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夕食会・午餐会感想レポート

平成27年11月夕食会「財政再建と日本経済」

夕食会・午餐会感想レポート

11月10日夕食会

高齢社会のもと、先行きに対する国民の不安の一つが国家財政の破綻です。「財政再建と日本経済」というテーマの講演では暗い話が続くものと思っていたところ、予想に反し明るい話題で終わったので、 愁眉を開きました。

その明るい話題というのは、次

1.人口減少が進行しても、商品・サービスの付加価値を高めれば、事業の機会が増え、結果として全体として収入が2倍になる(格差の問題は別で、国民にとって平均的に収入が増える訳ではない)。
2.以前2種類しかなかったスパゲッティが今はパスタと称して様々なものが出て来ていたり、通勤電車で特急仕様の快適なものが実現しているのはその例で、電車を満員にするといった発想は捨てるべきである。
3.高齢社会の到来も恐れる必要はなく、逆に事業の機会が増える。建物設備に限らず、文房具に至る迄高齢者仕様となることだろう。

の3点に要約出来ると思います。福祉面で余り国に頼らず、国民・企業が努力して行けばそれなりに収入が増え、それなりの未来が待っているということでしょう。暗い話で不安を煽るばかりの経済学者や政治家はかかるアナウンス効果の意義を考慮すべきです。

社会構造の更なる変化と動揺という時代に際会する日本人が志を持ち、各種の事態に適宜対応すれば、若きはチャンスをものにし、老いたるは穏やかで満たされた余生を送ることが出来るようになります。日本の先行きが暗いものとならぬことを期待しております。

(東大・法、古川 宏)


日本の財政問題には歳入と歳出の両面がある。その中でも吉川先生が歳出に焦点を絞られたのは、 歳出の大きな構成項目である社会保障費であって、これはやや高い年齢層であるわれわれ聴衆にとって身に迫る問題だからであろう。歳出は幾らでも効率化出来る余地がある。

一方で歳入の基礎となる経済のファンダメンタルズは、企業家精神(アニマルスピリッツ)の低下した企業などがイノベーションによって押し上げなければならない。それが要旨であったように思われる。その他にも、文字通りのゼロ成長は良いこととは思わない、高齢化という壁はイノベーションにとっては絶好の機会であって日本がやらねば他の先進国が行う、などの言葉は重い。歳出に効率化の余地があるということは、つまり歳出をする行政やあるいはその末端で歳出に関わっている我々自身がイノベーティブにならねばならない、とも聴こえる。高齢化社会を謳歌し、整ったインフラの中、年金生活などで出来た余裕は一部そのような時間に回しても良いのではないかとも思う。

医療や教育を含め、国費の身近な問題を考える良い契機となったのではないか。ただ、企業家精神の乏しい企業に対してもう少しお話をお聞きしたかった。やる気の無い子どもにがんばれと言うのも、飴を与えるのも簡単だ。法人税は飴だ。だが、それで精神が戻るのか。その先のお話が聞きたいと思う。

(東大・経、李 智雄)


まず、忙しいなか、貴重な講演「財政再建と日本経済」をしていただいた吉川先生に感謝申し上げます。

私は工学部卒なので、「経済学」、「法学」には日頃はほとんど馴染みがないので、講演を興味深く聞きました。

日本の国と地方の合計国債残高は1,035兆円、対GDP(510兆円)比約200%で、ギリシャの約130%より大きいが、現状は、日本の経常収支が黒字なので、長期国債金利が上昇せず済んでいるようである。子孫に残してはいけない遺産であることは確かである。

財政再建には3つの方法があり、①歳入を増やす、②歳出を減らす、③負債の価値を目減りさせるであるが、私は②が一番重要と考えている。社会保障費が年々増加するなか、②歳出を減らすことは難しいことが説明された。また、①については、日本の税負担が低いとの指摘があり納得した。当然、増税しなければならないが、世界的にポピュリズム政治が達成できるとは思えない。我々エンジニアも産業を興し、生産性を上げ、税収を増加させる努力が必要と分かった。ただ、累進課税について、日本国憲法第14条に違反するという議論もあり、経済学では累進課税をどのように評価しているかを質問したかった。

(東大・工、佐藤 彰)