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夕食会・午餐会感想レポート

平成30年9月午餐会「リーマン・ショック10年 ~グローバル経済・金融市場はどこに向かうのか?」

夕食会・午餐会感想レポート

9月20日午餐会

20世紀の予言として7日間世界一周、写真電話など23項目があげられていたが17項目実現されたそうである。自然科学の発展は目覚ましいが、人間の日々の営みを映し出す世界の政治や経済は相も変わらず混乱の渦の中にある。リーマンショックから10年たつが、リーマンショックが世界に与えた影響は中国の台頭、産業構造の転換、格差拡大、ポピュリズムの横行など広範囲にわたっている。また金余りによるバブルの再来も懸念されている状況である。今回の熊谷氏の講演は、豊富なデータに基づき今後の世界経済を占うものであった。

世界経済の今後の懸念材料として挙げられたのは4点で、1点目はアメリカの長期金利の上昇。現在3%余りだがこれが4%を超えるようになると新興国から資金が引き揚げられ新興国にとって大きな打撃となる。2点目は2019年問題で、海外リスクとしてはアメリカンの保護貿易主義、中国経済の想定以上の減速、Brexitによる欧州経済の悪化さらに中東情勢の混乱による原油高があげられた。国内リスクとしては残業規制の強化、消費増税の影響とし実質GDPが4.4%押し下げられる要因になる。3点目は中国の債務残高が大幅に増加していることで、金融面や設備ストックの過剰により財政出動余地は大幅に縮小しているのではないかと懸念されており、2020年には潜在成長率が大幅に低下するのではないかと危惧されている。4点目は日本の財政問題で、2017年の日本の政府債務残高対GDP比は221%となっており、将来の金利上昇を考えたとき、財政再建が必須の課題となっている。

日本では自民党の安倍総裁が3選を果たし、引き続き今後3年間政権運営を担うこととなった。日本の直面する大きな課題である人口減少対策、安全保障、少子高齢化による社会保障制度の改革、自然災害への備えなどに果敢に取り組み実績を創っていかないと、日本の将来は暗いものになる。

幸い日本には、ものつくりの伝統、勤勉で礼節を重んじる国民性、高い文化など人類にとって普遍的価値を持つ貴重な財産がある。今後も国際協調、平和主義に基づく外交努力と日米安全保障条約の維持および自由貿易をベースにし、安定した国内政治により課題解決のフロントランナーとしての責務を果たし、世界から敬愛される国となっていかなければらない。

(北大・教育 牛島康明)