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夕食会・午餐会感想レポート

平成28年2月夕食会「日本の火山の今を知る~富士山も噴火するのか」

夕食会・午餐会感想レポート

2月10日夕食会

地球における火山活動と地震活動の原因が、プレートの沈み込みに起因するものであることが明らかになったのは最近の科学の進歩の成果であり、素晴らしいことであるが、今後の人間生活に密接に関係する災害をもたらすような大規模な火山活動、あるいは地震活動の発生について、その場所、規模、そしてその時期を予測することは、現在の科学知識のレベルでは、まだ不可能である。

時間の経過とともに連続的に動くプレートの沈み込みに起因して地殻内部に歪みが蓄積され、それが地殻の破壊に対する抵抗力が限界に達した時点で地震が発生し、また沈み込むプレートに保有されている水分が、固体状態を保っている地下深部の岩石溶融温度を降下させ、部分溶融によりマグマが生成され、それが比重差により割れ目を伝って上昇し、圧力と比重に平衡した場所に滞留してマグマ溜まりを形成し、その盛衰が、その地表部分の火山活動を支配していると説明されるようになった。

このような視点で考えると、防災という観点から、2007年12月に気象業務法が改訂され、「地震は予知困難だから、発生後の地震動予想のみ(緊急地震速報)」は当然として、「火山は噴火を予知して予報・警報を発令(噴火警戒レベルの導入)をしなければならない」というのは、気象庁に対して、過酷すぎる要求ではないかと考える。

「休火山」という言葉を使用しないことになったとの説明だが、一般に対しては、むしろこの言葉は残した方がよいと考える。現在、噴煙、噴火、溶岩の流出などを継続し、地震計、傾斜計などで動きが観測される火山のみを「活火山」と定義し、そのような動きの見られない火山はすべて「休火山」と定義し、色々な観測により、動きが始まった火山に対して、「休火山」から「活火山」に変化したと公表する方が、全体的に判りやすいと考える。

すなわち、2014年の御嶽山の噴火も、2014年8月10日までは「休火山」で、8月10日の時点で「活火山」に移化したと公表する。富士山も2000年8月あたりで「休火山」から「活火山」への移化を公表し、2002年1月頃には、再び「休火山」へ移化したと公表するのが望ましいような気がする。2015年の箱根火山の噴火も、5月の初め頃に「活火山」への移化を公表し、8月の始め頃には「休火山」への移化を公表する、などというのは如何だろうか。

壊滅的な破壊を伴う3.11大震災のような地震、あるいは将来いつかは発生する可能性のある大規模なカルデラ噴火などは、確かに予知は不可能であり、行政としても対応のしようがない。発生してしまってから対策を講ずるしかないとあきらめるべきである。ただし、発生しても被害を最小限にとどめることが出来る対策は取っておいた方がよい。

(東大・理、大串 融)


火山噴火予知連絡会会長で東大名誉教授の藤井敏嗣氏の「日本の火山の今を知る~富士山も噴火するのか」という講演を聴いた。

今は「休火山」と言う言葉は使わなくなった。「1万年以内に噴火したことがあるか、現在も活発な噴気活動のある火山」を「活火山」と言う。9400年間、何もなかった火山がチリで噴火した例があった由。縄文時代に大噴火があってこの地域の縄文人は死滅し、1000年間この地に文化が戻らなかったと言う。インターネットで調べたところ、1万年以内に起った日本で最大の噴火で、「鬼界カルデラ噴火」と言い、今から6300年前(放射性炭素年代測定)の縄文時代に起った。爆発規模は、フィリピン・ピナツボ火山の10~15倍。雲仙普賢岳のおよそ100倍。上空3万mの成層圏にまで達した大量の火山灰は、遠く、東北地方にまで飛散ほどで、南九州一帯は、60cm以上の厚さで埋め尽くされた。

火山の噴火は必ずしも規則的ではなく長期予測は不可能とのこと。富士山も西暦1000年頃は頻繁に噴火していたが、その後1435年、1511年、1707年(江戸時代の 宝永大噴火)と噴火した後は無い。過去の国内の火山噴火で観測された前兆も数十分前、1時間半前、2時間前、2日前と言ったものが殆どで、長いものでもせいぜい1週間前の由。

統計的には次期の富士山の噴火は小規模ではあるが、休止期間が長いほど大規模な爆発になると言う「火山爆発指数」があるので、要注意。富士山は過去平均的には30年に1回程度噴火していたが、現在300年間休止しているので、心配は心配だ。

大噴火では噴煙は西風に流されるので、富士山が爆発すると、首都圏に及ぼす影響が大きい。噴火規模にもよるが、東海道新幹線・東名高速道路は不通、飛行機も飛べないので、流通経済の破綻による食料不足が起きる。

結論的には講演者の著書名のように、「正しく怖れよう富士山大爆発」ということか。最後に講演者が訴えていた大事なこと。アメリカ、イタリア、インドネシア、フィリピンなどいずれの火山国も地震・地殻変動観測・電磁気観測、火山ガス観測、地質調査、マグマ研究の専門家が単一の国立機関に一元化されているのに、日本の火山観測研究には推進本部体制が無いこと。

(東大・工、加藤 忠郎)