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夕食会・午餐会感想レポート

2021年3月夕食会「東日本大震災から10年~超巨大地震・津波の理解はどこまで進んだか?」

夕食会・午餐会感想レポート

3月10日夕食会

今回の講演に参加し、巨大地震や津波の発生の確率やメカニズムが、ずいぶん進展したことに驚きました。
私自身建築の人間で、地震や津波の建物への被害は致命的になるので、地震学の進展には関心があり、これまでも学士會の地震学や火山学の講演会にはよく参加してきました。
その中で、地震学、火山学は大分研究の余地が残っていると感じ、まだ発展途上下にあるという印象を受けました。
地震や火山噴火が発生するたびに新たな知見が加わり、今までは安全と思われた構造物が、必ずしも万全でなく、それに伴い建築物や土木の構造物は改修の必要が生じることもありました。特に東日本大震災では、本震後と思われた頃に再度強い地震の発生で、構造技術自体の見直しが迫られています。
そんなことからどんな知見が得られるかという思いで参加しました。

今回は海底探測の成果、統計学、数学等の知見が動員されて、ずいぶん鮮やかな考え方が示されました。
大津波の発生予測や貞観地震と津波の想定モデルの提示、調査結果と統計的処理手法で、単なる推測でなく、かなり説得力のある説明、等で驚きました。
多くの部分は理解できましたが、説明ではよく分からない部分もありました。
すべり欠損、アスペリティと海底のひずみの関係、「地震の発生間隔と発生確率の計算」、「原子力発電所の津波評価技術」、「確率論的津波ハザード評価」、「貞観モデル型の根拠」等々です。
とくに対数正規分布、BPT分布、ガンマ分布、ワイブル分布は、統計学不勉強のため、自宅で調べ、各分布の意味は何となく分かるような所もありますが、ぼんやりしています。

今回の講演で、東北地方で発生する大地震や大津波の発生の確率と発生地域、等が明らかになったことは誠に素晴らしいことです。これは現在進行中の復興市街地整備についても、新たな視点を提供するものであり、また他の地域の海溝型大地震の危険性がある地域(日本はずいぶん多いと思いますが)にも非常に明確な知見を提供するものだと思います。

ただ今回の講演は非常に内容が深かったので、よく理解するには1時間位の枠では説明が概略的にならざるを得ないと思いました。
先生が仰っておられましたが、お書きになった本をよく読まなければ結論に至る筋道と根拠を理解するのは難しい、と思います。
しかし、多分2度目の講演はないので、統計を用いた推測方法は説得力があるため、可能ならチャレンジすべきと存じます。

最後に、海溝型大地震と言えば、昨今は特に南海地震の予測が警告されており、広範な地域に影響を及ぼすため、今回と同様な海底探索や調査により、それらの地域の予測が深まれば素晴らしいと考えます。
素晴らしい講演でしたが、反面難しい部分があったのは内容からして仕方ないと思います。

(東大・工 大島直樹)