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夕食会・午餐会感想レポート

平成27年5月午餐会 「ビッグバン宇宙創生のインフレーション理論-観測的実証への期待-」

夕食会・午餐会感想レポート

5月20日午餐会

「現在の宇宙論はここまで攻め寄せることができたのか」と開いた口が塞がらないほど驚きました。

まず最新の宇宙論の輪郭をご紹介いただき、次に有力な方法論として観測的実証への期待と展望を伺いました。前者では、宇宙誕生時のビッグバンは既に仮説ではなく事実であること(宇宙マイクロ波背景輻射が証拠)を知りました。

138億年前(年代算定がスゴイ!)宇宙誕生時は真空状態であり、時間も空間も存在せず、ただ量子的ゆらぎがあったという、禅問答のようなお話も興味深かったです。また、ビッグバンだけでは水素やヘリウムのような軽い元素しか生成できないので、現在の重い元素ができるためにはインフレーションが必要だとのお話は大変説得力があったと思います。観測的実証のお話も大変面白く拝聴しました。

ただ不思議に思うのは、ビッグバン後のプラズマ状態は宇宙を観測すれば分かるということでしたが、私は、地球側のその世界の姿は、既に光速で地球を過ぎ去っているのではないかと考えます。となると、その姿を発見するには、地球と反対側に膨張した世界の状態を探す(恐らく138億光年から276億光年先にある?)のではないかと思いました。

ヒッグス粒子発見もインフレーション理論を強くサポートすると伺い、世界で初めてのインフレーション理論提唱者の佐藤先生が、南部先生のお仕事の後を承け、ノーベル賞でも続いて、ワン・ツー・ショットを果たされますよう祈ります。

(東大・教養、勝亦 眞人)


ビッグバン、インフレーション、と聞きますと、英国の経済改革や物価の上昇が思い浮かびますが、今回の講演は、佐藤勝彦氏による宇宙創生論、インフレーション理論でした。

聖書の中では、宇宙は一週間で出来上がり、はじめに光ありきと言われていますが、宇宙全体を科学的に記述できるようになったのは、1917年、アインシュタインの一般相対論からで、以来、フリードマン、ハッブルなど様々な理論、モデルができ、この世には始まりがあり、動的に進化するとされたそうです。ガモフによる、宇宙は熱い火の玉から始まる、とするビッグバン理論は、なぜビッグバンで始まるのかが謎で、これを理論づけるのが、佐藤氏、グース氏のインフレーション理論であり、“真空の相転移”がキーワードとのことでした。佐藤先生のコペンハーゲン留学時代の理論だそうです。

インフレーション理論による宇宙創生は、無の状態から誕生した宇宙は、加速度的膨張、インフレーションにより火の玉になり、仕込まれた構造の種から、銀河などが生まれ、現在の開闢138億年の宇宙があるというもので、壮大さやロマンを感じました。

1993年、COBEの観測が38万年経た宇宙の凹凸を描き出した、ゆらぎの発見や、ヒッグス粒子の研究も、理論を後押ししているそうで、現在も続く観測で、今後いかに実証されるか、楽しみです。講師には著書も多数あるそうですが、お話が拝聴でき、幸運に思いました。

(京大・経、関 登鯉子)