文字サイズ
背景色変更

夕食会・午餐会感想レポート

2019年12月夕食会「Change, or Die!」

夕食会・午餐会感想レポート

12月10日夕食会

松本晃氏の講演テーマは、当初の「Change,or Die!」から「働き方改革何か違う
ぞ!」に代わっていた。松本氏は、カルビー社などの企業経営で実際に業績を大幅に伸ばした実績を持つ方であるが、会社の経営を易しく考えると話され、経営の三要素として、①VISION ②PLAN ③リーダーシップをあげられた。ビジョンを示し、具体的な実行計画をたて、計画達成のためにリーダーシップを発揮する。リーダーシップ発揮に当たっては率先垂範で変革の覚悟を社員に示す。そのためには社長が持つ既得権も捨てる。具体例として権限、個室、社用車、交際費をあげられた。組織に置いて最高権力を持つ人は往々にして、人に厳しく自分に甘くなりがちだが、やはり期限を切って、成果を上げることに集中するプロの経営者とはこういう姿勢なのかと思わされた。組織の中で階段を上り詰めたサラリーマン経営者は、これだけの姿勢を示せる人は少ないのではないか。平成の三十年間で日本は地盤沈下していった。やはり人々の意識の中に日本人はいつまでも豊かで優秀な国民だという気持ちが相変わらず続いているからではないだろうか。たまに外国に行くと想像以上の発展ぶりに驚くことがある。今後の日本に立ちふさがる少子高齢化による様々な課題、自然災害の激甚化による国富の消失、増え続ける国家債務、格差の増大、緊張が続く近隣諸国との関係。このような状態の中で、「桜を見る会」が国会論議の中心になる様では困るのである。真実を語らず、国家財産たる公文書を自分に都合よく消失させるようなことがあっていいのだろうか。国のリーダーの姿勢は、社会の各層に影響を与える。行政に携わる人、企業で働く人、学校で正直・誠実などの道徳を学ぶ子供達にもである。

松本氏は企業経営者のリーダーシップとともに国家指導者のリーダーシップについても語られたと思う。企業も国家も課題に対する最大の成果を生むために、従来の束縛を解き放つ必要がある。つまり、仕組みを変えるという中で、古き労働慣行もあげられた。そういう意味で「働き方改革」が真になされているか?が松本氏の主張である。成果をあげるという中心課題に向けて、しくみ、文化、環境、制度を変えていく。そして、その成果は何のために生み出していくのか、誰のために使われるべきかという問いについても答を提示された。一企業の経営者の話ではあるが、こういうマインドが社会に浸透することによって我が国の姿も徐々に変えられるのではないかと思わされた。

(北大・教育 牛島康明)


平成から令和という節目に当たり、刺激的な表現の演題と異なり、停滞する時代・仕組みへの「異議申立」の形で企業経営のトップとしての観点から働き方改革を主とする講師の持論が遺憾なく展開されたと思われる。

スライド画面に次々に映し出されるグラフや写真は判り易く、それらを用いて、合理的・効率的改革の必要性を訴える講師の主張は単なる利益至上主義でなく、止むに止まれぬ憂国の思いに発するものであると感じた。

冒頭、この30年の間に消費額が急減した品目のグラフで、成長を続けた昭和時代との顕著な構造的変化につき説明があった。低成長・デフレの是非論はさておき、国民はその傾向に慣れ、今後も改まりそうにはない。

収入の減少を招く可能性のある働き方改革に対し、講師が提唱する所の成果に見合う適正な報酬の支払、女性活躍の推進の具体的な事例や、既に実績のある無駄の見直し、勤務時間の短縮や会議の廃止の紹介があった。

これらは確かに一時的には企業組織にとっては業務の「革命」であり、抵抗勢力には受け入れ難いものであろうが、結果的に体質改善により業績が上がり、社員・株主共に満足するものであれば申し分ないものである。

かかる手法が全ての組織において適用可能とは限らず、逆効果となる場合もあるかも知れない。併し、先行きの見えない企業においては問題提起として大きな意味を持ち、その慧眼には敬服する向きが多いことだろう。

リーダーシップを発揮する経営者といえども、一時的には持て囃されても、時代の移ろいに抗せず、無事に全う出来るとは限らない。他方、日本社会の特質を生かす経営が求められるとは評論家の通り一遍の言である。

痛みを痛みとして感じさせない一貫した経営ポリシーによる企業再建への理解と改革への期待が社会に澎湃として湧き上がって来るようになれば、日本の将来がネガティブなキーワードで溢れるようなことはなくなる。

そこにこそ、警世・憂国の士にとどまることなく、自らに対しても「成果」を厳しく求める求道者ともいうべき講師の目指すところがあるように思えてならない。今後の御活躍と共に再度の御講演を期待する次第である。

(東大・法 古川 宏)


1、今回の夕食会につきまして、学士会の夕食会に参加させていただいたのは初めてですが、本当に参加して良かったと思います。今回の講演のテーマは、学士会の夕食会の中で、通常は学術的なテーマが多いと思いますので、かなり異なっていたのではないかと考えます。
今回は講師の松本先生が強くアピールされているのは、バブル崩壊後、約30年にわたり、日本が経済的にも世界のリーダーとしてもその力を大きく失ってきたことであり、日本と日本人が自信と力を取り戻すために、何が必要かの重要かつ説得力のある御提案をいただいたと理解しております。

2、松本先生は、日本が成長を取り戻すため、先生がこれまで経営トップを勤められてきた企業で示された「働き方改革」として、非常に大胆な提案をされました。オフィスを最大限シンプルにし、自分の机を持たない等から始まり、女性の管理職を、女性が働きやすいように配慮しながら大きく増やしていくことなどを通し、「営業利益10%以下は赤字だ!」として、高い利益率を継続することの重要性を主張されました。

3、これら松本先生のご主張は、現在の日本では大変大胆であり、先生が講演の中でご指摘いただいたように、多くの古い考え方の方々より抵抗を受けるものと確信しています。しかし今後、日本の閉鎖的状況を切り開くには、その抵抗を打ち破っていかなければならず、今回は時間の制約もあってお聞きできなかった。その抵抗などを打ち破ってこられた先生の実体験、ご苦労話などを次に機会があれば、是非、お聞きしたいと考えました。

(東大・法 小暮圭一)