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夕食会・午餐会感想レポート

平成25年5月午餐会「寒冷地の工学」

夕食会・午餐会感想レポート

5月20日午餐会

前北大総長、佐伯浩氏の「寒冷地の工学」の話を興味深く拝聴した。寒冷地ならではの問題にアカデミックに取り組み、実際に解決策を提示する姿勢に感銘を受けた。特に先生のライフワークに成った「寒地海洋工学」は海に囲まれた日本にとって現実的課題である。内容は流氷の湾岸等への侵入をいかに防御するかという問題である。流体力学や機械工学的知見が要求され、少し門下外には難しいところもあったが、今後、気象・環境、資源問題が重要になる日本にとって貴重な示唆を与えてくれたと思う。
日本は温暖化や地震を含め、自然災害に見舞われる確率が高くなっている。その自然災害から、如何にして暮らしを守るかが急務であり、予測技術だけでなく、防御技術(工学)が重要になっている。今回の東日本大震災や原発問題にしても、津波の防波堤を高くするだけでなく、津波に耐えられる家屋や都市計画が必要と思われるがなかなか進んでいない。「津波工学」のような現実に即した学問が必要ではなかろうか。
さらに、日本は最近、エレクトロニクスから重厚長大、社会インフラの分野の産業に重心が移っている。そこで使われている技術は50年ぐらい前に開発された技術か、其の改良版である。もっと最近のハイテク技術との融合を図り、新たに学問体系を作り上げるくらいの視点が必要である。その様な視点から原発問題の新たな展望が開かれるのではなかろうか。いろいろなことを考えさせられる講演であった。

(東大・工、武田 英次)