学士会とは

学士会について

はじめに

年頭のご挨拶

 

 

 新年おめでとうございます。

 平成三十一年、西暦二○一九年、元旦にあたり、学士会会員諸賢に正月の慶賀のご挨拶を申し上げます。会員の皆様及びご家族にとりまして今年がよい年でありますよう、年頭にあたり、ご祈念申し上げます。

 新年には誰しも今年はどうなるかということが念頭を去来します。とりわけ、今年の新年は平成最後の新年になります。

 振り返ってみますと、平成時代は内外とも「想定外」の出来事の連続のように見えてきます。平成元年は正に疾風怒濤の年でした。海外では天安門事件やベルリンの壁の崩壊(冷戦の終焉)、国内では消費税という新税の導入とリクルート事件、自民党の参院選での大敗と単独政権の終わりなどが思い浮かびます。そして、大納会の株価はあたかもバブルの最後の輝きであるかのように、史上最高の終値をつけました。

 冷戦の終焉は世界のグローバル化と民主化を加速し、欧州を中心に政治地図は激変しました。ドイツの統一とEUの統合の加速、共通通貨ユーロの誕生などが矢継ぎ早に実現しました。これを別の角度から見れば、ソ連の崩壊と社会主義イデオロギーの解体という世界史的な出来事が現実のものとなりました。

 平成時代の日本は未曽有のバブルとその崩壊、その後始末に追われました。それは最後には銀行の不良債権問題として顕在化し、相次ぐ金融機関の破綻に見舞われました。これを通して戦後構築されてきた政府中心の護送船団方式は崩壊し、広い意味での五五年体制は終わり、格差社会が始まりました。

 平成時代の「想定外」の出来事として真っ先に思い浮かぶのは阪神淡路大震災に始まる一連の大地震、特に、東日本大震災です。東日本大震災の規模の大きさと巨大な津波、更にそれに起因した深刻な未曽有の原発事故によって多くの国民は圧倒されました。

 平成時代のダメを押したのが英国のEU離脱とトランプ政権の誕生という「想定外」の事実でした。かつてグローバル化の音頭取りであった米英両国が脱グローバル化の先頭に立つというのは正しく「想定外」の事態でした。そして台頭著しい中国をめぐって国際関係は新たな緊張をはらみつつあります。

 人間は想定に従って生きる動物ですが、想定の幅をどうとるかは人間の側の問題です。思い込みといわゆる常識に寄り掛かることなく、想定の幅を広くとって生きるべきことを平成の時代は我々に教えているように見えます。勿論、よい意味での「想定外」も含めて。

 会報にしろ午餐会・夕食会にしろ、今年も取り上げたいテーマが目白押しの感じがしています。これが幸せなことかどうかは分かりませんが、社会や歴史の動向に貪欲なご関心をお持ちの会員諸賢のご期待に応えるべく、引き続き努力していく所存でおります。会員諸賢のご協力とご叱正を改めてお願い申し上げます。

 最後に改めて、会員の皆様の御健勝とご活躍を心からお祈り申し上げます。

(東京大学名誉教授・同元総長・日本学士院会員・東大・法博・法・昭40)

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