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夕食会・午餐会感想レポート

平成30年7月夕食会「デジタル化時代における日本のものづくり」

夕食会・午餐会感想レポート

7月10日夕食会

藤本隆宏教授の「デジタル化時代のものづくり」研究は、日本企業の強みである現場を繰り返し観察することからスタートしている。開発は設計情報の創造であり、生産は設計情報の転写、販売は設計情報の発信、購買は媒体の調達という考えは、メーカーだけでなくサービス産業にも共通しているといった話にも共感できた。

設計思想を「アーキテクチャ」といい、設計情報の転写が製造で、結局これが良いモノづくりを左右するわけである。設計から製造への「良い流れ」を保ち、「知のめぐりのいい企業」をいかにつくっていくか、そして現場力を収益力にむすびつけていく経営により、顧客満足、利益確保、雇用安定の「三方良し」を達成することこそが企業に求められることであると思う。

生産性向上とは、現場改善であるとし、その方法として常に「顧客満足」と「競争力」を意識し、顧客満足の為に問題を発見することにより、その解決方法を検討し実行する。そして現場構成員全員でPDCAサイクルを回すこととなる。一現場員としては、顧客満足の為の正味作業時間を意識し、無駄の最小化、設計情報の転写速度・転写密度の同時改善を図ることが重要である。その現場で得られた成功体験は、まず現場構成員で共有化され、他現場へも横展開されることで組織全体の生産性が向上する。社長は走り回って仕事をとってくる。現場は生産性を上げる。これが日本企業の強みだという話は多くの企業を尋ねられた先生の実感であると思った。

今後一層のグローバル化の中で、日本の産業力を保ち強化していくためには、地上の現場・現物をますます磨いていくと同時にもう少し上空である低空域のサイバーフィジカルインターフェース層を発展させ、強い現場とイノベーションを仕掛ける強い経営が夫々の立場を強化して勝ち抜く力を強めていくことが重要である。国際的には、相性の良い「得意アーキテクチャ」が歴史や初期条件の違いにより異なるとのことで、日本は統合力(オペレーション重視で擦りあわせ製品)、欧州は表現力(デザイン・ブランド重視の擦りあわせ製品、アメリカは構想力(知的集約的モジュラー製品)、中国は動員力(労働集約的モジュラー製品)である。

製品に要求される機能を部品にどのように配分し、部品間のインターフェースをどのようにデザインするかは、企業組織の中においては、個々の社員の能力を高め、それをどう配置しからめ併せて、組織力を高めていくかと言うことでもあり、大変興味深いお話であった。

(北大・教育 牛島 康明)