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夕食会・午餐会感想レポート

平成27年3月午餐会「東南アジアの現状と展望」

夕食会・午餐会感想レポート

3月20日午餐会

現在の日本が直面している大問題「日本経済の成長を如何に実現するか?」の解答の一つとして「アジアの成長地域の経済活動に日本が関与し貢献する」事が有力であろう。今年はASEAN共同体の成立も予定されており、今回の講演のテーマはまさに時宜を得たものであった。

まず白石先生の「東南アジアは大陸部と島嶼部に分けて考えるべき」というご指摘に「目から鱗」の思いがした。我々はともすればASEAN 10ヶ国を纏めて見がちであるが、このように分類し、さらに問題に応じて個々の国別に考える必要があるとの事である。

先生は国際政治活動の中での東南アジアの位置づけから説き起こし、特に中国の台頭と(日本を含む)先進国の相対的な落込み、個々の国の事情と思惑が絡んだ複雑な国際情勢を見事に解きほぐして、我々に重要な示唆を与えて下さった。

近年、善悪は別として、中国は大きな戦略の下に次々と手を打ってくるのに対して日本政府の対応に不安ともどかしさを感じる場面もあった。先生は講演の終わりの部分で日本は東南アジアから「信頼されている」という大きな財産がある事、大局的見地から「バランスを取る」役割を期待されている事、また東南アジアの「統合を支援する」立場にある事などを示されて我々に前途への希望と責任を感じさせた。

午餐会の後もシンガポールのリー・クワンユー元首相の死去、インドネシア大統領の来日など国際情勢の歩みは止まる事が無い。先生の講演の趣旨が今後の日本の方針と戦略に活かされる事を切に望むものである。

(東大・工、小川 史雄)


本日は、東南アジアの現状と今後の問題点について、周到で明快なご説明をいただき大変有意義な時間を過ごすことができました。前世紀末から東南アジアの重要性は高まっておりましたが、最近の中国の目覚ましい台頭により、世界の主要舞台は欧州から東南アジアに明らかにシフトしたように思います。東南アジアを大陸部東南アジアと島嶼部東南アジアに分けて分析されているのは、この地域における中国のプレゼンスの大きさを視野に入れると極めて説得力があります。島嶼部東南アジアのラインと豪州からのラインを結んだT字部の重要性を強調されていましたが、全く同感であります。

最近の資料のご説明で、改めて中国の急速な台頭ぶりを認識しました。このような情勢下では、我が国の外交政策はますますこの地域に重点を置いたものにならざるを得ません。これまでの我が国の経済協力などにより、我が国がこの地域で信頼を得ていることは大きな財産であります。ただ、中国もこの地域に華僑という中国人のネットワークを持っており、その影響力をさらに大きくしております。現在問題となっている、中国主唱の「インフラ投資銀行」への我が国の関わりも、このような枠組みの中でとらえるべきなのでしょう。

いずれにしても、今後この地域が世界史の主要な舞台になっていくことは間違いないものと思います。

(東大・法、諏訪 茂)