理事長挨拶

年頭のご挨拶

理事長:佐々木 毅
 理事長 佐々木ささきたけし

新年おめでとうございます。

令和二年、西暦二〇二〇年、元旦にあたり、学士会会員諸賢に正月の慶賀のご挨拶を申し上げます。会員の皆様及びご家族にとりまして今年がよい年でありますよう、年頭にあたり、ご祈念申し上げます。

新年には誰しも今年はどうなるかということが念頭を去来します。とりわけ、今年は誰にとっても間違いなくオリンピックとパラリンピックの年であります。この大イベントが終わるまでは、令和は平成の続きのように見えるのは仕方がありません。恐らく聖火リレーが始まると日本中がオリンピック、パラリンピック一色に染まることでしょう。

しかし、オリンピックとパラリンピックは目標というには余りにも「直ぐそこ」に来ています。これらは目標というよりも眼前の大イベントでしかなくなり、自ずから目標を求める人の視線は「オリンピック後」に向かうことになります。この「オリンピック後」という時間設定によって、令和時代の日本への問いかけが本格的に始まることになります。時間に最も敏感な種族である政治家たちがいつ「オリンピック後」の日本について語り始めるかは政局的に重要であるのみならず、令和時代の行方を占う上でも重要でしょう。

仮に「オリンピック後」について議論の盛り上がりがなく、これらの大イベントが終わったという虚脱感だけしか後に残らないならば、そこからどんな未来展望が開けるでしょうか。よく冗談半分にオリンピックを招致した国は時間をおいて深刻な国難に見舞われることになるといったことがささやかれますが、これはこの大イベントの持つ複雑な社会的・心理的インパクト(スキ)に留意せよという警鐘と理解すべきでしょう。一言で言えば、日本の社会が「オリンピックをどう終わらせるか」は今年の最大の関心事であり、われわれの政治的意思が鋭く問われることにつながると思います。

今年はもう一つ関心を持たざるを得ない重要な選挙があります。それはアメリカの選挙です。アメリカ第一主義の行方は大いに気になりますが、そうした個別の政策を越えてアメリカのデモクラシーがどういう変容を辿るのかも政治学者としての私の大きな関心事であります。そして国際関係は日本の近隣地域を含め、残念ながら、ますます騒々しくなることを覚悟しなければならないようです。

会報にしろ午餐会・夕食会にしろ、今年も取り上げたいテーマが目白押しの感じがしています。これが幸せなことかどうかは分かりませんが、社会や歴史の動向に貪欲なご関心をお持ちの会員諸賢のご期待に応えるべく、引き続き努力していく所存でおります。会員諸賢のご協力とご叱正を改めてお願い申し上げます。

最後に改めて、会員の皆様の御健勝とご活躍を心からお祈り申し上げます。

(東京大学名誉教授・同元総長・日本学士院会員・東大・法博・法・昭40)

※『學士會会報』940号(令和2年1月発行)「年頭のご挨拶」を掲載しています

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