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夕食会・午餐会感想レポート

平成27年3月夕食会「昭和史から学ぶこと」

夕食会・午餐会感想レポート

3月10日夕食会

戦前・戦後という大きな分水嶺によって隔てられた、昭和「史」について様々な事実を通してひたすら検証を続けておられる保阪氏の今回講演には、歴史研究に関わる人としての高い志と努力がひしひしと感ぜられ、大いに啓発を受けた。

例えば、同氏の指摘の中には、戦後の経済発展や90年代の宗教ブーム等、前の時代で生かされなかった能力・エネルギーが後の時代で活用・発散されるといったものがあった。そうであれば、現在の社会において、生かされていない能力、たまっているエネルギーは一体何なのか。昭和史を考え、学ぶことの副次的な意義がそこにあるものと考え、同氏の慧眼に敬服した次第である。

また、同氏が各地で講演した際、同じ戦争の話をしても、被害の少なかった島根県では反響が少なかったという点に、小生が若い頃から抱いていた素朴な疑問が解消した思いがした。それは、とかく被害・情緒面から取り上げられることの多かった戦争観と、親戚・家族の卑近な事例の数々を踏まえた、戦後生まれの個人レベルでの認識との間に、大きな懸隔を生じていたからであった。

かつて、大正生まれの親達の世代が沈黙を守り、その子の世代が敢えて戦争を家庭での話題にしないのを当然とする雰囲気もあった背景には、親達の世代に戦争への複雑な思いと事情があったことを思い出す。歴史が、所詮その時代環境によって如何様にでも評価・認識・解釈され得るという限界は 否定出来ないと考える。

(東大・法、古川 宏)