しようと研究に励んだ。

 しかし、高等弁務官になってからは徹底して現場主義になった。政策決定過
程論も勉強してきたが、ものを決めるときは迷う。自分自身の目で現場をよく
見て、あるいは現場に派遣した職員の話をよく聞いていると、こう決定するし
かないという決断が湧き上がってくるのだ」
(現場から来るインパクトより)

 「現場に応じて、一番役に立つ方法は何かというのが、私の判断の基準であ
った。私どもの場合、役に立つということは、最後の点において、人の生命を
助けるということである。生きていさえいれば、彼らには次のチャンスが与え
られる」(私の判断の基準より)

  緒方貞子氏の魅力は、言葉による強いメッセージ性と同時に、自ら先陣に立
つその姿にある。日本が歩むべき道を、まず自らの背中で示しているのではな
かろうか。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
      ●「学士会館改装記念 Winterキャンペーン実施中●

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◆ 【レストラン・ラタン】クーポン券プレゼント!

平成14年11月にレストラン・ラタンが改装されました。
ついては、新装開店を記念してクーポン券をプレゼント致します。


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    学士会館クーポン券
    レストラン・ラタン10 % OFF
    本券1枚で1名様有効
     
    会員番号入力欄:____________________________
                       有効期限 2003年4月末日
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