文字サイズ
背景色変更

夕食会・午餐会感想レポート

平成29年1月午餐会「国立大学のこれから」

夕食会・午餐会感想レポート

1月20日午餐会

東北大学総長里見先生のご講演は、非常に情熱を感じるしかも豊富な内容でした。日本の大学教育の劣化は深刻で、国家の最重要課題と痛感してます。大いに期待しています。

このような大学側の努力が実を結ぶためには、私自身が国立大学の理事を務めた経験から、大きな課題があると考えています。

先生が主張されたように、先進国の中でも、教育に対する公的資金投入が断然少ないことは問題であり、増額に賛成です。安倍首相も無償化を唱えています。しかし、今の状態では、増額が期待される効果を生むかは疑問です。それは、社会の側の意識の問題です。

大学教育の議論では、必ず教育側(サプライ)の課題が議論され、やれ偏差値がどうの、入試方法がどうの、教育方法がどうのとなります。しかし、子供の将来の幸せを願って、教育投資をする親も、教育を提供する教師も、サプライ側は、社会の人材についてのデマンドを見て、行動します。従って、最大の問題は、企業側(デマンド)です。

欧米中韓印、世界中、一流大学の学生は、猛烈に勉強し、激しく競争しています。ところが、日本の大学生は、遊びに、部活にと、海外に比べ勉強していません。それは、奇跡の高度成長時代の人材確保から定着した新卒一括・同一初任給・卒業前内定方式が元凶です。こんなの日本だけです。大学で勉強しようがサボろうが、卒業さえできれば、同じ給与で採用される。

機械工学出て、図面描けない・流体方程式解けない、電気工学出で、電気回路描けない・電磁方程式解けない、経済出ても計量経済チンプンカンプン、このような大学卒を量産する結果になっています。

里見先生が示されたグラフで、先進国の中で、日本だけが過去25年GDPが伸びていない。私は、勉強していない我々戦後世代が、企業の幹部になった頃から成長が止まったと解釈しています。

安倍首相と経団連での就活開始時期を変える議論は、混乱を生むだけで改善しません。青田刈りをした企業には、国税投資した大学教育を無駄にしたと課徴金するとか、学業成績加味しての卒業後採用した企業には税の優遇するとかが必要だと思います。一方、大学も国立大学の運営交付金は、学生の定員に比例するため、留年させると費用負担が増すため、補習など甘くして進級させるので、質は低下するばかり。留年者の授業料を倍増するとか、運営交付金の仕組みを変えない限り、改善は期待できません。もっと、本質を議論して欲しいものです。

そして、アカデミアのリーダーは、予算の増額の必要性を叫ぶだけでなく、連帯して、世論に訴えて欲しい。「企業は、学業成績を尊重して欲しい!」と。政府にも、本格的な青田刈り禁止と、学業成績を加味した給与制度の促進策を要請して欲しい。

(東大・工 武田 健二)