夕食会・午餐会感想レポート
2022年新年祝賀会「落語家というその知られざる世界」
夕食会・午餐会感想レポート
新年祝賀会2022
「落語家というその知られざる世界」というタイトルにあるように、落語家の階級を教えていただき、真打に昇っていく苦労もわかり、逆に破門の三ヵ条もあることを知り、気を抜けない修行の連続であることも教えていただきました。私も運動部で縦社会のきびしさとあたたかさを知りましたが、通じるものがあると思いました。
また、ボランティアで盲学校、医療少年院、ホスピス、高齢者施設を周られて、ユニバーサル絵本の夢をも紹介してくださいました。とても必要とされている所への訪問に共感を覚えました。笑いの効用にも触れ、有意義な講演をありがとうございました。
(東北大・教育 小熊 順子)
私が師匠の落語を耳にしたのは、今回が初めてであった。質問をした際、話の勢いと力強さから、どうしても昇吉という名前が口から出て来ず、思わず昇太師匠という言葉が、筆者の口から出てしまった事をお許しいただきたい。
洋の東西を問わず、落語、漫談、漫才の類いのお笑いは、世界に広く存在する。昨年末、英国BBCのウェブサイトで、You-Tubeから流れるクリスマス料理のお笑いを見た。七面鳥の代わりにサーモンのフィレ肉と称してフライドポテトと共に客に出すフランス出身の料理人に対して、「これでは、英国のFish and Chipsに過ぎないじゃないか。」とこき下ろし、(中略)最後に、「奴は、Christmas Turkey Dodging Bustard (クリスマス料理に七面鳥を抜かす悪党野郎(仮訳))だ。」と落とし、笑いを巻き起こす英国人男女による漫才であった。
米国New York市マンハッタンで聞いたお笑いは、アラバマなまりを売りとする落語家で、一通り芸を披露すると、手を上げる観客から、何人か指名し、客とやり取りし、客にもしゃべらせるのである。その客は、落語を聞いて笑う喜びと、自ら笑いを呼び起こす二重の喜びを得て、実に満足した顔をしていたのである。筆者も手を上げると、名前を聞かれた。“My name is Hiroshi Honda.”と答えると、「では、ホンダの車に乗っているんだね。」と言われたので、「実は、トヨタ車に乗ってるんだ。」との何でもない答えをすると、爆笑が起きたのである。それではと、「アメリカでも、Mr. FordがGMなどの車に乗る事もあるんでしょ。」と続けると、その落語家は、向きになったように、真意なのかどうかは別として、「この国では、Mr. Fordは、必ずFord車に乗るんだ。」と答え、笑いのポイントが国によって微妙に異なる事を教えてくれたのである。また、客にしゃべらせる手法は、他の少なからぬ芸人も活用していたのである。
この程、伝統的な落語道において、真打ちに昇進された事について、心からお祝い申し上げたい。それと同時に、若くて勢いのある師匠には、是非、これまで誰もやらなかったような落語を開拓していただきたい。落語家は、話して笑いを提供し、客は、それを聞いて笑うものという固定観念を打ち破る為にも、上述のような例は参考になるのではないかと思う。また、微妙な笑いの感覚が、これによってそぎ落とされる危険性があると思うが、バランスを取る上での落とし所をわきまえておけば、多様な成果も出ると思われるのである。
巨匠とされている落語家が、イギリス落語やアメリカ落語と称して、普通に英訳された落語をしゃべっているのを聞いて、何となく違和感を感じることもある。翻訳する際にも、その国や地域の人になったつもりで翻訳をするか、これらの人々と共訳するべきである事を付記したい。同時に、新しい分野、例えば、比較お笑い学、比較落語学、落語経済学などの開拓も視野に入れて頂ければと思う。さらに、これを踏まえて「グローバル化を踏まえた落語 十年計画・百年計画」などを、策定してはいかがであろうか。
もし、これらの域に達する人が東大に現れたとすれば、その人は、東大の真打ちと言えるであろう。最後に、質問の機会だけでなく笑いの提供の機会まで与えていただいた東大落語会の藤井隆氏に謝意を表する。
(京大・工博・工 本田 博)