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夕食会・午餐会感想レポート

平成28年4月夕食会「認知症最新研究~治療法と予防戦略」

夕食会・午餐会感想レポート

4月8日夕食会

高齢者認知症の半数以上を占める「アルツハイマー型認知障害」については、アミロイドβの蓄積を伴う老人斑の生成が特徴的に見られることから、早期診断、治療方法について、これを手がかりとするのが趨勢になっていますが、イベント記憶が失われる症状として発現する海馬機能の衰退との直接の因果関係は、まだ完全に証明されているとはいえないように思います。

アミロイドβの蓄積が始まってから、実質的な認知障害が発症するまで、かなり時間が経過する事例が多いということは、直接的原因は別にあるのではないかという可能性を示唆しているように思います。

イベントの認識と、その記憶への書き込み、そして書き込まれている記憶との照合を伴う脳の活動のメカニズムは、まだ十分に解明されていないように思います。これを司る海馬の機能を支配している物質の中で、アミロイドβがどのような役割を果たしているのか、本当に原因物質なのか、あるいは結果産物なのか、ということが証明されれば良いように思います。

いわゆる頭の良い人というのは、いろいろな状況判断の中で、適切な選択肢を抽出する能力に長けている人といわれています。今回の講演の中でも一寸触れておられましたが、幼児期の脳の発達過程もかなり影響しているように思います。が、成人してからの学習、特に価値判断の元となる世界観の構築が、その人の人生を支配する一番大事なものではないかと思います。

認知症の発症を予防するには、今まで自分が持っていた価値観の他に、世の中には別の価値観もあるものだということを、いろいろな場面で、常に学ぶように努力することが、いわゆる脳トレプログラムなどを実行するよりも、ずっと有効であるように思います。

(東大・理、大串 融)