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理事長挨拶

年頭のご挨拶

理事長:樺山 紘一
 理事長 樺山かばやま紘一こういち

新年おめでとうございます。学士会会員の皆様にとって、本年が良き年となりますよう心からお祈り申しあげます。

ご賢察のとおり、昨今の世界情勢は、安易な予測を許さない展開を見せつつあります。二年目を迎えたアメリカ合衆国の第二次トランプ政権が、奔放な国際政策を展開し、わが国を含む世界各国に悩ましい対応を強いています。直面する軍事情勢ばかりか、広く社会・経済状況の全般にわたる困難な条件を提示しています。

さてところで、昨今のわが国における政治・社会状況のなかでも、際立った動向と現象のひとつに注意をむけることができます。それは女性の方々の存在感が際立ち、その指導力や志向性が明確な形をとり始めたことです。とりわけ近年にあっては、社会のあり方全般に、大きな影響力を発揮するようになっています。その代表的な事例を挙げるならば、国政や地方政治におけるリーダーシップの発揮の事例が話題を呼んでいます。高市早苗首相の登場は、言うまでもなくその最たるものでしょう。憲政史上で初の女性最高指導者の出現としてばかりか、強烈な指導力の発揮が、私たちに驚きと清涼感を与えたようです。

それは単に瞬発的な現象としてではなく、社会全般にあって潜在してきた女性の社会的発言力、影響力が明白な形をとって顕現したものと考えることができます。女性の政権トップという主題は、何らかの偶然の結果とは言い難いでしょう。周知のとおり、すでに東京都知事をはじめとして、多数の地方行政体にあって、女性の知事・市長の数が、近年では急速に増加しつつあります。確実に時代の空気は変化を来していると言わねばなりません。

さて、そのような状況を念頭において、足元に眼を転じてみましょう。私たち学士会にあっては、女性の地位や活動が十分に認知され、信頼されているか。あるいは、女性をとりまく諸事情が、そのリーダーシップのもとに察知され、解決されているかと自問せざるをえません。ご承知のとおり、学士会は旧帝国大学という伝統を共有する同窓生によって構成される団体です。このため、母集団における性差のアンバランスもあって、学士会会員のなかで女性が占める比率は、かなり低いことは事実です。そのこともあって、運営体にあって女性の数的比率は著しく低く、また会務や施設・行事の立案にあっても、女性の立場や関心を十分に考慮に収めてこなかったように見えます。

しかしながら、近年にあっては、先に見たような「女性」という視点の尊重を視野に収めつつ、遅ればせながらも、可能な部分から改善・是正の方向を模索してきています。現在進行中の大規模な再開発・改築計画においては、会館来訪者・利用者について、女性に関わる諸事情を十分に考慮に入れることを課題としました。そのこともあって、学士会の運営においても、女性の会員の参画を広く求めようとしています。すでに会の最高決定機関である代議員会には数名の女性の参加をお願いし、また執行機関である理事会にも二名の女性に加わっていただいています。いずれにせよ、女性の役割の適正な見直しばかりではなく、年齢、出自など多様な属性に配慮した人的スタッフの参画による運営に努めたいと考えています。こうした改革の方向性につき、会員諸兄(姉)のご理解とご支援をお願いいたします。年頭に当たり、目下の努力の一端を記しました。

(東京大学名誉教授、東大・文修・文・昭40)

※『學士會会報』976号(令和8年1月発行)「年頭のご挨拶」を掲載しています