学士会とは

学士会について

はじめに

年頭のご挨拶

 

 

 新年おめでとうございます。

 平成三十年、西暦二○一八年、元旦にあたり、学士会会員諸賢に正月の慶賀のご挨拶を申し上げます。会員の皆様及びご家族にとりまして今年がよい年でありますよう、年頭にあたり、ご祈念申し上げます。

 新年には誰しも今年はどうなるかということが念頭を去来します。私はこの数年来何か大きな出来事が先進各国政治の世界で起こりそうな予感を抱いて参りましたが、遂に一昨年、英国のEU離脱(ブレグジット)とアメリカにおけるトランプ大統領の誕生というかたちでそれが現実のものとなりました。

 経済のグローバル化と一国民主政との矛盾が先進各国で噴出し、それが両国の決断の大きな底流としてあることは改めて述べるまでもありません。それに加え、EU統合問題と難民問題を抱えるEU諸国の昨年の一連の選挙では「極右」勢力の進出は一定程度抑制されましたが、これまで政権を主導してきた中道政党の「陥没」は明々白々となりました。かくしてメルケル政権は弱体化し、それを頼りにしてきたマクロン政権の前途も決して明るいものではありません。

 米英が足並みを揃え、世界を主導した一九七〇年代のサッチャー・レーガン時代、彼らは市場主義のイデオロギーによって新しい世界秩序を「創る」ことを試みましたが、ブレグジットもトランプ政権も既存の秩序や協定からの「退出」を試みるものである点で、ベクトルが正反対であります。TPPやパリ協定を「創る」のではなく、「退出」によって支持を得ようというわけです。政治的には「退出」は「創る」よりも当面遥かに楽ですが、本当に楽かどうかは歴史の審判を待つ必要があります。EUを含め、先進各国は「創る」力の喪失に見舞われていると言っても過言ではないでしょう。

 その一方で、北朝鮮の核・ミサイル開発問題のような深刻な問題が登場しました。フランスの評論家、ジャック・アタリが言うように、解決されない危機は山積し、爆発しかねない状況にあります。民主政は分極化し、解決当事者としての余力を失いつつあります。今年はこの課題と能力とのギャップをイヤと言う程に見せつけられそうです。

 会報にしろ午餐会・夕食会にしろ、今年も取り上げたいテーマが目白押しの感じがしています。これが幸せなことかどうかは分かりませんが、歴史の動向に貪欲なご関心をお持ちの会員諸賢のご期待に応えるべく、引き続き努力していく所存でおります。会員諸賢のご協力とご叱正を改めてお願い申し上げます。

 最後に改めて、会員の皆様の御健勝とご活躍を心からお祈り申し上げます。

(東京大学名誉教授・同元総長・日本学士院会員・東大・法博・法・昭40)

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