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夕食会・午餐会感想レポート

平成30年10月夕食会「 レアメタル~資源の現況と今後の活用法 」

夕食会・午餐会感想レポート

10月10日夕食会

人類の社会生活に必要な材料を供給してきた鉱物資源開発に関し、以前の鉱山経営に関する俗論に、「一に市況で二に鉱量、三、四がなくて五が技術」というのがありました。

社会が進歩してきた現在、①資源供給面での制約、②処理技術面での制約、③環境負荷面からの制約という観点から「環境コストを忘れるな」を論じた本日の講演は、新しい資源戦略を考察する上で、非常に有益なものと感じられました。
半世紀ほど前、日本国内の原子力発電を推進するためにウラン資源の供給を確保する議論の中では、使用済み核燃料処理費用の見積もりの部分が欠如していました。

中国のレアアースの鉱床は、地質学的に世界で他に類を見ないカーボナタイトに伴われる希土類元素の炭酸塩鉱物からなるもので、溶媒抽出で容易に処理できる、他の生産者では勝負にならない圧倒的な優位性を持っており、あながち環境負荷を見捨てているだけで経済的優位を保っているわけではない点も考慮すべきであろうと思います。

全体的に今後の資源戦略を考察する上で大変参考になり、有り難うございました。

(東大・理 大串 融)


岡部教授のお話は、レアメタル開発の現状と裏面を知る機会となった。

それは、レアメタルは中国など少数の国に偏在していると思っていたが、そうではなく世界中に有望な鉱山が多数存在し、陸上で発見されているだけで1億3千万トン以上と、世界需要の一千年分以上あるということ。その中で、1980年代は米国が主要生産国であったが環境コストの上昇で退き、中国は採掘ごみを捨てる場が広大にあり環境コストが低いために世界の最強供給国として台頭したという事実である。日本は、中国から鉱石の形では輸入せず、精錬後の中間製品で購入している。環境要因を国内に持ち込まないためである。また尖閣諸島の領有をめぐって日中が衝突しそうになった時も心配されたが、米中貿易戦争が更に激化していけば、中国首脳の一言でレアメタルの供給がストップされることも危惧される。

高性能の電子機器、ハイブリッド自動車の高性能モーター、太陽光発電用のパネルや制御器などはレアメタルの塊と言っても過言ではないそうで、今後もますます需要が増えそうだ。また構造材にも使われ、鉄・銅・アルミなどのベースメタルに添加して合金を作ることに使用され、強度を増したり,錆びにくくするので日本の製鉄メーカーにとってもレアメタルの供給は大変な関心事である。こういう状況下の一例として、価格が高騰しているコバルトへの対応策として、EV用電池メーカーは、コバルトの使用量を減らしたり、ゼロにすることを目指している。

このように産業のハイテク化を進めていくための必需品であるレアメタルを、我が国が継続して安定的に確保していくための方策は次の事が考えられる。

1.日頃の外交努力や民間交流で、中国と友好的通商関係を継続して築いていくこと。
2.価格高騰・資源ナショナリズムに備えて、国家としての備蓄の継続・強化
3.海外鉱山の開発に技術・資本を提供し、供給ルートを増やすこと。
4.技術開発による製品への使用量減と代替品の開発
5.採掘・精錬・製錬技術のイノベーションによるコストダウンと環境技術の向上
6.未使用製品回収の徹底による再資源化とリサイクル技術の確立・向上
7.我が国の黒鉱ベルトや排他的経済水域内の海底資源の基礎研究の継続

採掘・製錬において大規模な環境破壊と多量のエネルギーを消費するレアメタルのリサイクルについて「環境資源立国への挑戦」<素材⇒製品⇒資源⇒素材⇒製品>を続けられる岡部徹教授の今後のご活躍を祈念します。

(北大・教育 牛島康明)