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夕食会・午餐会感想レポート

2022年11月午餐会「中間選挙後の米国政治・経済と国際秩序の行方」

夕食会・午餐会感想レポート

11月21日午餐会

米国の中間選挙の結果がほぼ決定した段階での氏の講演は、時宜を得ていて興味深く拝聴した。始めに選挙結果の概要を解説された。一言で言うと、「民主党は上院を死守、下院は共和党が辛勝」と言うことか。小生も共和党のレッドウェーブのために両院とも共和党が圧勝するかと思っていたが、結局レッドウェーブは不発に終わり、上院は民主党がギリギリ過半数を死守することが確定した。理由をいろいろ述べられていたが、民主党が主張した人工中絶の権利に対して女性が強い関心を持ったことが大きいのではないか。選挙の出口調査で重視した問題はインフレが1位、妊娠中絶が2位だったそうで、インフレはそもそもレッドウェーブの主因になっていたわけで、やはり妊娠中絶に関しての女性の関心が大きかったのだろう。

下院で共和党が勝ったので、予算や法案に拒否権を持ったため政治の停滞は必至だろう。また大統領次男のハンター・バイデン氏の疑惑追及、バイデン大統領のアフガニスタン撤兵を巡る「失政」の徹底追及も行われるだろう。ウクライナ支援への慎重論もあるので「内向きの米国」再燃のおそれもある。選挙後の米国政治・経済で一番大事なことは「インフレ+不況」の回避をどうするかだが、バイデン批判をする共和党にも妙案がない。米国の不況は世界景気にも黄色信号を点滅させる。

2024年の大統領選にも触れておられた。トランプ氏は立候補すると言っている。ツイッターを買収したマスク氏は「トランプ氏は復帰する」と言っているが、保守系メディアも冷ややか。民主党も80歳のバイデン氏は不人気だが、トランプ指名なら最強の対抗候補と言っているとか。民主党も人材不足で候補者指名争いの混乱は必至。

最後に「国際秩序と日本へのインプリケーション(含意)」にも言及。インドネシアのバリ島で11月15日~16日に開催されていたG20サミットも首脳宣言は「ウクライナでの戦争についてほとんどの国が強く非難した」とする一方で、ロシアへの経済制裁に加わっていない一部の国の立場にも配慮する内容となり、徳俵に足のかかった声明と表現していた。来年のG7の議長国の日本は停滞打開を求められているが責任が重い。氏は「変わらない国」日本の危機と評していた。

講演では触れられなかったが、インターネットなどで民主党による選挙違反のことが喧伝されている。講演終了後名刺交換の際、訊いてみた。氏の見解は「違反はあると思うが、選挙結果を覆すような規模ではないだろう」だった。日本の選挙制度の素晴らしさに関しての小生のコメントには激しく同意してくれた。

(東大・工 加藤忠郎)