文字サイズ
背景色変更

夕食会・午餐会感想レポート

平成21年3月午餐会「情報とは何か-情報と通信、情報化社会と人間-」

夕食会・午餐会感想レポート

3月19日午餐会

ご講演の内容は、包括的であり、1.はじめに、2.情報の伝達は太古の昔から、3.情報とは何か、4.情報理論の誕生、5.コンピュータの劇的な進歩、6.革新的な通信技術の発展、7.デジタル化への回帰、8.人間社会における情報化の特徴、9.情報化社会と人間、10.おわりに から成りたち、歴史的・社会的・経済的・技術的、かつ人間的な視点や価値観から論じられていた。

まず、古代から近世に至るまでの大声、狼煙、太鼓、飛脚、駅伝によるリレー的伝令手法の変遷についてのお話に惹きつけられたが、1948年に発表されたシャノンによる論文「通信の数学的理論」と、電子技術の発展に伴うコンピュータ技術や通信技術の進歩により、現在の電子を媒体とした情報通信技術(ICT)に取って代わられるようになった歴史や、新聞など既存のメディアも必ず残りマルチメディア化する事なども、改めて教えていただいた。
情報とは何かというお話では、森林太郎の「敵と敵國とに関する我智識の全體を謂う。」、中山正暉の「情に報いる事である。」、前野和久の「心に対するエネルギーである。」、梅棹忠夫の「人間の感覚諸器官が捉えたものは全て情報である。」、井上俊の「情報には、明示的情報と暗示的情報の二種類がある。」 の定義についてのご紹介があったが、これらが、定義者の職業的・専門的視点に基づいている点に人間臭さを感じ、興味と愛着感を覚えた。個人的には、五感で得られた情報が、デジタル化され、全て、うまく伝達できるような技術の発展と実用化、更に普及について注視し、関わって行く事ができればと思う。テニスを長年プレイしている筆者にとって、五感を駆使し、体で覚える知の伝達が上手く出来るような技術が実用化できれば、便益性が高く、応用面も広いと思われ、スポーツ・芸術等におけるコーチング手法の向上にも繋がるものと思われるので、期待感を持っている。

さらに、人間にとって使い良いものでない技術は未熟である事や、ヒューマンウェアとして、幅広い分野間の協力・連携が必要な自動翻訳電話のお話があり、人間同士が直接に触れ合う事の大切さや、手書きの手紙が、最も人の心に触れ、訴えかけるとのお話もあった。

1996年1月に、書状のやり取りをしただけで、顔を合わせてお話した事のなかったフランス共和国のミッテラン大統領が亡くなられた時、お悔やみの手紙を出した所、一度もお会いした事のないミッテラン夫人から、手書きの返礼の葉書が送られて来た事があった。特に、情に報いるという意味において、この国は、情報先進国であり、外交先進国である事を、このご講義で、改めて学ばせていただいた。

情報通信技術(ICT)をご専門とされる熊谷信昭先生が、人間的触れ合いが何にもまして大切であると強調された事は、当然の事とは言え、科学技術に対して、人間的触れ合いを超えるものを期待していた筆者にとって、当初、意外にも思われたが、情報学の人文学的・社会科学的な側面を端的に示しており、ICTは、あくまで人間の(触れ合いの)為のものであるとの視点に立てば、当然の帰結であろう。

(京大・工博・工、本田 博)