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夕食会・午餐会感想レポート

平成25年6月午餐会「シェール革命とエネルギー安全保障戦略」

夕食会・午餐会感想レポート

6月20日午餐会

田中伸男氏のシェール革命の話は、世界の経済・政治に大きな影響を及ぼす第二の産業革命であると言われている。シェール層の隙間に埋蔵された非在来型の天然ガス・オイルの採掘技術の革新だけでなく、エネルギー・パラダイム変化、世界のエネルギー地政学、新興国の電力(パワー)シフト、等々「国の存亡」を賭けた異次元の変化が起きつつある。印象に残った点を挙げる。
第一点は、米国が中東依存を脱して20年代には「エネルギーの自給自足」ができると云うことだ。これは、エネルギー地政学が中東から米国に移り、米国が中東の安全をあまり重要視しなくなることを意味する。石油消費の90%を中東に依存している日本にとって、中東のエネルギー戦略(供給セキュリティ)を早急に見直す必要がある。さらに、ロシア、中国、欧州を含めたエネルギー勢力図が大きく変わってくる。
第二点は、在来型では45年で枯渇するという「ピークオイル論」は吹っ飛び、400年ぐらい伸びることになる。そうなると、原子力、再生可能エネルギーを含めたエネルギー・ミックスを真剣に考えるべきである。特に日本は、原子力をただ「安全」という視点だけではなく国際政治のエネルギー戦略という多角的視点からも検討しなければならない。シェール革命により、世界経済の主体が金融からエネルギーへ移っていることを強く感じた。日本におけるエネルギー問題の重大性を覚醒させる貴重な講演であった。

(東大・工、武田 英次)


講演の冒頭「海外暮らしが長く、話が(舌足らずで?)多少乱暴になるかも」といったことわりがあった。始まってみれば、エネルギーを巡るかずかずのグローバル事象を矢継ぎ早に確認しつつ、我が国のエネルギー安全保障戦略(の欠如)への憂慮、IEAに替わる新しい枠組みへの期待などを滲ませる田中氏のお話は「多少乱暴」どころか驚きの連続であった。私自身の浅学菲才は棚に上げて、マスコミの怠慢、政治家の不見識(或いは不誠実)を思い、行政への不信をつのらせずにはいられなかった。一言で言えば「そんなことになっていたのか!」という焦りと悔しさが入り混じった思いである。
とはいえ、自分自身も小市民よろしく「原発の再稼働は必要とは思うが、地元の心情を考えれば多少時間がかかるのは致し方無い」「憲法の改正は必要だと思うが、それなりに議論を尽くして…」などとナイーブな考えに終始していたことを思えば、他人のせいにして片付く問題ではないことを痛感させられた。
知ってしまった以上、公私を問わずあらゆるチャネルを通じて事実を広め、避けて通れない諸施策(どれもこれも急務)について発信し行動する覚悟を余儀なくされた。原発の安全確保と稼働再開、商用電源周波数の統一、国内のみならず近隣国との系統連系やガスパイプライン網の拡充、シーレーンの確保(憲法改正?)、代替エネルギー源や節電に関する技術開発等々、どれも一筋縄では無い。今こそ日本の成熟度が問われる時なのだと思う。

(東大・法、大塚 裕明)