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夕食会・午餐会感想レポート

平成27年3月午餐会「経営改革と企業統治」

夕食会・午餐会感想レポート

3月22日午餐会

日立製作所は、「変わり身の早い企業」との印象を持っていたが、本日の講演でその中身が明らかになり納得がいった。

30数年社長を独占した人物がいて、それによる弊害や、子会社から見た本社の動きの不合理性など、改革すべき諸点を見つめていた人物がトップになり、強い意志と合理性ある統率力をもって、企業の方向を定め推進して体質を強化し、収益を向上させたのである。

印象に残ったのは、社長は副社長の3倍高いところにあって、9倍広いところが見えた、との発言である。3倍高いところでは、権力も3倍以上になる。広く全体を見る能力がなく、権力に執着して、有能者を排除し、会長、相談役、顧問と影響力を誇示し、晩節を汚す人物も時に見受けられるが、日立製作所の現在は、よき企業風土が醸し出されていると感じられた。

社長となるべき能力は、40歳前後から意識して教育せねばならない。その手段の一つとして、小さくとも関連会社のトップに据えてみる、との説明も説得力がある。子会社出向は左遷ではなく、階段をひとつ昇るとの意気をもって赴任することになれば、従業員の士気も高まるであろう。

このような企業風土を持つゆえに、取捨すべき事業の決定も合理的で、赤字でも捨てず、黒字でも売却する決断がしっかりとなされ、「変わり身の早い企業」と世間に印象されたのである。

今日の講演のような企業をケーススタディとして、日本の会社が研究し、実行すれば、人口が減少しても、世界における経済的地位は保てると確信する。

(東大・経、五十嵐 信之)


本日は「経営改革と企業統治」というテーマで川村隆氏のご講演を拝聴させていただいた。まず最初に、巨大赤字からV字回復を果たした経営改革の話であった。

イノベーションとグローバリゼーションを基本戦略として、世界で勝ち抜く企業になる。このため100年超の歴史を持つ企業が老化防止のため、様々な分野で改革を行う。製品が老化し、ゾンビ事業化する前に果断に他社への売却などを実施し、ポートフォリオの整理に先手で臨む。製品が赤字化する様になってからの売却と山を少し超えた時期での売却ではコスト的にも大きな差がでる。製品の生涯利益を確保することが大事であるとの川村氏のお話には非常に説得性があった。もちろんその過程では社内の抵抗勢力との軋轢が出てくるわけだが、その際は社長として毅然として決断しなければならない。社長というのは副社長の3倍の重みがあり、まさに「The Last Man」、これも様々な圧力を跳ね返し、経営改革を断行した川村氏の述べられた重い言葉であった。こうした企業の命運を握る社長のあるべき姿として、集中力とエネルギッシュさがあり、沈着冷静であること、そして行動としては、真に大切な目的遂行に時間を最大限割くことが必須である。また多様な価値感を大事にし、他所から会社を見たことのある人、そして意思決定の早さが必須であることも語られた。更にステークホルダーとの対話を大事にし、付加価値を税金や納入価、仕入れ値などで社会還元していくことの重要さについても触れられた。

グローバル企業としての今後の姿は、グローバルな自立分散で、具体的には2014年に交通システム社をロンドンに設立し、英国人を社長としたということがあげられる。ただ本社は日本発の企業として国内に置くが、外国人がもっと日本で働く様にしなければならない、つまり色々な価値観と複眼的思考が必要だということだ。世界で戦うために、日本企業の強みとしては、納期を厳守することがあげられるとのことであった。

企業統治については、2015年から、執行役非兼務取締役2名、執行役兼務取締役2名に対し、社外取締役を8名とし内4名については外国人にしたとのこと。外国人はしがらみなく問題点をビシビシ指摘するとのことで、これもグローバル対応の一環としての効果が期待されている。日立グループが、日本発のグローバル企業として台頭してきた中国企業などを凌駕し、公共交通機関などのインフラ整備などで、先進国、新興国で今後も力を発揮していくことができるか。それは我が国産業の興隆と世界各国の発展そして世界の人々の生活向上にどれだけ貢献していくことができるかであり、活気あふれる世界を目指して“Inspire the Next”日立グループのますますの発展を祈念します。

(北大・教育、牛島 康明)