『知っておこう“人事”~法律から実務まで~』
第4回目:人事評価とは?
みなさん、こんにちは。社労士ライターの安森です。
やすもり社会保険労務士事務所の代表として各種メディアで発信をおこなっています。
前回は“仕事とお金“の解説をしました。
「自分がどのように思われているか?」は誰でも気なりますよね。
ボーナスや今後の給料に影響する『あなたの成績表』がいわゆる人事評価です。
今回はこの「評価」にフォーカスします。
各社の特徴が表れる評価の仕組みを知れば、自分がどのように働くべきかが分かりますし、
いずれあなたも評価者として誰かの考課を行う日が必ずきます。
しっかり確認しておきましょう。
第4回目 人事評価とは?
2024年3月12日付の経済ニュースです。
『24 年春コクヨ要求を3000 円上回る7000 円ベア』
〔「コクヨという会社の労働組合が春の賃金交渉でモデル賃金4000円アップを会社側に求めたところ、
会社からは要求以上の7000円アップの回答がなされた」との意。
こんなことは過去30年にはなかったのでニュースになりました。〕
ここで言う“ベア”は『ベースアップ』です。
このあとお話する「給与テーブル」が更新されるのがベア(会社全体の支給額が上昇)。
給与テーブル上の号俸が上がるのが昇給(個人的な支給額が上昇)。
なんだか用語解説ばかりになりそうですが、少し話を進めましょう。
1.企業側から見た「人事評価」とは?
企業側からすると「人事評価」によって、
「自社のミッションを共有し、期待する行動への理解を促す」
「行動の優先度を示し、未来の方向性を伝える」などの効果を期待しています。
これにより組織の活性化を促し、企業を持続的に成長させるのが大きな狙いです。
この点が『学校での評価』との大きな違いですね。
また評価は、給与や昇進を考査するためだけではなく、人材育成や能力開発、
そして異動など、より広い範囲で判断する材料として用いられています。
2.人事評価制度のトレンド
「勤続年数が長くなれば、それだけ職務を遂行する能力が高い」とする制度が日本では一般的でした。
その後、欧米での事例などを参考に、社員一人ひとりに企業が求める役割を定め評価する制度(ジョブ型)や、
業績目標の達成度や能力などをもとに評価する制度に移行しつつあります。
年功制を排除し、勤続年数や年齢、キャリアに関係なく、高い成果を出すことで
若手社員でも昇格・昇給が可能になってきました。
3.近年注目されている目標管理手法(OKR:Objective and Key Results)
あなたが受け取る給与明細の端のほうに「3 級-6 号」のような暗号が書いてあるかもしれません。
大卒初年度は3級-5 号からスタート、課長代理級は6 級-7 号に飛びつくなど、
細かく基本給を規定している“料金表料”のようなものを給与テーブルと呼んでいます。
通常、給与テーブルには人材育成に対する会社の姿勢が反映されおり、こういう風に給与が上がる、
限界値はいくらなど、自社の給与テーブルを確認してみると、隠れたメッセージを読み取ることができますよ。
OKRは組織と従業員の目標を連動させて、組織全体としてベクトルを合わせる方法として注目されています。
あなたの会社で導入されているかはともかく『目的管理に関する新機軸』を理解しておくことは有益だと思います。
多くの日本の企業で用いられている目標管理制度(MBO:Management By Objectives)から発展させたもので、
グーグル、フェイスブック、ディズニーなど、「機敏さとチームワーク」を大切にしている組織で積極的に運用されています。
OKRを用いるためにはObjective(目標)及びKey Result(主要な結果)の設定に加え、
日常的なパフォーマンス管理、つまり日々のコミュニケーションの質をいかに向上させるかが重要であると言われています。
継続的な対話(Conversation)・リアルタイム・フィードバック(Feedback)・継続的承認(Recognition)の3点がその鍵です。
4.フォロワーシップを鍛えよう
わざわざOKRという制度の紹介をするまでもなく、「機敏さとチームワーク」や「継続的な対話」は
私たちの職業生活において欠かすことはできません。
ある日ある時に突然「評価」が行われるように見えますが、上司や同僚との正常な人間関係なくして、
『適切な評価』は成立しません。
「リーダーシップ」の対義語として、“フォロワーシップ”という言葉が用いられます。
リーダーシップとは、組織の成長や成果のために進むべき方向性を示し、メンバーを引っ張ることです。
一方でフォロワーシップとは、チームの成果を最大化させるために、
フォロワーがリーダーや他のメンバーに対して主体的に働きかけて行動することです。
フォロワーシップはリーダーを含む全社員に求められる能力と言われており、
『20代』だけに限定される「鍛えるべきスキル」ではありませんが、
チームビルディングのための重要な要素であり、この機会にぜひとも注目してみてください。
参考記事1) https://mba.globis.ac.jp/careernote/1239.html (グロービス)
参考記事2) https://www.iibc-global.org/ghrd/voice/04.html (山崎直子さん:宇宙飛行士)
まとめ
評価の仕組みは、会社があなたに何を求めているかを映し出す鏡のようなものです。
自分のポテンシャルを発揮して、成長していくための戦略を立てるためにしっかり理解しておきましょう。
準備と日々の積み重ねが重要ですよ。