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夕食会・午餐会感想レポート

平成26年11月夕食会 「始まりは坂の途中で-日本文学が見せる人間のゆとりと威厳について考える為に-」

夕食会・午餐会感想レポート

11月10日夕食会

本日のキャンベルさんのお話を拝聴して、大いに啓発され、新鮮な刺激を受けました。江戸から明治にかけての日本文学の中から、日本にはカウントダウンの文化(期限を切ってそれに向かって努力する性向)があるということを、近松や中江兆民、正岡子規などの作品を引用して披瀝されました。また、伊勢神宮の式年遷宮の例を挙げて、遷宮が終わると早い機会に次の遷宮に向けて準備がはじまることも指摘されました。確かに我々には、期限を切らないと物事が進まないという傾向が強いのかもしれません。早い話、期限がなければ原稿は片付かないし、試験の期日がなければ学生は勉強しません。
期限を設定するという発想は、コンセンサスを重視し、決断を先送りする傾向の強い我々の意思決定過程の中で、誰にも公平に与えられる時間つまり期限が決断の契機になるということに関連しているのかもしれません。私の役人時代の経験でも、多くの政治に絡む問題の解決が、年末の予算編成時に向けて先延ばしされ、そこで一気に決着をつけるというのが通常でした。これを裏からいえば、キャンベルさんも質疑応答の中で指摘されていましたが、期限を設定しにくい長期的で複雑な課題については、問題の解決が先送りされる傾向が強いということにつながるのでしょう。
今夜のキャンベルさんのお話を受けて、久しぶりに脳が活性化しました。大変ありがとうございました。

(東大・法、諏訪 茂)