学士会アーカイブス
希望 濱尾 新 No.300(大正2年2月)
学士会は帝国大学卒業者並びに関係者の懇親を厚うする目的をもって生まれたもので、今日に至っては会員の数が一万人以上にもなり、月報も年を重ねて本月は第300号を出すということです。又、今回本会新館の建築竣成を告げ爾後会員の集会等に大いに便宜を得るようになりたることであり、誠に慶賀するところで、ここに一言祝辞に添えて希望を申し述べます。 帝国大学の同窓は比較的親密の度合いが少ないという考えがあるようでありますが、帝国大学は他の私立学校と異なり、その範囲広汎にして6分科大学あり、所設の専門学科頗る多く、現に33から34科あり、法に医に文に理に工に農に各種の学業を修め、社会多方面に出て各種の業務に従事することによって、その学科と業務の異なる人々の間には連絡の絶ゆる形状があり、従って親密の度が少ない感じがするのであろうかと思います。 大学卒業者の特色にして有力なるは何業に従事するも専門学術の素養あるによるので、その発達伸長は永遠に研究心を失わざるにあるので、各種学会の裨益を与えること少なからざるのである。蓋し社会各般の事業は各種専門の学術に基き発展するものなれば、大学において専門の学術を修め社会に出で、各般の業務に従事する者は相提携してその専門を同じくする者はもちろん、その専門を異にする者も互いに連絡して利便を図り、事業を進捗せしむることは公私のため巨益あることなれば、大学同窓の諸君はこの学士会の大会同を利用して、益々親密にして相互の便益を図り、宜しく同窓たるの実りを挙げられることを希望します。
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